化粧品業界の最新動向は?新たな展開やマーケティング事例を紹介

化粧品業界の最新動向は?新たな展開やマーケティング事例を紹介

コロナ禍を経て急速な変化を遂げている化粧品業界。コロナ禍からの回復を期待される中、新たなビジネスチャンスやマーケティング戦略の創出によって業界は活気づいています。この記事では、化粧品業界の最新動向やマーケティングの成功事例などについて詳しく解説します。化粧品業界のマーケティングに携わる方はぜひ参考にしていただければ幸いです。


化粧品業界の市場規模

新型コロナウイルスの流行でさまざまな業界が影響を受けた2019年以降、化粧品業界にはどのような変化があったのでしょうか。化粧品業界における市場規模の推移と今後の展望について解説します。

2020年以降コロナ禍で減少

化粧品市場は2019年まで右肩上がりで推移していました。特に2016年から2019年の化粧品出荷額は4年連続で過去最高額を更新し1兆7千億円台まで達しましたが、2020年・2021年はコロナ禍での需要減を受けて大幅に減少しました。

※経済産業省|生産動態統計をもとに作成

経済産業省|生産動態統計をもとに作成

2021年は対2019年比で約24.1%減となり、新型コロナウイルスの感染拡大により大きな打撃を受けたことがわかります。具体的な要因としては、以下のような需要の変化が挙げられます。

● マスク着用やテレワークの普及により化粧品の需要が減った
● 百貨店などの臨時休業により販売の機会が減った
● 売上を大きく牽引していた中国などのインバウンド需要が見込めなくなった

苦戦を強いられる中、化粧品メーカー各社は「マスクにメイクがつきにくい」「マスク着用による肌荒れを防ぐ」といったコロナ禍特有のニーズを捉えた切り口で商品開発を行うといった対応をしてきました。

脱マスク・外出自粛緩和により回復の兆しも

2022年以降はコロナの沈静化とともに、国内の化粧品需要も少しずつ回復傾向にあります。

外出規制が緩和された2022年春以降は口紅などメイク用品の需要が伸びており、特にドラッグストアを中心とした低価格帯商品が好調です。2022年秋には訪日外国人の受け入れが再開され、インバウンド需要も回復傾向にあります。

2023年春にはマスク着用ルールが緩和されたことで、さらにメイクアップニーズが高まり、化粧品の売上も好調に推移しています。日本百貨店協会によると、2023年3月期の化粧品売上高は前年比17.4%と大幅な伸びを見せています。

このまま消費者にコロナ前の日常が戻ってくれば、化粧品市場の回復とさらなる成長が期待できるでしょう。

【参考】
経済産業省|生産動態統計
日本百貨店協会|2023年3月 全国百貨店売上高概況

化粧品業界の動向

コロナ禍を経て化粧品業界はどのように変化しているのでしょうか。化粧品業界の最新動向について解説します。

DXの推進

他業界同様、化粧品業界においてもDXが加速しています。

特に新型コロナウイルスの感染拡大防止のためテスターの使用やタッチアップが難しくなり、リアル店舗での接客販売という強みが活かせなくなってしまった化粧品業界では、DXへの対応が急務となったのです。

化粧品メーカー各社はデジタルマーケティングに力を入れ、プラットフォームの確立やオンラインカウンセリングの提供などEC事業の拡大を図っています。

各社のDX事例としては以下が挙げられます。

● 資生堂:WEBカウンセリングの展開・ECプラットフォーム「omise+」の立ち上げ

チャットやビデオ通話を使用し、自宅にいながら店舗同様にスタッフによる1対1のカウンセリングが受けられる。

● コーセー:コンセプトストア&オウンドメディア「Maison KOSÉ」をスタート

● 花王:AI顔分析機能を用いたコンテンツ「KATE MAKEUP LAB.」を発表

「KATE MAKEUP LAB.」内の「KATE SCAN」。AI顔分析機能で顔の比率を測定し、最適なメイクを提案する。

● オルビス:業界初となる無人販売店舗「ORBIS Smart Stand」をオープン

【参考】
資生堂|omise+WEBカウンセリング
コーセー|Maison KOSÉ
花王|KATE MAKEUP LAB.
オルビス|オルビス、業界初となる無人販売店舗『ORBIS Smart Stand』ローンチ

メンズコスメ市場の拡大

最近、身だしなみの一環としてスキンケアをする男性が増えています。メンズ用やユニセックスのスキンケア商品も多く登場し、男性にとってもスキンケアは身近なものになりつつあるのです。

