広がるBaaSの事例を解説「第一生命NEOBANK」の利用者数や特徴は?

広がるBaaSの事例を解説「第一生命NEOBANK」の利用者数や特徴は?

「BaaS」とは金融機関以外の企業が金融サービスを提供することを意味します。小売業がこれら決済システムを導入した結果、利便性や顧客満足度の向上が実現した事例もあります。今回は、住信SBIと第一生命が提供するスマートフォンアプリ「第一生命NEOBANK」の登録利用者について調査しました。


BaaSにより拡大された金融サービス

BaaSとは「Banking as a Service」の略称です。銀行が行っているサービスや機能を、さまざまな企業が自社サービスに取り入れて金融サービスを提供することを意味します。銀行には「預金」「融資」「為替」の3つの大きな業務がありますが、これらを提供するにはライセンスや業務上の仕組みが必要です。そのため、これまでは金融機関以外の企業が決済や送金などのサービスを提供するのは難しい状況でした。しかしIT技術の活用で、金融機関以外の企業でも金融サービスの提供が可能になりました。

BaaSの一例として「UNIQLO Pay」があげられます。会員証のアプリに銀行口座やクレジットカードを登録すると、会計時にQRコードを読み込むだけで決済可能です。このUNIQLO Payの導入でスムーズに会計でき、レジの待機時間の短縮も実現されました。実にBaaSの活用で利便性や顧客満足度の向上につながった好事例だといえるでしょう。自社サービスに決済機能を加えてサービス提供するパターンはすでに多くの事例があります。

今回、BaaSの具体的な事例として「第一生命NEOBANK」をとりあげます。2023年1月11日に開始したばかりの新しいサービスで、スマートフォンひとつで銀行取引が完結したり、0歳からの口座開設ができたりする点が魅力です。「第一生命NEOBANK」のアプリ利用者にはどのような特徴があるのでしょうか。ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて、調査・分析しました。

住信SBIと第一生命が提供する第一生命NEOBANK

住信SBIネット銀行と第一生命保険株式会社が提供する銀行サービスが「第一生命NEOBANK」です。住信SBIネット銀行の銀行代理業者として、第一生命が各種銀行サービスを提供する仕組みです。利用者は「住信SBIネット銀行 第一生命支店」の口座を開設する必要がありますが、通常の住信SBIネット銀行とは異なる第一生命からの独自サービスを受けることができます。

第一生命NEOBANKには以下の5つの特徴があります。
・残高照会や銀行振込、ATMでの入出金などがアプリで完結。
・24時間365日、ATM利用手数料とほかの金融機関への振込手数料がそれぞれ毎月5回まで無料。
・住信SBIネット銀行としては初の0歳からの口座開設が可能で、口座間の振込手数料は何度でも無料。
・口座開設時にスマホデビットかデビット付キャッシュカード(リアルカード)のいずれかの選択が可能。
・強固なセキュリティー対策がされており、生体認証でのログインも可能。

スマートフォンアプリですべての銀行取引が完結するため、店舗に行く必要がないのが大きな特徴です。また口座開設時にカードレスの「スマホデビット」を選択すれば、財布を持たずに買い物もできます。スマートフォンひとつで時間や場所にしばられることなく銀行取引ができるのは、まさにBaaSの成功事例だといえるでしょう。

図:第一生命NEOBANKトップページ

アプリ利用者数は4ヶ月で3倍以上に増加

「第一生命NEOBANK」のアプリ利用者の属性数をみていきましょう。

まずアプリ利用者数推移です。サービス開始は2023年1月11日です。1月時点では20万程度だったユーザーが5月には75万程度と、4ヶ月で3倍以上に増えています。利用者数増加の背景としては、開業記念で最大6,000円相当のプレゼントキャンペーン(※1)やデビットカード20%還元キャンペーン(※2)などの実施が考えられます。

(※1)第一生命NEOBANK 開業記念キャンペーン
(※2)第一生命NEOBANK デビットカード20%還元キャンペーン

図:「第一生命NEOBANK」アプリ利用者数推移

図:「第一生命NEOBANK」アプリ利用者数推移
期間:2022年12月~2023年8月
分析ツール:Dockpit
デバイス:スマートフォン

次にアプリ利用者の性別です。男性は女性の約3倍と、男性のほうが第一生命NEOBANKに関心を持っていることがわかります。

図:「第一生命NEOBANK」アプリ利用者の性別

図:「第一生命NEOBANK」アプリ利用者の性別
期間:2022年12月~2023年8月
分析ツール:Dockpit
デバイス:スマートフォン

次は年代です。40代がもっとも高く25%を超えています。30代も約25%であるため、30,40代の関心が高いとわかります。20代は約8%と30代の3分の1程度で、関心が低い傾向にあります。生命保険会社が提供する金融サービスであるため、生命保険、資産形成や住宅・教育ローン等があまり身近ではない20代は、関心を持つ人が少ないと考えられるでしょう。

