「わかりやすく」「簡単に」意味を教えてほしいというニーズ
言葉の意味を調べる時に便利な「とは」検索。今回は直近1年間(2023年3月~2024年2月)でどのようなワードがよく検索されたか、また「とは」検索をする人が求めている情報はどのようなものなのか、調査していきます。この記事を通して、最近のトレンドワードのご紹介はもちろん、SEO対策のワード選定にも役立つ視点をご提供できると幸いです。
なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツールDockpitを用います。
そもそも「とは」検索をする時には、どのような情報を求めているのでしょうか。「とは」検索をする背景として、言葉自体は聞いたことがあるがその意味までは分からない、といった段階が多いと推測します。検索者のニーズを把握するために、「掛け合わせワード」機能を使って、「とは」と掛け合わせて検索されたワードの上位5位を調査してみました。
「とは」検索 掛け合わせワード ランキング
調査期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:PC&スマートフォン
ランキング上位に、3位「わかりやすく」5位「簡単に」とあることから、理解しやすいよう簡潔に情報がまとめられているページを検索者が求めていることが伝わってきます。
また、「〇〇とは」の他にどのような検索ワードのバリエーションがあるのでしょうか。下記のデータは、「類似ワード」機能を使って、「〇〇とは」と同じような検索のされ方をしたワードを類似度順にランキングにしたものです。
「とは」検索 類似ワード ランキング
調査期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:PC&スマートフォン
言葉の意味を調べる場面で、「とは」の他に「何」や「意味」と掛け合わせて検索している人も一定数いることが分かりました。
インボイス、NISA、Z世代に関する「とは」検索がトップ
次に、「とは」検索で検索者数が上位のキーワードを見ていきます。今回の調査では、2023年3月〜2024年2月の1年間を対象としています。
「とは」の検索キーワード ランキング
調査期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:PC&スマートフォン
1位に「インボイス制度とは」がランクインしました。2位の「NISAとは」と比べて、ユーザー数(検索者数)・セッション数(検索数)ともに3倍以上の差がつくほど、世間的に関心が高まっていたことが分かりました。特に2023年9月に検索者数が増加しており、制度が始まる前月に認知度や注目度が一気に上昇したことがうかがえます(インボイス制度は2023年10月から開始)。
「インボイス制度とは」流入ページ ランキング
調査期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:PC&スマートフォン
検索者の流入ページを見てみると、国税庁の情報や、図解で分かりやすく解説しているページが続いていました。新制度ということもあり、まずはどのような制度であるのか基本的な部分からしっかり理解しておきたいというニーズがあると考えられます。
2位に「NISAとは」がランクインしました。
「NISAとは」流入ページ ランキング
調査期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:PC&スマートフォン
流入ページを見てみると、金融庁のページを主に閲覧している人が多いようです。1位にはNISAの基本的な情報を説明するページ、2位には2023年までのNISAの今後について説明するページがあがっています。NISA自体への関心の高さに加え、2024年から導入される新NISAや旧制度のNISAが今後どうなるのか知りたい人も多かったのではないかと考えます。
3位に「Z世代とは」がランクインしました。
「Z世代とは」流入ページ ランキング
調査期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:PC&スマートフォン
流入ページを見てみると、1位、2位は求人サイトの「Create転職」の記事がランクインしています。Z世代という言葉そのものの意味に加えて、Z世代の価値観について解説していることが特徴的でした。上位には、Z世代の消費行動や、働き方への価値観に触れている記事が複数あることから、Z世代をターゲットとしたマーケティングや、Z世代の採用活動の観点で上の世代からの関心が高まっていると考えられます。
さらに検索者の属性を見ていきたいと思います。下記のデータは、検索ワード上位3位までの検索者の男女比と年代割合を表しています。
「インボイス制度とは」「NISAとは」「Z世代とは」検索者の男女比
調査期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:PC&スマートフォン
「インボイス制度とは」「NISAとは」「Z世代とは」検索者の年代割合
調査期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:PC&スマートフォン
「インボイス制度とは」「Z世代とは」の検索者には女性が多く、「NISAとは」の検索者には男性がやや多い結果となりました。世代割合に関しては、全てに共通して40代〜60代の検索者が多いことが分かりました。「NISAとは」と検索している層に関しては、老後に向けた資産形成を考えるタイミングで検索している人が多いのかもしれません。「Z世代とは」の検索者に関しては、特に50代〜60代の割合が多く、上の世代からの理解したいという関心が強いことが分かりました。
一方、上記それぞれのワードを「とは」なしで集計してみると、下のグラフのようになりました。特に「NISA」「Z世代」に関しては波形が上下グラフで大きく異なることから、上記はあくまでも「とは」と検索している人の特徴であることに注意した方が良さそうです。
「インボイス制度」「NISA」「Z世代」検索者の年代割合
調査期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:PC&スマートフォン
他にも、4位「アーカイブ」13位「メンション」のようなSNSやメールサービスの機能に関する検索も上位にあがりました。また、5位「メンヘラ」15位「HSP」のように人の性質を理解しようとするようなワードも関心を集めているようです。6位「楽天キャッシュ」や8位「ESIM」のようなサービスにも注目が集まっていました。
季節ごとに検索数の多かったトレンドワードは?