さらに、コロナ禍でライフスタイルが大きく変化したことで、メンズコスメへのニーズも以下のように変化していったと考えられます。

● 在宅の時間が増えたため、「自分磨き」など美容に関心を持つ男性が増えた
● マスクの着用や運動不足などが原因で肌荒れが起こり、スキンケアをする男性が増えた
● ECが普及し、対面での購入に抵抗があった男性でも買いやすくなった

大手メーカーからもメンズコスメブランドやジェンダーレスコスメが登場しており、今後もメンズコスメ市場のさらなる拡大が見込まれます。

コロナ禍における男性のスキンケアニーズの変化については、以下の調査レポートでも紹介しています。

D2Cモデルの浸透

D2Cとは「Direct to Consumer」の略で、店舗を介さずに自社ECサイトでユーザーに直販するビジネスモデルです。

実店舗がなくてもECサイトから販売できたり、SNSの普及でブランドが顧客と直接コミュニケーションを取れるようになったりした背景からD2Cが普及しました。昨今注目されているブランドは、SNSで多数のファンを獲得した上で囲い込み、商品・サービスの販売につなげています。

こうした背景から、SNS利用率が高い女性向けの化粧品・コスメといったジャンルがD2Cの中でも勢いを増しているのです。

インフルエンサーの起用

インフルエンサーとは、YouTubeやInstagram、TwitterなどのSNSで数多くのフォロワーに情報を届けられる「影響力のある人」のことです。

近年SNSが著しく普及したことで、化粧品やコスメの購入を検討する際にSNSを参考にするユーザーが増えています。同時に、美容やコスメの情報を発信するインフルエンサーも増加傾向にあります。その中でインフルエンサーの情報拡散力と影響力に着目した化粧品メーカー各社が、インフルエンサーを起用したプロモーションに注力し、ファンの獲得や購買につなげています。

インフルエンサーを起用すると、これまで主流だった芸能人を起用したPRに匹敵する成果が期待できます。さらに、インフルエンサーが紹介する商品は「広告」ではなく「影響力のある一消費者の声」として信頼されやすいため、プロモーションに大きな効果を発揮するのです。

SNSの活用

前述のように、最近では多くの消費者がSNSを参考にして化粧品を購入しているため、化粧品業界においてSNSマーケティングはなくてはならない存在だといえるでしょう。

特にInstagramはユーザーの約6割が女性であること、視覚的情報で訴求しやすいことなどの特性から、化粧品市場と相性が良いSNSだといわれています。

各SNSの特徴や活用例を以下に紹介します。

SNS 特徴
Instagram ・「映える」投稿(クリエイティブの質が高い魅力的なキャプション)で購買意欲を高められる。
・フォロー&いいねで参加できるプレゼントキャンペーンを開催することで、フォロワーや新規顧客の獲得、認知拡大につなげられる。
Twitter ・拡散力やリアルタイム性にすぐれており、いわゆる「バズり」を狙いやすい。
・口コミをリツイートするなどユーザーに対してリアクションを取ることで、新規顧客にとって信頼できる情報として広められる。
・積極的にファンとコミュニケーションを取ることで、ブランドイメージ向上や新たなファンの獲得につなげられる。
YouTube ・ある程度尺のある動画で、商品の特徴や使い方を丁寧に紹介できる。
・多くのファンを持つ美容系YouTuber(インフルエンサー)を起用することで、認知拡大につなげられる。
TikTok ・主要ターゲット層でもある女性や若年層のユーザーが多く、化粧品と相性が良い。
・投稿内容への反応が多いと、短期間で爆発的な拡散が期待できる。

化粧品業界のマーケティング事例5選

化粧品業界におけるマーケティングの成功事例を紹介します。

BULK HOMME(バルクオム)

「BULK HOMME(バルクオム)」は、市場の拡大が期待されているメンズコスメ市場において独自のポジションを築き上げているブランドです。

同社の洗顔料・化粧水・乳液などはシリーズ累計出荷1000万本を突破し、富士経済「メンズ化粧水/乳液における金額ブランドシェア」でも1位を獲得するなど、圧倒的な存在感を見せています。

BULK HOMMEは、SNSを活用したオンラインでのブランディングや情報発信を強みとしています。特にInstagramに力を入れており、コンテンツの内容は商品紹介ではなくライフスタイルの発信や、男性モデルとコラボした内容が多くなっています。

男性の憧れとなるようなライフスタイルを商品と絡めて発信することで、洗練されたBULK HOMMEブランドのイメージを築き上げています。このようにSNSを活用した取り組みにより、SNSでリーチしやすい若年層の取り込みに成功した事例だといえるでしょう。

MEDULLA(メデュラ)

