2大比較サイト「mybest」「価格.com」、商材ごとの使い分けとは?

2大比較サイト「mybest」「価格.com」、商材ごとの使い分けとは?

複数の商品を比較検討する際に役立つ比較サイトですが、商材によって、比較サイト間での使い分けは起きているのでしょうか。今回はWeb行動ログデータを用いて、利用者の多い「mybest」と「価格.com」それぞれに対する生活者のニーズを徹底分析します。


お手軽提案の「mybest」とこだわり比較の「価格.com」

まずは、「mybest」と「価格.com」それぞれの特徴を整理します。

「mybest」とは、株式会社マイベストが運営する、選択という領域に特化した情報サイトです。このサイトの特徴は、利用者の選択の手間を最小限にしてくれることです。
「mybest」では、一つの記事の中で、「選ぶときに注意すべきポイント」「人気ランキング」「人気商品比較」などが紹介されています。そのため、「mybest」は1つの記事を読むだけで、選び方の理解から商品の比較、決定まで完結できる構成になっています。

「特にこだわりはないけれど、商品ごとの違いが分からず、結局どれを選ぶべきか悩む」といった経験は誰しもあるのではないでしょうか。「mybest」の記事では、迷ったら1位に紹介されているものを選べばいいという手軽さがあります。

「mybest」のランキングは、実際に商品を使用した社員の主観によって決められています。「主観で決まる」というと一見信ぴょう性が疑わしいようにも聞こえますが、「mybest」は社内で一つ一つの商品の性能を丁寧に検証しています。一般の口コミと違って、複数の商品を実際に使用し比較したうえでの意見なので、口コミよりもむしろ客観的で信頼性が高いと言えるのではないでしょうか。

ユーザーファーストを徹底するために、僕らがこだわっている15のこと(企業秘密)|吉川 徹

https://note.com/toruy/n/nb8658d9d7fd8#79288e31-774f-43bb-b492-13c2eb10acc2

僕らのサービス「mybest」は、いま月間で3500万人が5000万回くらい使ってもらえるまでに成長しています。 ここまで成長することができたのも、創業以来「ユーザーファースト」にこだわっていたからだと思っています。 Googleは 「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」 という哲学を掲げていますが、僕らもまったく同じ考えです。 mybestは、ひとことで言えば「選択をサポートするサービス」です。 片側にユーザーがいて、もう片側にたくさんの選択肢(モノやサービス)がある。僕たちはそのあいだに立ってユーザーに最適な選択肢をマッチングさせようとしています。

一方の「価格.com」とは、株式会社カカクコムが運営している、ECサイトで販売されている商品の価格を比較できるサイトです。選び方の解説から始める「mybest」と異なり、「価格.com」ではすぐにランキング画面にたどり着くことが出来るため、「商品購入の判断基準は持っているので、早く商品の情報が欲しい」という方に向いていそうです。

また、「価格.com」では商品のスペックやレビューが集約されています。左下の画像のように、ランキング一覧から気になった商品を選択し、右下の画像のように細かい情報を比較することができます。

「mybest」のコンテンツは、「利用者に合った選択肢を提案してくれる手軽さ」が魅力的でした。対する「価格.com」は利用者が自ら比較しやすい構成になっているため、「商品にこだわりがあって、じっくり比較したい」というニーズに応えやすいサイトのようです。

若い世代では「mybest」が人気?

では、それぞれのサイトはどのような層が利用しているのでしょうか。ここからは、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて分析します。

下記グラフは、各サイト接触者の性別と年代の割合を表しています。両者の性別割合を比較すると、「価格.com」の方が男性の割合がやや高いことが分かりました。また、年齢については「mybest」の方が20〜30代の割合が高く、より若年層からのアクセスが多くなっています。

「mybest」「価格.com」サイト接触者の性別・年代割合
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC、スマートフォン

先述した通り、「mybest」のコンテンツは1記事で完結できるうえに、迷ったら1位で紹介されている商品を選べばいいという手軽さが特徴的です。タイパを意識する若い世代にとっては、お手軽な「mybest」の方が受け入れられやすいのかもしれません。一方で、既に商品選びの軸がある程度固まっている50〜70代にとっては、「価格.com」の方がニーズに応えやすいのかもしれません。

加えて、「mybest」は2016年に開設されたばかりの新興メディアです。そのため、上の年代は使い慣れた「価格.com」を利用するという傾向もあるのかもしれません。

