ペルソナ=商品・サービスが想定する架空の顧客像
ペルソナは、古典劇で役者が使用した「仮面」のことをさす言葉でしたが、「人間の外的側面」を心理学者のユングがペルソナと呼び、そこからマーケティングにおいては本来とは違う意味を持つ言葉となりました。
ペルソナはマーケティングにおいて、企業が提供している製品やサービスの中で、一番重要かつ象徴的なユーザーのモデルのことで、ターゲットとなる人物像です。
■ペルソナのメリットと必要性
ペルソナの一番のメリットは「ユーザー視点を得られる」点です。この場面で顧客はどう判断しどう行動するかを予測できるようになります。
例えば広告を打つ場合、ペルソナの生活パターンや利用シーンに合わせてより効果的な媒体やメッセージを考えられます。
またペルソナを使うと複数のメンバーや関係部署で明確なユーザー像を共有できるので、認識のすり合わせが容易になります。その結果、会社全体で矛盾のない一貫したマーケティングができます。
まとめると、マーケティング戦略を考える上でペルソナのメリットは、より効果的な施策を企画・実行できるだけでなく、担当者間の共通認識を作り認識のずれを無くせる点が、重要なポイントです。
■ペルソナのデメリット
ペルソナの作成には、情報収集をはじめ時間とコストがかかります。
また、効果的にターゲットを絞り込めますが、詳細に設計されたペルソナを意識するあまり、大胆な発想を妨げてしまうこともあります。
最もデメリットが出るのは、ペルソナ像が間違っていた場合で、当然ながら効果的なマーケティングは行なえません。そのためペルソナの設計には、細心の注意を払う必要があります。
ペルソナの作り方
ペルソナとしてまとめるプロフィールには、氏名・年齢・居住地・職業などの属性情報に加えて、価値観・身体的特徴・性格的特徴・趣味趣向などの定性的データを使用し、時にはイメージをより明確化するために写真やイメージイラストなどを用いて設計を行います。
ペルソナを作るには、ターゲットに対する情報収集を行い、その情報を仕分けて、ペルソナのプロフィールとしてまとめます。
■1.ターゲットを設定する
ペルソナを作る際は、まず大まかなターゲットを設定します。例えば、年齢や性別などの属性で顧客をグルーピングしたものなどがあります。ターゲットを絞り込めば、データ収集の負荷が減ります。
■2.データを収集する
ターゲットを設定したら、次はペルソナを形作るデータを収集します。データを集める方法には、インタビュー、アンケート、アクセス解析、TwitterやFacebookなどのSNS、Yahoo!知恵袋、口コミサイトなどのCGM(Consumer Generated Media)が挙げられます。
必要となるデータには数値や割合で表せる「定量データ」と「趣味嗜好」「価値観」のように数値では表せない心理や行動を表す「定性データ」があります。特に商品のブランディングを行う際には、定性データは欠かせません。
ペルソナのプロフィールは年齢や性別だけではなく、家族構成や年収など、人物像が明確にわかるように設計を行います。
そして大切なのが、行動ではなく「行動を起こす理由や動機」です。
例えば、「スマートフォンでWebサイトから情報収集を行う」という設定の場合、「営業を担当していて、移動中の空き時間を利用して情報収集をすることが多いからスマートフォンを活用する」というように、行動に理由をつけることで、ペルソナがより現実の顧客に近い形になります。
ペルソナを作る上で必要なデータには、下記のようなものがあります。
定量データ
【属性】
・年齢
・居住地
・職業
・年収
【行動特徴】
・よく利用するWebサイト
・よく利用するアプリ
・SNS利用度
・情報収集の行動パターン
定性データ
【趣味嗜好】
・趣味
・家族構成
・好きなブランド
・好きな雑誌
・休日の過ごし方
情報収集は、顧客に対するアンケートやインタビューを行うことが一般的ですが、ヴァリューズの「eMark+」を利用すると、例えば「40代専業主婦・子供あり」のユーザーがどのようなWebサイトを普段よく利用しているかなどがわかり、行動データに基づいた、より実態に近いペルソナを作ることができます。
事例:eMark+で「40代専業主婦・子供あり」層が全体ユーザーに比べてよく閲覧しているサイトを集計
■3.集めたデータを分析して「一人の顧客像」を作り、ペルソナにまとめる
集めたデータからデモグラフィック(人口統計学的属性)、サイコグラフィック(心理学的属性)を分析し、それを元にペルソナの人物像をできるだけ詳細に詰めていきます。
ペルソナ作成の過程で、架空の人格であるペルソナに具体的な人物名を付ける場合もあります。これにはイメージを明確する効果があります。
また、製品やサービスに対する行動を描くのも大切なポイントです。人間関係やエピソードなどの物語を紡ぎ、現在の様子までを規定すると、どんなアプローチが効果的なのかより具体的にイメージできます。
ペルソナを使用したマーケティングでは、意識的に行う消費行動ではなく、潜在的な思考による消費行動を把握できます。そのためには、詳細な設定が必要不可欠なのです。
■ペルソナ設計で陥りがちなミス
ペルソナ設計では、理想の顧客を表す半架空の人物を作成しますが、この際にすべてを推測のみで作成してしまうと、実際のユーザーとはかけ離れたペルソナになってしまいます。