2018年に誕生した「MEDULLA(メデュラ)」は、日本初のパーソナライズヘアケアサービスとして注目を集めているブランドです。

MEDULLAではオーダーメイドのシャンプーやトリートメントを扱っており、オンラインで質問に回答するだけで、5万通りの組み合わせからカスタマイズされた商品を自宅に届けてもらえます。一度の購入で終わるのではなく、定期カウンセリングで常に髪質の変化に合わせたヘアケアをサブスクリプションで提案可能です。

一人ひとりに寄り添うサービスが好評で、シリーズ累計販売本数は300万本を超えるなど多くのユーザーに支持されています。

他にもパーソナライズスキンケアの「HOTARU PERSONALIZED」や、パーソナライズボディメイク「Waitless」などのヒット商品を展開しており、D2Cの中でも成功を収めているブランドとして注目されています。

ウォンジョンヨ

「ウォンジョンヨ」は2022年10月にスタートした韓国のコスメブランドです。

K-POPスターの専属メイクアップアーティストであるウォンジョンヨ氏が監修するブランドということで話題を呼びました。また、ブランドミューズには日本人K-POPスターであるTWICEのモモさんが就任しています。

発売前から注目され、商品の欠品・再販が度々SNSで話題を集めるなどと人気を博しているウォンジョンヨですが、プロモーションはYouTubeに特化していました。

YouTubeではメイクの方法をわかりやすく伝えているほか、AKB48の柏木由紀さんをはじめ多くのYouTuberが「ウォンジョンヨさんにメイクしてもらった」というシリーズ動画を公開しており、一気に日本でのブランド認知を広げることに成功しました。

また、ウォンジョンヨは比較的手に取りやすい価格帯ではあるものの、購入できる店舗はPLAZA(プラザ)やLOFT(ロフト)、東急ハンズといったバラエティショップに限られています。こうした販路の選別もまたブランドの話題性に一役買っているといえそうです。

日本人K-POPスターの起用やYouTubeでのプロモーション、トレンド感を意識させる販路の設定といったウォンジョンヨの戦略は、ひとつの成功事例だといえるでしょう。

【関連】話題の韓国コスメ「ウォンジョンヨ」。データから見えてきた綿密なマーケティング戦略

https://manamina.valuesccg.com/articles/2215

2022年10月に発売された韓国コスメ「ウォンジョンヨ」。ブランドの「顔」として日本人K-POPスターのTWICEモモを迎えたことで話題になりました。今回は「ウォンジョンヨ」がどのように認知を広げていったのか、どのようなマーケティング戦略をとり、どのような結果が出たのか。ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」のデータをもとに検証しました。

OPERA(オペラ)

「OPERA(オペラ)」のリップティントは「バズコスメ」として話題になりました。バズコスメとは、Twitterを始めとしたSNSの口コミで一躍話題となり、爆発的に売れた化粧品のことを指します。

OPERAでは、リップティントのバレンタイン限定色発売と同時にプレゼントキャンペーンを行っており、そのリツイート数といいね数がかなり伸びていることから、このキャンペーンをきっかけに「バズった」と考えられます。

メーカー側がSNSでアプローチしていく場合には一方的な情報発信ではなく参加型、かつ何か嬉しい特典があるとより拡散されやすい傾向があります。

KATE(ケイト)

マスク生活でメイクの需要が減っていた中にもかかわらず、SNSでバズり、一部の店頭やオンラインショップでは欠品が出るほどの人気ぶりを見せたのが「KATE(ケイト)」の「リップモンスター」です。

リップモンスターは、“マスク移りしない”というコロナ禍で生まれた新たなニーズを満たす機能性が評価され、SNSで拡散された商品です。さらに豊富なカラーバリエーションや独特のネーミングなど、SNSで拡散されやすい要素を兼ね備えていたといえるでしょう。

こうした商品自体の魅力に加え、TikTokでのプロモーションが話題となったことも大ヒットの要因だと考えられます。リップモンスターのPR動画を真似て投稿する人が続出し、若年層の間で大きな話題となったのです。

コロナ禍での消費者ニーズをしっかり捉えた品質と、ターゲット層にマッチしたSNS戦略が成功のポイントだといえるでしょう。

まとめ

コロナ禍により大打撃を受けた化粧品業界ですが、2023年に入り「脱マスク」が進むなどコロナの影響が緩和しつつあることで回復の兆しを見せています。

コロナ禍を追い風に化粧品業界のデジタルシフトが大きく加速する中、SNS戦略をはじめとしたデジタルマーケティングに成功したブランドが成果を上げている印象です。

SNSを活用したマーケティング戦略が定着した化粧品業界において、どのように革新的なアプローチが出てくるのか、今後の展開が注目されます。

この記事のライター

フリーライター。JRグループ会社にて経理・総務として勤務。
子育てとの両立のためWebライターに転身。3児の母。
バックオフィス業務関連の記事を中心にBtoBライティングを手がける。

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