中国の美顔器業界は大きな変革を迎える?
2022年3月に中国国家医薬品監督管理局が射頻治療器や射頻皮膚治療器などの機器をⅢ類医療器具に分類すると発表しました。この公告は2024年4月1日以降、射頻治療器や射頻皮膚治療器などの製品が医療器具登録証を取得していない場合、生産や輸入、販売が禁止されると定めています。これにより、家庭用の美顔器は「小型家電」とは異なる位置づけとなり、より厳しい規制下で医薬器具として取り扱われることになりました。
業界関係者によると、一般的な業界の慣例ではⅢ類医療器械とされる機器は3段階の臨床試験が必要であり、承認プロセスには数年かかる場合があり、費用も数百万人民元かかることがあるようです。
多大な時間と費用の投資が必要とされることから、一部の企業は美顔器市場からの撤退を選択する可能性があり、これは業界における大きな変革であると言えます。そのため、今年のW11セールでは在庫を減らすために多くのブランドが大幅な値下げセールを行いました。これが今年のW11で美顔器が大量に売れる主要な原因だと考えられます。さらにデータによると、10月24日の夜8時から始まったTmallのW11のプレセール(10月24日~10月31日はW11のプレセール期間)がスタートして4時間、家庭用電化製品カテゴリーのTOP10ブランドのうち、上位3つのブランドはFLOSSOM、JMOON、JOVSとすべて美顔器ブランドが占めていました。Tmallだけでなく、TikTokなどの複数のプラットフォームでも美顔器ブランドがランキングに入っています。
TmallW11のプレセール 家庭用電化製品カテゴリーのTOP10
売れ筋ブランドの変化
では2023年のW11セールの人気美顔器ブランドは何でしょうか?また以前と比べてどのような変化があったのでしょうか?
アリババのデータによると、今年のW11プレセール期間中、美顔器の売上トップ10のブランドは次の通りです。
Amiro、Flossom、YA-MAN、SEAYEO、Jmoon、GEMO、TriPollar、JOVS、Ulike、XINYOU。
首位のAmiroは2015年に設立された中国のブランドで、昨年の売上は200億人民元(約4000億円)を突破しました。トップ20のリストにおいて、中国のブランドが17席を占めており、そのうちYA-MAN、Jmoon、Tripollarのみが海外のブランドです。
2023年W11プレセール期間天猫における美顔器販売量Top20
首位のAmiroは2015年に設立された中国のブランドで、昨年の売上は200億人民元(約4000億円)を突破しました。トップ20のリストにおいて、中国のブランドが17席を占めており、そのうちYA-MAN、Jmoon、Tripollarのみが海外のブランドです。
首位を取ったAmiro美顔器の広告ポスター
美顔器のブランド市場を見ると、中国国内のブランドが強力な競争力を持ち、徐々に美顔器業界の主力になっています。実際に以前までは美顔器市場の主役は日本のブランドでした。しかし2015年前後にはPanasonic、YA-MAN、Refaなどの日本ブランドが自社の美顔器製品を中国市場に導入しました。その後電子商取引プラットフォームの急速な発展やソーシャルメディアの影響もあり、美顔器は中国の消費者に認知されるようになりました。当時中国国内の美顔器ブランドは数が少なかったですが、ここ数年で国内ブランドは急速に成長し、多くの海外ブランドの市場シェアを奪っています。
中国消費者に好まれる機能
トップのランキングに位置する美顔器を見ると、中国の消費者から特に人気のある機能は「抗老化・抗衰え」です。
家庭用美顔器とは、物理学や電子技術、光学などの科学原理を利用して、皮膚を調整し改善する機器のことで、「サロンの技術を自宅で手軽に利用できるようにしたもの」と言えます。美顔器の技術は、音波技術やイオン導入、LEDライト、EMS微電流、RF射频、レーザーの6つの大きなカテゴリーに分類されます。
実際に、W11で売れた美顔器の多くは射頻美容器です。射頻美容器は主に皮膚の真皮層のコラーゲン繊維を特定の温度で加熱し、熱変性を利用してコラーゲン繊維を収縮させ、皮膚を引き締め、血液循環と代謝を促進し、皮膚の弾力性を高める効果があります。ですから、主に抗老化の領域で利用されています。Amiro、Jmoonといったのブランドの人気商品「胶原炮」も射頻美顔器の一種です。