図:「第一生命NEOBANK」アプリ利用者の年代

図:「第一生命NEOBANK」アプリ利用者の年代
期間:2022年12月~2023年8月
分析ツール:Dockpit
デバイス:スマートフォン

最後は世帯年収です。400万円を境にインターネット利用者全体よりも世帯年収が低い層と高い層にわかれている点が特徴的です。インターネット利用者全体よりも年収400万円未満は少ない傾向にありますが、400万円を超えると多くなっています。とくに年収1,000万〜1,500万円の高収入層はインターネット利用者全体との差が大きくなっています。

図:「第一生命NEOBANK」アプリ利用者の年収

図:「第一生命NEOBANK」アプリ利用者の年収
期間:2022年12月~2023年8月
分析ツール:Dockpit
デバイス:スマートフォン

アプリ利用者はマネー、投資への関心が圧倒的に高い

「第一生命NEOBANK」はスマートフォン専用アプリで銀行取引を行います。Webサイトを使わずアプリで完結する金融サービスの利用者は、どのようなジャンルに興味関心があるのでしょうか。以下の図は、アンケートにより興味関心を調査した結果です。横軸が特徴値、縦軸がリーチ率を表しています。右上にいくほど、分析対象者がインターネット利用者全体よりも特徴的に興味関心があるジャンルを示しています。

図:アプリ「第一生命NEOBANK」利用者の興味関心

図:アプリ「第一生命NEOBANK」利用者の興味関心
期間:2022年8月〜2023年7月
分析ツール:story bank
デバイス:スマートフォン

マネー、投資への関心は圧倒的に高いとわかります。経済への関心が高いのは、マネー、投資と関連があるためだといえるでしょう。スマートフォンにも特徴的に興味関心を持っているとわかります。第一生命NEOBANKはスマートフォンアプリで銀行取引が完結するため、もともとスマートフォンへの関心が高い層から注目されていると推測できます。
また意外にも保険へのリーチ率は約10%と低いことがわかりました。「保険会社による金融サービス」よりも「住信SBIネット銀行の新サービス」の印象が強いユーザーが多いのかもしれません。ユーザーの興味関心を高めるには、提携サービスの認知度も重要だといえるでしょう。

まとめ

今回はBaaSの事例として「第一生命NEOBANK」のアプリ利用者の特徴や興味関心を調査しました。

BaaSとは「Banking as a Service」の略称です。従来は銀行のみで展開していたサービスや機能を、企業が自社サービスに取り入れて金融サービスを提供することを意味します。BaaSにより利便性や顧客満足度の向上が実現した事例は多々あります。

今回とりあげた「第一生命NEOBANK」は、住信SBIネット銀行と第一生命保険株式会社が提供する銀行サービスで、スマートフォンで銀行取引が完結するため金融機関の店舗に行く必要がなく、またカードレスで財布を持たずに買い物できる点が大きな特徴のひとつです。

「第一生命NEOBANK」のアプリ利用者数が4ヶ月で3倍以上に増えているのは、キャンペーン実施が背景にあると考えられるでしょう。第一生命NEOBANKには女性よりも男性のほうが関心を寄せており、年代では40代がトップです。世帯年収は1,000万〜1,500万円でインターネット利用者全体との差が大きく出ています。

story bankによる調査では、「第一生命NEOBANK」アプリ利用者はマネー、投資への関心が圧倒的に高いとわかりました。「保険」のリーチ率が約10%と低いため「生命保険会社が提供する金融サービス」のイメージは強くないのかもしれません。利用者の更なる興味関心を高めるには提携サービスの認知度がひとつのポイントになるでしょう。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
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この記事のライター

Webライター。転職、キャリア、美容、不動産、金融ジャンルの記事を執筆中。新卒からシステムエンジニアとして働いていました。ライティングにおいては、わかりやすい文章を書くことはもちろん、どこかくすっと笑えるような、読み手が温かい気持ちになれる記事を書くことを心がけています。

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