また、後ほど紹介しますが、各サイトごとに主に検討されている商品にも違いがあり、その商品の購入層の違いが反映されている影響もありそうです。

タイパについて興味のある方は、こちらの記事も合わせていかがでしょうか。

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受動的な検索は「mybest」、能動的な検索は「価格.com」

各サイトへの流入キーワードについても見ていきましょう。各サイトを閲覧している人が、どんなワードで検索をかけて流入しているのかを知ることで、利用者のニーズを理解するヒントが得られるかもしれません。

下記の表では、両サイトに流入するときの検索に含まれていたワードを、検索数の多い順に並べています。また、右側の棒グラフは各サイトの検索数シェアを表しています。

前提として、「価格.com」の方が利用者数の規模が大きいため、シェアで優位を取りやすい傾向があります。一方で、「おすすめ」「ランキング」といったワードでは「mybest」の方が多くのシェアを獲得しています。対して「価格.com」は、サイト名に直接関係しそうなワードを除くと、「比較」や「口コミ」といったワードで過半数のシェアを占めています。

「mybest」「価格.com」の流入キーワード(単語分割)
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC、スマートフォン

「mybest」は、「とりあえず人気なものが知りたい」というニーズの受け皿になっている様子がうかがえます。
また、「mybest」の記事は「〇〇のおすすめ人気ランキング〇〇選」というタイトルがつけられている場合が多いため、「おすすめ」や「ランキング」のワード検索にヒットしやすいというSEO的な要因も含まれているかもしれません。

一方で「価格.com」のシェアが多い流入ワードからは、様々な観点から自分自身でじっくりと比較検討を行い、失敗を防ぎたいという生活者のニーズがあると考えられます。

では、これらのニーズの違いに対して、検討されやすい商材にはどのような違いがあるのでしょうか。

日用品は「mybest」、高額商品は「価格.com」

つづいて、各サイトのランディングページも確認しておきましょう。ランディングページとは、サイト訪問者が1セッションの中で最初にアクセスしたページのことです。今回は、ランディングページから、どのような商材が注目されているのか検証します。

まずは、「mybest」のランディングページで、アクセスが多かった順に上位20位を見ていきましょう。2位は「キャッシュレス決済」のサービス比較でした。他にも、「シャンプー」、「洗濯洗剤」などの日用品や「シャワーヘッド」、「モバイルバッテリー」などが上位にランクインしています。

「mybest」ランディングページ ランキング
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC、スマートフォン

日用品は使用頻度が高く、何度も買い替えることが想定されるため、「慎重にならずにオススメされたものを使ってみよう」と考えやすいのかもしれません。

同様に、「価格.com」のランディングページも見てみましょう。上位にランクインしている商品を確認してみると、家電や「パソコン」「カメラ」「バイク」「スマートフォン」などがあります。「mybest」と比較すると、高額な商品が多いと言えるのではないでしょうか。

「価格.com」ランディングページ ランキング
集計期間:2023年5月~2023年4月
デバイス:PC、スマートフォン

「価格.com」でよく検討されている商品は、数年単位で使用できる耐久商材が多く、購入する際は慎重になりやすい商材と言えます。そのため、オススメされたものを気軽に受け入れるのではなく、自分が求めている性能を持っているか情報を確認し、口コミを精査した上で購入したい時は「価格.com」が選ばれやすいのかもしれません。

まとめ

今回は、「mybest」と「価格.com」の利用者層や利用目的を分析しました。それぞれまとめると、以下のようなことが分かりました。

「mybest」
・コンテンツ内容:選択肢を提案してくれる。
・利用者の特徴:明確に欲しい商品像や比較軸が定まっていない。
・ニーズ:おすすめの商品を受動的に提案されたい。
・主な検討商材:日用品など、気軽に購入できる商品が検討される傾向にある。

「価格.com」
・コンテンツ内容:口コミやスペックをじっくり比較できる。
・利用者の特徴:商品購入の意思決定をするうえで、自分なりの評価基準を持っている。
・ニーズ:自分の評価基準と照らし合わせて、最適な商品を能動的に比較して探したい。
・主な検討商材:家電など、じっくり吟味したい高価格帯の耐久商材が検討される傾向にある。

どちらも比較サイトではあるものの、消費者の利用目的は大きく異なることがわかります。家電・日用品マーケターの方や、比較サイトに広告出稿を検討されている方は、参考にされてみてはいかがでしょうか。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

2024年4月に入社予定の大学4年生です。大学では経済学部で主に会計学を学んでいます。

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