コロナ前後で変化したシニア市場を理解する|ヴァリューズ×リクシス共催セミナーレポート

コロナ前後で変化したシニア市場を理解する|ヴァリューズ×リクシス共催セミナーレポート

増加する日本の65歳以上の人口は既に3568万人と、シニアマーケットはその存在感を大きく増しています。しかしながら、実際のシニアがどのような生活を送っているのか、コロナ禍でどのような生活の変化があったのかといった実態を的確に知ることはなかなかできません。そこで消費者のインターネット行動データ分析に強みをもつヴァリューズと、シニア市場のマーケティングプラットフォームサービスを提供するリクシスで協力し、ウェブ行動ログ分析と定性調査の手法を駆使して調査。コロナ前後のシニアの生活実態に着目した調査結果をオンラインセミナーにて紹介・解説しました。


株式会社リクシスとは

2016年創立。代表取締役CEO佐々木裕子氏。
「大介護時代に全ての人の物語が輝く世界を」をテーマに、超高齢社会に、介護に関わるすべての人を心理・物理・情報ハードルから解放し自分の「選択」ができる世界を実現するということをミッションに活動。
「高齢者との定期接点」で得られた知見を元に、テクノロジーを媒介として、シニアやそのご家族、すべての年代の人が「自分らしく生きる」ための選択肢を提供する事業を展開中。
https://www.lyxis.com/service/

図:株式会社リクシス、ミッション

図:株式会社リクシス、ミッション

スピーカー紹介

図:スピーカー紹介

図:スピーカー紹介

コロナ前後でシニアの生活にどんな変化があったのか

健康状態によるシニアの分類

株式会社リクシス 木場猛氏(以下、木場):「まず、およそ3600万人のシニア層(65歳以上)を健康な状態から要介護になるまでの状態を4段階に分けています。

内訳としては、健康な方が1300万人程度、プレフレイルが1200万人、フレイルが400万人、要介護の方が670万人程いらっしゃいます。

フレイル・プレフレイルという言葉に馴染みのない方もいらっしゃるかと思いますので、簡単にご説明すると、フレイルとは『老化に伴って色々なリスクを抱えた脆弱な状態』を言います。

ここでは歩行速度を目安に分けていますが、実際に分類する上では、厚労省の5つの項目のチェックリストで3つ以上当てはまる方がフレイル、1つか2つの方がプレフレイルと分けられています。」

図:健康状態によるシニアの分類

図:健康状態によるシニアの分類

自粛期間に予想されていたシニアへの影響

木場:「自粛期間のシニア層への影響について、老年医学会をはじめ、様々な機関からも出されましたが、自粛期間による「社会とのつながり」の減少をきっかけに、ドミノ倒しに衰えが進む可能性が示唆されていました。

こちらの2020年1月から4月の国立長寿医療研究センターの調査でも、高齢者の身体活動時間が全体の3割減ったという結果が出されています。」

図:高齢者の身体活動時間の減少

図:高齢者の身体活動時間の減少

木場:「次は、要介護の方と介護の手前の方に分けて、それぞれにどのような影響があったのかをお話させて頂きます。」

要介護の方への影響

要介護の方にどのような影響があったのかをまとめた調査では、下記のような意見が寄せられたと紹介されました。

・通いの場、集いの場に行けなくなった(デイサービス・高齢者サロンなど)
・通院ができなくなった

木場:「結果として、身体機能の低下が進み、重度化したという意見も多数上がりました。(アンケート回答者は在宅介護サービス提供者・ケアマネージャーによる)

また、身体面ばかりではなく精神面にも影響が出ており、活動量の減少に伴って認知症状が出現ないし悪化したと回答した方もいました。活動量が低下すると認知機能にも影響すると言われている当初の懸念通りの事象が表れています。」

図:要介護者への影響グラフ

図:要介護者への影響グラフ

木場:「また、介護には様々な形態があるため、それぞれに影響の範囲も違います。例えば在宅介護の場合では、デイサービスなどの各種サービスの縮減・休止や、利用自体を控えるといった影響がありました。また施設入居の場合では、外出禁止、外部事業者の出入りが不可になり不都合が増えるといったこともありました。」