現在市場には多くの種類の家庭用美顔器があり、一つの製品に多様な機能を搭載し、美顔器には複数の技術が組み合わせられています。たとえば、しわを除去する美顔器の多くはEMS微電流とRF射频の2つの技術が組み合わされています。商品の競争力を上げるために各ブランドは多機能型の美顔器の開発に力を入れているようです。
Amiro美顔器の広告ポスター
スキンケア製品の売れ筋ブランドの変化
天猫の報告によると、2023年のW11期間中天猫で販売量のトップ10にランクインしたスキンケアブランドは以下の通りです。
珀莱雅(PROYA)、ロレアル(L'Oréal)、ランコム(Lancôme)、エスティローダー(Estée Lauder)、ヴィノーナ(Winona)、ラ・メール(LA MER)、オレイ(Olay)、スキンシューティカルズ(SKINCEUTICALS)、ヘレナ・ルビンスタイン(Helena Rubinstein)、ゲラン(Guerlain)。
2023年W11に天猫におけるスキンケア品販売量Top20
中国国内ブランドのひとつである珀莱雅が、2023年のW11で初めて首位を獲得し、40%以上の成長を達成しました。珀莱雅は、エスティローダーやロレアル、ランコムなどの国際的な大手ブランドを上回り、トップ3に入っています。Tmallのデータによると、珀莱雅はセール開始から2時間で売上高10億人民元(約207億円)を突破し、あるフェイスクリームは1時間で50万個以上販売されました。Tmall以外にもJDやTikTokなどのプラットフォームでも1位を獲得しました。
トップ20のブランドのうち、中国国内ブランドが6つランクインし、昨年より2ブランド多くなりました。その中には新しいブランドも含まれています。
一方、今年のトップ10のスキンケアブランドには日本のブランドが1つもランクインしていません。中国の観察者ネットの統計によると、SK-IIは2016年以来初めてトップ10から脱落し、同時に資生堂も2017年以来初めてトップ10から外れました。これらのブランドは長い間トップ10にランクインしており、SK-IIは7年間、資生堂は6年間ランクインしていました。
新しいトレンド
近年、中国の消費者は护肤品の成分にますます注目し、より特定のスキンケアニーズを持つようになりました。例えば抗老化やシミの薄化、にきび対策、美白などです。このような需要に対して、欧米系の強力な効果が見えるタイプの製品が人気を博しています。
特に美白ニーズに対して、珀莱雅は「朝C晚A」(朝にビタミンC、夜にビタミンAを使用する)のコンセプトによって、ロレアル、ランコム、エスティローダーなど多くの大手ブランドを凌駕し、Tmall、TikTok、JDなどのプラットフォームでトップに立っています。
PROYAのフェイスクリーム
IPG中国の首席エコノミストである柏文喜氏は、「中国の消費者が化粧品に対する需要と理解を高めている中で、特に化粧品の品質と効果に対する要求も高まっている」と述べています。要するにイノベーションや優位性が不足しているブランドは業績の低下につながる可能性があります。
柏文喜氏はさらに、現在中国国内の化粧品市場が非常に競争激しいことを指摘しています。国産の美容ブランドは中国の消費者のニーズや文化的背景をより理解して、品質、価格、流通などの面で一定の優位性を持っています。これは消費者が国産の美容ブランドをより選好する理由であり、また、このW11で国産美容品が注目される理由でもあります。
参考資料
一边被骂一边卖爆,双11美容仪杀疯了
https://www.cbndata.com/information/287196
日系美妆品牌,消失在双十一榜单
https://www.guancha.cn/GongSi/2023_11_14_715708.shtml
珀莱雅赢麻了,天猫美妆双11首轮榜单公布
https://www.cbo.cn/article/id/51934.html
2023年双11:美容仪的“美丽泡泡”要碎了
https://36kr.com/p/2510800483065728
広東省出身の中国人留学生。現在は名古屋大学でメディアを専攻している。