UU数増加率1位は「Newsphere」、2位は大正製薬のECサイト
まず、訪問ユーザー数の前月比が高い順にWebサイトをランキングしました。以下のトップ10をご覧ください。
デバイスはPCとスマートフォンの合算。ヴァリューズ保有モニタでの出現率を基に、国内ネット人口に即して推計。
1位はポップなニュースマガジン、ECサイトも上位にランクイン
それでは早速、ランキングの1位から3位までを詳しく見ていきましょう。
■1位:Newsphere
前月と比べてサイトを訪れた人が一番増加していたのは、ミレニアル世代向け国際ニュースメディア「Newsphere」でした。
中でもどのようなコンテンツが注目を集めていたのか見ていきましょう。
「Newsphere」のコンテンツランキング(対象デバイスはAndroidスマートフォン、「eMark+」画面より)
「世界で最も美しい顔ランキング」や自動車のニュースなど国際ニュースの中でもキャッチーな話題がそろっていますね。ページごとのユーザー数の偏りは比較的小さいですが、ユーザー数上位11ページを比較すると、うち4ページが車関連のニュースとなっています。
次に流入元サイトの分析から急上昇の理由を分析してみましょう。
「Newsphere」のセッション数流入元(対象デバイスはAndroidスマートフォン、「eMark+」画面より)
上のグラフに見られるように、外部サイトからの流入が最大で、次いで検索、ノーリファラーとなっています。外部サイトの内訳はどのようになっているでしょうか。
「Newsphere」流入元の、2019年6月の外部サイトランキング(対象デバイスはAndroidスマートフォン、「eMark+」画面より)
流入元サイトを見ると、「gooニュース」や「Googleニュース」など、ポータルサイトのニュースページからの流入が多いことがうかがえます。
ここで、比較の対象として前月5月の流入元サイトを見てみましょう。
「Newsphere」流入元の、2019年5月の外部サイトランキング(対象デバイスはAndroidスマートフォン、「eMark+」画面より)
5月と6月の流入元を比較すると、流入元に違いがあることがわかります。5月の方が多様なサイトからの流入が見られますが、5月には6月に流入元の1位と2位を占めたユーザー数の多いニュースサイトの「gooニュース」、「Googleニュース」からの流入がないことがわかります。
以上の状況から、先月よりもユーザー数が2.5倍まで増えたことには、大手ポータルサイトのニュースのトピックスに選出されたことが関係あると言えるのではないでしょうか。
■2位:大正製薬 ダイレクトオンラインショップ
2位の「大正製薬ダイレクトオンラインショップ」は、大正製薬のECサイトです。2019年1月から2019年6月のユーザー数の推移を見てみましょう。
「大正製薬 ダイレクトオンラインショップ」2019年1月から6月のユーザー数推移(対象デバイスはPC, Androidスマートフォン、「eMark+」画面より)
2019年1-6月のユーザー数推移を見てみると、1-3月にかけて下降、3-5月はほぼ横這いであったものが、6月にはおおよそ2月の水準に戻っています。
次にアクセス獲得経路を見てみましょう。
「大正製薬 ダイレクトオンラインショップ」のセッション数流入元(対象デバイスはAndroidスマートフォン、「eMark+」画面より)
上図のように、流入元がほとんど外部サイトであることがわかります。
■3位:dグルメ
3位のdグルメは、料理のレシピからレストランのクーポンに至るまで食に関する情報を総合的にまとめたサイトです。
こちらのサイトも前月と比較してUU数を2倍に増やしていますが、コンテンツからその理由を読み解いてみましょう。
「dグルメ」のコンテンツランキング(対象デバイスはAndroidスマートフォン、「eMark+」画面より)
コンテンツランキングを見てみると、上位3位と6位を占める「dグルメ4周年記念企画!使えば使うほどポイントが積み上がる!|dグルメ」というページタイトルが目につきます。
これらのページは、1日1回アクセスすることで1ポイント=1円として使える「dポイント」が貯まるキャンペーンの特設ページです(下図参照)。このキャンペーンがUU数の増加に貢献していたと考えられるでしょう。
トラフィック獲得経路も確認してみましょう。流入元を見てみると、検索による閲覧はほとんどなく、大半が外部サイトからの流入であることがわかります。
「dグルメ」のセッション数流入元(対象デバイスはAndroidスマートフォン、「eMark+」画面より)
さらにその流入元のサイトを見てみましょう。
「dグルメ」流入元の、2019年6月の外部サイトランキング(対象デバイスはAndroidスマートフォン、「eMark+」画面より)
流入元のサイトを見てみると、上位8サイトのうち5サイトがdocomo系列のサイトであることがわかりました。
4月の急上昇メディアとして浮上した「楽天ポイント加盟店サービス」と同様に、多岐にわたるビジネスを展開するdocomoの各サイトでキャンペーンを宣伝し、トラフィックを獲得しているようです。
4位「メディカルノート」のUU数増加は手足口病の影響か
ここからは4位以下でUU数増加の原因が面白そうなものをいくつかピックアップしていきたいと思います。
まずは4位の「メディカルノート」。流入元を調べると1位から3位とは異なり、検索による流入が大半を占めています。この点から、ユーザーの関心が高まったことで検索件数が増えた何らかの事象との関係が予想されます。
「メディカルノート」のセッション数流入元および2019年6月の検索キーワードランキング(対象デバイスはAndroidスマートフォン、「eMark+」画面より)
そこで検索に用いられたキーワードを調べてみたところ、セッション数の1位、3位、7位が「手足口病」を含んでいました。
手足口病は夏の流行病です。今年2019年の夏は手足口病が千葉県でかなり流行しており、心配してインターネットで調べるうちに「メディカルノート」に辿り着いた可能性が考えられます。
7位「自然食研」はしじみ習慣のキャンペーンが寄与
また、7位の「自然食研」はコンテンツランキングに特徴がありました。
ランキング上位10位を見ると、そのすべてが同社の主力商品の一つである「しじみ習慣」のキャンペーンページになっています。
「自然食研」のコンテンツランキング(対象デバイスはAndroidスマートフォン、「eMark+」画面より)
ここでPV比率が16.7%にもなっている1位のディレクトリを開いてみると、以下のようなページになっていました。
このカプセル自動販売機を回し、当たりが出ると試供品がもらえる仕組みとなっています。当たりが出るまで何回でも回せるため、実質的には試供品のサービスなのですがゲーム性を持たせてあります。
コンテンツランキングの上位10位はことごとく「しじみ習慣」の試供品キャンペーンに関するページでした。
まとめ
最後に2019年6月の急上昇サイトの、注目の訪問ユーザー数増加要因をまとめます。
1.ポイントや試供品の無料配布
「dグルメ」や「自然食研」のように、そのページを訪れるだけ、あるいは簡単な操作をするだけでポイントがもらえたり、試供品がもらえるという動機付けは当然ながら有効のようです。
2.外部サイトからの呼び込みがカギ
急上昇メディアを分析した結果、「メディカルノート」のように特定のテーマでの検索流入が増える場合もありましたが、基本的には外部サイトからの流入が急上昇の要因でした。楽天やドコモでは自社サイトでのPRにより確実にUU数を伸ばしており、「Newsphere」のUU数の増加もポータルサイトからの流入によるところが大きいことがわかりました。
今回取り上げたトレンドや他社事例を活用し、キャンペーン施策立案などのマーケティング活動に活かしてみてください。
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ウィーン大学への留学を経て京都大学文学部卒業。
外資系大手ITコンサルティング会社に勤務後、フリーランスライターに転向。