■外出自粛による要介護者への影響

外出の減少 → 活動量の低下 → 認知機能の低下
通院控え → 状態把握の遅延 → 状態の悪化


木場:「また、前述のように外部サービスなどに頼れない場合、家族の負担も増加したのではないかと考えられます。
実際に高齢者の家族対象に調査したデータを見てみると、『仕事を休んだ』という方が4割程度。また『介護負担のため体調不良となった』『介護負担のため抑うつ気味になった』という方が3割にものぼりました。」

介護前のシニアへの影響

木場:「次に健康な方、フレイル、プレフレイルに該当する方への影響を見ていきます。

オムロンヘルスケア株式会社による65歳以上の高齢者1000人に対する調査では、2020年7月時点、大きく減少した行動として『旅行・買い物』があがっています。」

図:介護前シニアへの影響

図:介護前シニアへの影響

この後、介護前シニアの生活にどの様な変化があったのでしょうか。

木場:「昨年9月、東京都内の高齢者クラブにて80代前後の高齢者にヒアリングした際には、「買物や通院は通常に戻ったものの 通いの場はまだ再開されていない」との回答がありました。
この様な背景から、高齢者自身から「体調変化に自覚がある」との声もあがっていました。

例えば、回答頂いたうちの一つの『夜眠れない』という変化については、精神面での不調よりも、日中の活動場所がないため昼寝をしてしまうといった、当人にとっては軽い意味合いの趣旨でした。しかし、こういった些細な生活変化でも活動量の低下につながり、機能の衰えが発生して進んでいくことに結び付きかねないと考えることができます。そういう点では、見過ごせない重要な変化と言えます。」

一方で、「新しく始めたこともある」と言う高齢者も。

木場:「実店舗に行きづらいという背景からか、ECでの購入をはじめた方や、iPadを買って電子書籍を読みたいという方もいらっしゃいました。このように自粛期間やwithコロナの今が新しい文化を取り入れるきっかけにもなっていると言えそうです。」

図:9月時点での高齢者クラブヒアリング

図:9月時点での高齢者クラブヒアリング

高齢の親を持つ家族への影響

では、高齢の親をもつ現役世代の家族にはどの様な影響があったでしょうか。

木場:「現役世代の7割以上が、「 外出自粛期間に親のことを考えるようになった」と回答しています。」

図:高齢者の家族への影響

図:高齢者の家族への影響

木場:「また別の調査によれば、「以前より頻繁にメールやLINE、電話をすることが増えた」といった家族間のコミュニケーションが増えたという結果が出ています。

しかし、まだ懸念もぬぐえません。
コロナ禍での生活が変化している今のタイミングで介護初期や介護を開始しようとしているご家族にとっては、様々な混乱が生じているのも事実としてあります。
家族間コミュニケーションが密になることは確かに好ましい事ですが、一方で外部サービスや相談先との連携は難しい状況のままです。

このような背景から、現在の介護の状況としてはコロナ以前より家族が負担を抱え込みやすい状況と考えます。」

図:高齢者の家族への影響

図:高齢者の家族への影響

シニアのウェブ行動特徴とコロナウイルス禍による変化

セミナー後半では、シニアのウェブ行動がどうなっているのかという事と、それがコロナ禍によって生活がどう変化したのかという点について株式会社ヴァリューズ ソリューション局 マネジャーの竹久 真也(以下、竹久)が解説しました。

スピーカー紹介

図:スピーカー紹介

図:スピーカー紹介

本日のテーマ

⚫︎この5年間で高齢者(65歳以上)のインターネット利用者は1.5倍にも増加

⚫︎「高齢者のインターネット利用の特徴」、「特にコロナ前後による変化」の2点を深掘り

高齢者のウェブ利用特徴

竹久:「65歳以下では携帯電話・スマートフォンがインターネット利用経路として多い一方で、65歳以上ではスマートフォンが49.3%に対して、PC利用が39.4%となっており、まだまだPCがネット利用の基本的な窓口となっているユーザーも存在することが考えられます。」

図:高齢者のウェブ利用特徴・デバイス

図:高齢者のウェブ利用特徴・デバイス

竹久:「続いては、PCとスマートフォンのそれぞれのデバイスで、いつインターネットを利用するのかという時間軸での比較、ライフスタイルに起因する調査を見てみましょう。

