アニメ『葬送のフリーレン』に注目している人とは?ヒットの背景を分析

アニメ『葬送のフリーレン』に注目している人とは?ヒットの背景を分析

2023年の秋アニメの中で最も注目されている作品の一つが、『葬送のフリーレン』です。山田鐘人原作、アベツカサ作画で、少年サンデーコミックス(小学館)で連載が開始されたのが2020年4月。エルフの魔法使いフリーレンが、勇者ヒンメルなど仲間たちと共に魔王を倒し、世界平和をもたらした後のストーリー。連載時から人気で、「第14回マンガ大賞」「第25回手塚治虫文化賞」を受賞するなど高い評価も得ています。今回は『葬送のフリーレン』のヒットの背景や、注目している人の特徴などを分析していきます。


『葬送のフリーレン』とは

『葬送のフリーレン』の物語は、魔法使いフリーレン、勇者ヒンメル、僧侶ハイター、戦士アイゼンたち4人が魔王を倒したところから始まります。10年もの旅を終えて王都に凱旋した4人は、しばらくその余韻に浸っていましたが、寿命が1000年以上もあるフリーレンにとっては、ほんの一瞬の出来事。50年後に再会した3人ともやがて別れの時が訪れます。

感情をあまり表に出さず、他人にも興味を持たなかったフリーレンは、仲間の死を目の当たりにしたことで、人を知るための旅に出る決心をします。人の生と死をテーマにしながら、いろいろな登場人物との出会いや時には激しいアクションシーンもあり、壮大なファンタジーにどんどん引きずり込まれていきます。

2022年9月に単行本9巻が発売されたのとほぼ同時にアニメ化が決定して注目され、2023年10月時点で単行本11巻の累計発行部数は1100万部を突破。TVアニメ化の初回は「金曜ロードショー」(日本テレビ系)で2時間スペシャルとして放送されたことも話題となりました。

『葬送のフリーレン』公式サイト

© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

『葬送のフリーレン』人気の背景

では『葬送のフリーレン』の人気の背景を、ネット上の行動ログデータから探っていきましょう。

※分析ツールには、毎月更新されるWeb行動ログデータを用いて、競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用います。

金曜ロードショーでの初回放送で検索ユーザー数が爆増

まず最初に、直近1年間の『葬送のフリーレン』の検索ユーザー数の推移を見ていきましょう。

下のグラフのように、検索ユーザーは2023年6月に急増し、その後の9月に一気に56万UUを突破しています。2023年6月は、金曜ロードショーにて「初回2時間スペシャル ~旅立ちの章~」放送が決定したタイミングで、X(旧Twitter)で配信された告知動画は1億7000万件以上表示され、約11万件のいいねが集まりました(2023年11月現在)。

UU数が56万件を超えた2023年9月は金曜ロードショーが放送された月。金曜ロードショーで初回が放送された初めてのアニメシリーズということでも注目を集めました。

『葬送のフリーレン』検索ユーザー数推移

『葬送のフリーレン』検索ユーザー数推移

期間:2022年11月〜2023年10月
デバイス:PCおよびスマホ

『葬送のフリーレン』検索ユーザーの同時検索ワードは?

次に『葬送のフリーレン』と同時に検索されたワードを分析します。上位10位が以下の表のとおりです。

2位の「無料」は、金曜ロードショー放送に合わせて展開された漫画アプリ「サンデーうぇぶり」での原作コミックス1~10巻完全無料キャンペーンが影響したものと思われます。同キャンペーンは、累計1000万部突破&原作公式Xフォロワー10万人記念キャンペーンとして、金曜ロードショーが放送時間までの48時間限定で開催されました。

3位に「金曜ロードショー」が続きました。番組放送日翌日午前0時より各配信サービスで本編エピソードが順次配信開始され、Netflixなどほとんどの配信サービスで視聴ランキング1位を獲得しました。これらのことから、金曜ロードショーが『葬送のフリーレン』人気の大きなきっかけになったことは明らかでしょう。

『葬送のフリーレン』同時検索ワードランキング

『葬送のフリーレン』同時検索ワードランキング

期間:2022年11月〜2023年10月
デバイス:PCおよびスマホ

『葬送のフリーレン』検索ユーザーの特徴

続いて、『葬送のフリーレン』検索ユーザー属性について分析します。

ファンは40代中心、やや男性が多い

検索ユーザーは男性が過半数の54%、年代は40代が最多、次に50代が多いことがわかりました。
「サンデーうぇぶり」全体のユーザー属性と比較すると、女性比率が高く、年代も高め(ミドル層が多い)であることがわかります。

『葬送のフリーレン』検索ユーザー属性/性別

『葬送のフリーレン』検索ユーザー属性/性別

期間:2022年11月〜2023年10月
デバイス:PCおよびスマホ

『葬送のフリーレン』検索ユーザー属性/年代

『葬送のフリーレン』検索ユーザー属性/年代

期間:2022年11月〜2023年10月
デバイス:PCおよびスマホ

(参考)「サンデーうぇぶり」ユーザー属性

『葬送のフリーレン』はファンタジー好き待望のアニメ化?