また折角ペルソナを設計しても、分かりづらいのでは意味がありませんよね。ペルソナをより明確に定義し、設計ミスをしないためにも、定量的なデータをベースにすることは必要不可欠といえます。
デモグラフィック
デモグラフィックは、属性情報をさし、年齢や性別そして学歴などが含まれます。
通常マーケティングでは、これらの情報で絞り込みを行って行動や思想を分析します。ヴァリューズの「eMark+」はデモグラフィックデータの収集に効果的で、インタビューやアンケートなどで収集するよりも、短時間で費用を抑えることができます。
「eMark+」で把握できるデモグラフィックデータの一例
サイコグラフィック
サイコグラフィックは、心理的な特性をさし、価値観や性格そしてライフスタイルなどが含まれます。デモグラフィックからは、サイコグラフィックの内容を知ることはできません。
定量的なデータに基づく、ペルソナ設計
定量的なデモグラフィックデータに加えて、定性的なサイコグラフィックデータを組み合わせるペルソナ。ヴァリューズの「eMark+」では、ユーザーの性別・エリア・年代などのペルソナ設計に欠かせない定量的なデータをはじめ、閲覧WEBサイトや検索キーワードの特徴データを取得することができます。また、自社と競合サイトの利用ユーザーを比較しながら分析することも可能です。
こうしたeMark+の機能がパワーアップした新ツール「Dockpit(ドックピット)」が2020年10月にリリースされました。データ収集に掛かる膨大な時間とコストを削減したい方は、Dockpitの無料版をご利用になってみてください。
ペルソナ作成の事例紹介
■複数のペルソナを用意した「富士通キッズサイト」の事例
富士通では「富士通キッズサイト」でペルソナマーケティングを実施し、そのペルソナをハンドブックとして公開しています。マーケティングの核となるペルソナを公開する企業は珍しく、このハンドブックは1万ダウンロード以上されています。
富士通キッズサイトのペルソナの特徴として、利用者である小学生ペルソナと、選定者となる学校の先生、保護者の3つのペルソナを分けています。
子ども向けサイトの開設で得たユニバーサルデザインのノウハウをまとめた「富士通 キッズコンテンツ作成ハンドブック」をご紹介します。
■高級車購入者のペルソナ事例
ネット行動分析サービスを提供するヴァリューズとネットイヤーグループでは、オンライン上のネット行動ログとユーザー属性情報を用いて、定量・定性的にユーザーエクスペリエンスを明らかにする研究活動を共同で行い、その結果をペルソナにまとめました。
高級車を購入するユーザーは「公式サイト(自動車メーカーサイト)」「メディア」「口コミ」「中古車購入」「関連グッズEC」で閲覧傾向が異なる6つのターゲットに分けられます。
6つのターゲットの中で、一番構成比が大きい「公式サイト(自動車メーカーサイト)」中心のターゲットについてユーザー像を深堀りした結果、ブランドの世界観をそのまま受け止めるタイプが多く、DMやイベント、ディーラーなどブランドからのコミュニケーションが有効と示唆されました。
ペルソナについてのまとめ
商品・サービスを利用する典型的なユーザー像を仮定する「ペルソナ」は、カスタマージャーニーやペルソナ・マーケティングに活用されています。ペルソナの基本や事例、学ぶための本をご紹介します。
改めておさらい!ペルソナの意味やメリット、作り方から事例までまとめ
https://manamina.valuesccg.com/articles/733商品・サービスが想定する架空の顧客像を「ペルソナ」として設定し、マーケティングに活用する事例が増えています。購買行動が多様化しペルソナが必要になった背景や利用するメリット、ペルソナの作り方からカスタマージャーニーマップで活用する方法、活用事例をまとめました。
マーケティングに役立つペルソナの活用方法を、具体的な事例と作り方に役立つ本を通じて学びます。ターゲットを代表する典型的なユーザー像を「ペルソナ」として設定すると、顧客視点のマーケティングになると共に関係者間でターゲット像を共通認識できるメリットがあります。
商品・サービスを利用する典型的なユーザー像を仮定する「ペルソナ」を使うと、事業開発や製品・サービスの見直しを顧客視点で行えるメリットがあります。今回の記事では、ペルソナの分析例をいくつか挙げて、ご紹介します。
まとめ
ペルソナを使うと顧客目線のマーケティングが可能になるとともに、関係者間で共通認識を持つためのツールとしても使えます。ペルソナは具体的で詳細な人物像を作り上げるのが特徴なので、それに必要な定量データや定性データを収集します。本記事の調査で利用したeMark+のパワーアップ版「Dockpit」の定量的なデータを活用して、ペルソナの設計にお役立てください。
BtoCとBtoBでは購買プロセスが異なるので、カスタマージャーニーの作り方も変わってきます。BtoBでは検討期間が長く関係者が多い特徴があります。カスタマージャーニーを作るにあたっては、キーパーソンをペルソナに設定し、社内を説得できる材料を提供しましょう。BtoBのカスタマージャーニー事例もご紹介します。
カスタマージャーニーという用語は有名ですが、いざ自社のマーケティングに活用しようとすると作り方や背景、具体的な活用方法に悩む担当者も多いはず。実践経験が少ないときは、手元に書籍を置いて都度参考にすると良いでしょう。
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