灰色の20代を示す曲線と比べ、ピンク色の65歳以上の曲線をみると、朝8〜9時ごろの時間帯が利用のピークとなっています。スマートフォン・PCともに同じ結果となっていることから、高齢者の生活様式・ライフスタイルがうかがえる結果となっています。

ライフスタイルに着眼することによって、高齢者をターゲットとするプロモーションを打つ際のタイミングや時間帯の参考にもなるのではないでしょうか。」

図:高齢者のウェブ利用特徴・時間帯

図:高齢者のウェブ利用特徴・時間帯

竹久:「また、高齢者の閲覧しているウェブサイトや利用しているアプリなどの調査結果を総じて見てみると、インターネット・ウェブ行動は、高齢者にとって未だ情報収集ツールとしての利用範囲にあることが見えてきました。

とは言え、この5年間で高齢者の利用するアプリが大幅な変化を遂げていることも確認できました。

SNS(LINE・Twitter・Instagram・Facebook)や、ショッピングアプリ(Amazon・楽天)、動画アプリ(YouTube・TVer・AmazonPrime・アベマなど)などのユーザー推移を見てみると、若い世代に比べて高齢者が利用しているメディアの変化や利用数も伸長していることが見受けられます。このような結果からも、高齢者のウェブ利用の変化は大きいと言えるでしょう。

継続的に動向を把握し続けることが、変化する市場であると言える高齢者マーケティングでは非常に重要であると考えられます。」

図:高齢者のウェブ利用特徴・メディアの変化

図:高齢者のウェブ利用特徴・メディアの変化

コロナによるウェブ利用の変化

竹久:「ここからは、さらにコロナ禍前後にフォーカスして、高齢者のウェブ行動がどう変わったかを見ていきます。

まず利用している時間帯にどのような変化があったのか見てみます。
2019年12月と2020年12月の、PCとスマートフォン、それぞれの利用量を調査した結果です。

これを見てみると、利用時間帯の大きな変化は見られませんでした。しかし利用量で見てみると、スマートフォンに関しては変化があまりない一方、PCでは全時間帯ともに利用量が増加している傾向が見られました。これはコロナ禍において、在宅時間が増加したことが起因しているとも考えられるかと思います。」

図:コロナによるウェブ利用の変化・時間帯

図:コロナによるウェブ利用の変化・時間帯

続いてどのようなウェブサイトを利用するようになったかを、昨年比のグラフを用いて解説。

竹久:「色がついているセルに注目すると、特に高齢者では、若年層に比べて「ショッピング」「動画・ゲーム」「製品・サービス」「オークションサイト」「レシピサイト」といったサイトの利用が大きく伸びていることが確認できました。

これらの変化から、高齢者のインターネット利用が、情報収集から購入といったアクションにつながるものまでに広がりつつあるといった可能性が読み取れると考えます。」

図:コロナによるウェブ利用の変化・サイト種類

図:コロナによるウェブ利用の変化・サイト種類

竹久:「コロナウイルスの拡大後、全世代的に、日用品や食品などをインターネットで購入するようになった層が増加しているという背景があります。中でも高齢者のECでの継続購入意向の数値は要注目です。

これは1度目の緊急事態宣言発令後の頃に行った意識調査ですが、他の世代に比べ、女性の60歳以上が(洋服については70%、化粧品については76%)と多い割合でECでの継続購入の意向があると回答しています。
これらからも、いよいよ高齢者にもECの波が来ていると言っても過言ではないと考えます。」

図:コロナによるウェブ利用の変化・EC利用

図:コロナによるウェブ利用の変化・EC利用

シニアのウェブ行動特徴とコロナウイルス禍による変化|まとめ

竹久:「高齢者のウェブ行動というのは、ここ数年で大幅に利用が増加しており、最もインターネット利用の変化が激しい世代だと言えそうです。

このような高齢者へのアプローチやプロモーションを行う場合には、まずは高齢者のライフスタイルをより深く認知することが必要と考えます。

コロナ禍での生活変化を経て、高齢者の利用するウェブサイトやアプリが変化していること、さらにそれらの利用増加も垣間見ることができた今回の調査結果を総じて見ると、今後、高齢者によるEC市場は大きな成長が見込まれると言えそうです。」

図:まとめ

図:まとめ

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この記事のライター

マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。

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