さらに、『葬送のフリーレン』検索ユーザーのその他の関心ワードを分析したところ、以下のランキングとなりました。TVアニメ化された人気の異世界ファンタジーがずらりと並び、『葬送のフリーレン』のTVアニメ化はファン待望だったと推測されます。

『葬送のフリーレン』検索ユーザーの関心ワードランキング

『葬送のフリーレン』検索ユーザーの関心ワードランキング

期間:2022年11月〜2023年10月
デバイス:PCおよびスマホ

『葬送のフリーレン』公式サイトにもユーザーが集結

次に、『葬送のフリーレン』公式サイトの集客状況を確認します。

『葬送のフリーレン』公式サイトのUU数も9月に急増

まずはUU数の推移です。検索ユーザー数と同じく、金曜ロードショーでTV初お目見えを果たした2023年9月に約80万UUを達成していることがわかります。公式サイトでは翌10月のUU数の若干の下落が見られました。

『葬送のフリーレン』公式サイトUU数推移

期間:2022年11月〜2023年10月
デバイス:PCおよびスマホ

自然検索による流入がメイン、9月以降外部サイト経由も増加

集客構造を推移で見ると、2023年9月の集客は自然検索が大部分を占めました。以前にはほとんど見られなかった外部サイト経由も増えました。

集客の多かった外部サイトは以下の3サイトでした。
1位:アニメ新番組 一覧 「2023年 秋(9月,10月~)」
2位:アニメイトタイムズ
3位:日本テレビ放送網 (NTV)

また、ソーシャルからの流入は
1位:X(旧Twitter)
2位:YouTube
でした。

『葬送のフリーレン』公式サイト集客構造の変化

期間:2022年11月〜2023年10月
デバイス:PCおよびスマホ

『葬送のフリーレン』人気はこれからも続く?

ここまで、『葬送のフリーレン』の検索ユーザー、公式サイトユーザーの動向を分析してきましたが、これらのユーザーが急増したのは2023年9月以降のため、今後どのような動きを見せるのかが気になるところです。

Dockpit最新ログデータから2023年9月と10月の同時検索ワードを比較したものが以下の内容です。

9月は「金曜ロードショー」「TVer」「放送日」など、新規ユーザーらしい検索ワードが大部分を占めましたが、10月になると「登場人物(フェルン、アウラなど)」「視聴率」「海外の反応」など、少し踏み込んだ切り口のワードが増えています。

『葬送のフリーレン』同時検索ワード季節比較 2023年9月VS2023年10月

『葬送のフリーレン』同時検索ワード季節比較 2023年9月VS2023年10月

期間:2022年11月〜2023年10月
デバイス:PCおよびスマホ

まとめ

『葬送のフリーレン』はどんな内容?

『葬送のフリーレン』は、魔法使いフリーレン、勇者ヒンメル、僧侶ハイター、戦士アイゼンたち4人が魔王を倒したその後の物語です。

2022年9月に単行本9巻が発売されたのとほぼ同時にアニメ化が決定して話題になり、2023年10月時点で単行本11巻の累計発行部数は1100万部を突破。TVアニメ化の初回は「金曜ロードショー」(日本テレビ系)で2時間スペシャルとして放送されたことも話題となりました。

『葬送のフリーレン』の人気の背景は?

『葬送のフリーレン』の検索ユーザーは2023年6月に急増し、その後の9月に一気に56万UUを突破しています。
2023年6月は、金曜ロードショーにて「初回2時間スペシャル ~旅立ちの章~」放送が決定したタイミング、9月は放送日でした。金曜ロードショーで初回が放送された初めてのアニメシリーズということでも注目を集めたことことは明らかです。

『葬送のフリーレン』検索ユーザーの特徴は?

検索ユーザーは男性が過半数の54%、年代は40代が最多、次に50代が多いことがわかりました。
「サンデーうぇぶり」全体のユーザー属性と比較すると、女性が多く、年代も高めであることがわかります。

さらに、『葬送のフリーレン』検索ユーザーのその他の関心ワードを分析したところ、以下のランキングとなりました。TVアニメ化された人気の異世界ファンタジーがずらりと並び、『葬送のフリーレン』のTVアニメ化はファン待望だったと推測されます。

『葬送のフリーレン』公式サイトのユーザー推移は?

公式サイトのUU数も2023年9月に急増、約80万UUを達成していました。ただし公式サイトでは翌10月のUU数の若干の下落が見られました。集客経路は自然検索が大多数、9月以降は外部サイト経由も増えました。

『葬送のフリーレン』人気はこれからも続く?