次に、直近1年間で人々の興味がどのように移り変わっていったかを見ていきたいと思います。ここで扱う「季節比較」のデータでは、1年間を4つの期間に分けています。通年におけるキーワード出現率と比べて特定期間内の出現率が高くなるほど、中心の位置に大きく表示されます。
■「WBC」「ペッパーミル」「ChatGPT」「Bing」- 2023年3月〜2023年5月
「とは」検索キーワード 季節比較
調査期間:2023年3月~2023年5月
デバイス:PC&スマートフォン
3月に開催されたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の影響で、「WBC」「ペッパーミル」「ピッチコム」などの野球関連の言葉がよく検索されています。WBC開催期間中は、普段野球を見ていない層も一緒になって盛り上がり、いろんな野球関連用語への注目が集まった期間となりました。
中でも「ペッパーミル」という言葉は、一見すると野球に関連がなさそうで、一体何のことだろう?と疑問をもち検索した人も多いと思います。こちらは、WBC開幕中にラーズ・ヌートバー選手が胡椒を挽くような動きのパフォーマンスを披露したことで話題となりました。のちに「2023ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンや、「流行ポーズ2023年」大賞(プレイブ株式会社が選出)に選ばれています。
また、「CHATGPT」や「Bing」のサービス名が確認できることから、生成AIへの注目度が急上昇したのもこの時期だと考えられます。実際ChatGPTに関しては、2023年4月〜5月の利用がピークとなっていました。
詳しくはぜひこちらの記事を参考にしてください。
ChatGPT利用者は、初期からどう変化した?ChatGPTユーザーの実態を調査 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン
https://manamina.valuesccg.com/articles/2788生成AIの先駆けとして登場したChatGPT。2022年11月のリリース以降ユーザーは増加し続け、広範囲に認知されています。マナミナではリリースから約4ヵ月後の2023年3月時点でのユーザー数や人物像について調査しましたが、リリースから約9か月経った現在、ChatGPTユーザー層に変化はあるのか、改めて調査していきます。
2023年2月には、Microsoft社の検索エンジンBingにAIチャット機能を取り入れたBingAIがリリースされたことも注目を集めました。
■「ポケモンGO ルート」「Threads」- 2023年6月〜2023年8月
「とは」検索キーワード 季節比較
調査期間:2023年6月~2023年8月
デバイス:PC&スマートフォン
この時期には、「ポケモンGO ルート」が2023年7月から利用できるようになり話題になりました。スマートフォン用アプリ「ポケモンGO」のマップ上に作成されたルートをたどることで報酬を得ることができる機能です。自治体によって作成された公式ルートも登場し、観光スポットを回ったりその土地の魅力を発見できるものとなっています。
また、同時期の2023年7月に「Threads」のサービスが開始し、ユーザー離れが進むX(旧Twitter)に代わるSNSとして話題となりました。
その後のThreadsの利用動向についてはこちらの記事をご覧ください。
2023年のトレンド、あの後どうなった?2024年はどうなる?【Threads編】 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン
https://manamina.valuesccg.com/articles/3107Threads(スレッズ)とは、2023年7月にMeta社がリリースした新興SNSです。サービス開始当初こそX(旧Twitter)を代替する候補として注目を集めたものの、一時的なトレンドとして下火になった印象があるかもしれません。そんなThreadsですが、インスタからの流入促進効果もあってか、実はじわじわとユーザー数を伸ばしており、再加熱の兆しも見られています。そこで今回は、2024年1月時点で改めて利用動向を調査し、Threadsの今後を占います。
■「阪神 アレ」「ヒス構文」「スイカゲーム」- 2023年9月〜2023年11月
「とは」検索キーワード 季節比較
調査期間:2023年9月~2023年11月
デバイス:PC&スマートフォン
この時期からは、「阪神 アレ」が急上昇ワードとして挙げられます。2023年9月、阪神タイガースが18年ぶりにリーグ優勝をした際に、優勝のことを「アレ」と呼んでいたことが話題となりました。のちに「アレ(A.R.E.)」は、「2023ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞にも選ばれました。パイン株式会社のパインアメとコラボし、「パインアレ」と商品名をもじった限定パッケージ商品も販売されました。