直近の9月と10月を比較しても、検索キーワードが作品名、放送日などではなく、登場人物名や視聴率、海外での評価など、より深い切り口に変わってきたことがわかりました。今後もファンが増えていくと、主人公や声優の人気が高まるかもしれません。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

フリーライター。大手キャリア系企業で編集の仕事に出会い、その後、3つのメディアの立ち上げなど行い、2014年にフリーランスに。医療系、就活系、教育系、結婚系のサイトで執筆中。

関連する投稿


新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

リリースされてから、Z世代を中心に強い支持を集めている「BeReal(ビーリアル)」。2023年初頭から人気を集め始めていますが、いまだにその人気は衰えていません。2024年7月には、日本で広告事業を本格化しはじめたことが大きな話題になりました。今回は、BeRealの最新動向をデータを用いて分析するとともに、広告ビジネスの可能性を調査していきます。


日本のLDHとタイのGMMが一丸となって誕生した新会社G&LFH 背景とトレンドを解説

日本のLDHとタイのGMMが一丸となって誕生した新会社G&LFH 背景とトレンドを解説

2024年6月5日、EXILEを輩出した音楽事務所LDHがタイ大手音楽レーベルGMM MUSICと新エンターテイメント会社【G&LDH】開設を発表しました。タイ最大のメディア企業GMM GRAMMYの子会社であるGMM MUSICは、タイの音楽産業を牽引する存在です。 この合弁会社の設立により、両国の音楽市場の強化と相互の文化理解が期待されています。 本記事では、タイと日本の音楽文化の違いや、音楽がビジネスに与える影響、そしてG&LDH設立の背景を探っていきます。


いすゞの「だれでもトラック」エルフミオは変革を起こすか? Webサイト訪問者データで初動を分析

いすゞの「だれでもトラック」エルフミオは変革を起こすか? Webサイト訪問者データで初動を分析

2024年7月、いすゞ自動車は新型トラック「ELFmio」を発表しました。普通自動車免許で運転でき、「だれでもトラック」と銘打たれるこのトラック。狙いは物流を担うトラックドライバー不足の解決です。そんなエルフミオのインパクトを、Webサイト訪問者データを通じて分析しました。


ECサイトにおけるKPI策定のポイント

ECサイトにおけるKPI策定のポイント

ECサイトの売り上げをあげるためには、KGIの設定だけではなく、KPIの策定が重要なポイントになります。そこで、気になるKPIの策定ポイントや、課題の洗い出し・分析についてご紹介します。効果的なマーケティング施策にお悩みの方や、ECサイトの売り上げが伸び悩んでいる方はぜひ参考になさってください。


“第2次”アサイーブームは続くのか? 検索者属性や検索ニーズからカテゴリ浸透の未来を考察

“第2次”アサイーブームは続くのか? 検索者属性や検索ニーズからカテゴリ浸透の未来を考察

近年再び話題になっている「アサイー」。若い女性を中心に人気を集めているようです。他にはどのような特徴を持つ人がアサイーに関心を持っているのか、アサイー検索者がアサイーのどんなことに興味を持っているのかについて、Web行動ログデータから分析・考察します。そして、アサイーブームのこれからを考えます。


最新の投稿


DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

株式会社ecloreは、同社が運営する「ランクエスト」にて、データベース型サイト運営者を対象に、SEOの実施状況やその効果について調査を実施し、結果を公開しました。


SEOに積極的に取り組んでいるサイトの9割以上が表示速度の重要性を認識!改善に取り組む目的は「顧客体験の向上」と「リピート率の改善」が上位【Repro調査】

SEOに積極的に取り組んでいるサイトの9割以上が表示速度の重要性を認識!改善に取り組む目的は「顧客体験の向上」と「リピート率の改善」が上位【Repro調査】

Repro株式会社は、Webサイト運営・管理者を対象とした、「Webサイトの表示速度改善についての実態調査」を実施し、結果を公開しました。


感性について ~ マーケティングとハプティクス

感性について ~ マーケティングとハプティクス

人には5感が備わっています。さらに突き詰めれば第6感という感覚も。それら人の持つ感性や感覚を補うべくあらゆる技術も日々進歩していますが、人のそれらの代替となるような技術はまだ未完の途上です。それほどに他に取って代われない私たちの感性・感覚。本稿では、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、広告やマーケティングを通して人の感性の深さを説き、ハプティクス(Haptics)を用いて人の感覚の重要性を解説します。


イードとガイエ、リアルとデジタルの融合でアニメファンの推し活を支援する広告パッケージを提供開始

イードとガイエ、リアルとデジタルの融合でアニメファンの推し活を支援する広告パッケージを提供開始

株式会社イードと株式会社ガイエは、全国のファミリーマート、ローソン(※一部店舗を除く)に設置されているマルチコピー機で展開するコンテンツサービス「エンタメプリント」を活用した広告パッケージ「Anime Touch Ad」を共同開発し、販売開始することを発表しました。


ネオマーケティング、ボーダーリンクとの協業で在日外国人リサーチサービスを提供開始

ネオマーケティング、ボーダーリンクとの協業で在日外国人リサーチサービスを提供開始

株式会社ネオマーケティングは、株式会社ボーダーリンクと協業し、在日外国人リサーチサービスを提供開始したことを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