次に注目したいトレンドワードは、「ヒス構文」です。こちらは、お笑い芸人ラランドのサーヤさんがYouTubeやラジオで発信したことをきっかけに話題となりました。「お母さんヒス構文解説」の動画は、2024年4月時点で視聴回数320万回を超えており、Z世代を中心に共感を呼んでいます。
お母さんヒス構文とは、お母さんが論理を飛躍させたり論点をすり替えヒステリックな語気を伴うことで相手に罪悪感を抱かせる構文
また、「スイカゲーム」もこの時期に多くの人の興味を集めています。「スイカゲーム」は、箱の中に同じ種類のフルーツを落として合体させ、一番大きなフルーツ(スイカ)に成長させるパズルゲームです。2023年にYouTubeでのゲーム実況動画が流行ったことで人気が広まり、2024年3月時点でNintendo Switch版とiOS版を合わせて800万ダウンロードを突破しています。
スイカゲームに関しては、こちらの記事もぜひご覧ください。
Nintendo Switchソフト「スイカゲーム」なぜ突然トレンドに?配信者が夢中になる理由を調査 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン
https://manamina.valuesccg.com/articles/2891スイカゲームというパズルゲームが話題を集め、2023年10月時点で200万ダウンロードを突破しました。2021年12月に配信開始され、当初はそこまで注目されていなかったスイカゲームですが、なぜこのタイミングで突然流行り出したのでしょうか。今回はスイカゲーム人気の秘訣に迫ります。
また、秋冬に注目を集めるワードとして、「ブラックフライデー」「コフレ」も登場しています。イベント商戦への関心の高さもうかがえる結果となりました。
■「猫ミーム」「8番出口」「LYPプレミアム」- 2023年12月〜2024年2月
「とは」検索キーワード 季節比較
調査期間:2023年12月~2024年2月
デバイス:PC&スマートフォン
この時期には、TikTokやYouTubeを中心としたSNS上で「猫ミーム」動画が流行しました。猫を通して日常の出来事を再現する、可愛くてシュールな動画がお馴染みとなっています。キャッチーな音楽を使用している動画が多く、独特な中毒性を生むコンテンツとなっています。
Z世代のデータアナリストが、自らZ世代の行動データを分析する本連載。第16弾となる今回は、Z世代とミレニアル世代の検索キーワードランキングから、「猫ミーム」「Bluesky」「LYPプレミアム」の3テーマを取り上げてZ世代のトレンドをお送りします。Z世代のSNSの使い方、猫ミームがバズった背景、LYPプレミアムの魅力とZ世代のサブスクの使い方など、データとリアルな声を掛け合わせ、Z世代のニーズを読み解きます。
「8番出口」は、地下通路からの脱出を目指すホラーゲームです。YouTubeのゲーム実況を通じて人気が広がりました。ゲームの舞台が日本の地下鉄ということもあり、ゲーム内の地下通路によく似た場所の写真がSNS上で注目を集めることもありました。
「LYPプレミアム会員」「LYPプレミアム」も注目ワードとしてあがりました。「LYPプレミアム」とは、11月より開始した「LINE」「Yahoo!」「PayPay」でお得な特典が利用できる月額会員サービスのことです。LINEのホーム画面で「LYPプレミアム」という言葉を目にして気になった人も多いのではないでしょうか。
ここまで4つの時期に分けてトレンドワードを紹介してきましたが、全ての期間において季節のイベントごとや時事問題、放映期間中のドラマに登場するキーワードへの関心が高いことも確認できました。これらも多くの人の共通の関心事になりやすい事柄と言えるでしょう。
まとめ
今回は、直近1年間の「とは」検索について見てきました。
まず、「とは」検索をする際には「分かりやすく」「簡単に」情報が知りたいという検索者のニーズが強いことが見えてきました。複雑な制度などを説明する際は図解を用いることが効果的に伝える一つの手と言えるでしょう。
また、1年間で検索数が多かったワードや、時期別に注目を集めたトレンドワードについても調査しました。
直近1年間では、特に10月より始まったインボイス制度への関心が高まっていたことが分かりました。NISAやZ世代に関しても引き続き注目を集め続けているワードとして上位にあがりました。
トレンドワードに関しては、2023年は特に野球用語に注目が集まった年でした。WBCや阪神のリーグ優勝が続き、普段野球を見ない人の興味も巻き込んだことが検索数上昇の理由と考えられます。また、一躍ネット上の流行ワードとなったものに「ヒス構文」「猫ミーム」「8番出口」「スイカゲーム」などがありました。他にも、「ChatGPT」「Bing」のような対話型AIを利用したサービスへの関心の高まりもデータから読み取れる結果となりました。
人々の新しいものへの興味関心が見えてくる「とは」検索。今後どのように関心が移り変わっていくのか、引き続き注目していきたいです。
大学ではポルトガル語と言語学を専攻していました。
趣味は、海外エンタメ情報の追っかけとおうちでラテアート修行をすることです。