2023年6月の急上昇アプリランキングTOP25
早速、アプリトレンドランキングを見ていきましょう。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。
下記の表は、2023年6月時点で、20代のユーザー(※)において、利用者の前月比上昇率が高い順にアプリをランキングにしたものです。
※20代後半の、Z世代に含まれないユーザーも一部含みます
アプリ 20代アプリ利用者数の前月比上昇率ランキング
集計期間:2023年6月
デバイス:スマートフォン
ここからは、特に注目のアプリをピックアップし、20代のトレンドを考察していきます。
若年層では「オンクレ」が流行
■「オンクレ」とは?
急上昇ランキングTOP25には、11位「Giftole」と23位「アラクレ」という「オンクレ」アプリがランクインしました。
「オンクレ」とは、「オンラインクレーンゲーム」の略称です。オンラインクレーンゲームでは、24時間どこでもスマホでクレーンゲームを遠隔操作して遊ぶことができ、獲得した景品は自宅に発送される仕組みになっています。
では、オンラインクレーンゲームは、どのような層に利用されているのでしょうか。
下記のグラフは、今回ランクインした2アプリと、特に人気の高い他3アプリのユーザー年代割合、男女比を示しています。ネット利用者全体に対して20代・30代の若年層のユーザー割合が高く、男女比は概ね1:1です。
「GIFTOLE」、「アラクレ」、「TAITO ONLINE CRANE(タイクレ)」、「カプコンネットキャッチャー」、「クラウドキャッチャー」ユーザーの年代割合(Dockpit)
集計期間:2022年7月~2023年6月
デバイス:スマートフォン
「GIFTOLE」、「アラクレ」、「TAITO ONLINE CRANE(タイクレ)」、「カプコンネットキャッチャー」、「クラウドキャッチャー」ユーザーの男女比(Dockpit)
集計期間:2022年7月~2023年6月
デバイス:スマートフォン
■オンクレアプリは11位・23位にランクイン
2023年6月の急上昇アプリランキングTOP25には、以下2つのオンクレアプリがランクインしました。
どちらのアプリも、景品を週に1度無料配送してくれるのが特徴です。特に11位の「Giftole」では、景品がギフト特化になっており、コスメやスイーツ、洋服、家電製品といった通常のクレーンゲームにはない独自の景品ラインナップも強みとなっています。
景品の種類の多さや限定性、ログインボーナスのお得さなど、各社が競合との差別化を図りながら、市場を拡大させているようです。
■ニーズはどこに?
コロナ禍の外出自粛期間であっても非接触かつ自宅に居ながら遊べると人気になったオンラインクレーンゲーム。アフターコロナに以降しつつある現在ではどこにニーズがあるのか、ヴァリューズデータから考察しました。
(仮説)小規模ゲームセンターにはない独自の景品ラインナップ
下記の図は、5アプリユーザーの居住地割合を示しています。
ネット利用者全体と比べると、オンクレアプリユーザーの居住割合は、関東地方や近畿地方といった都市部では低いのに対して、地方では高くなっています。
「GIFTOLE」、「アラクレ」、「TAITO ONLINE CRANE(タイクレ)」、「カプコンネットキャッチャー」、「クラウドキャッチャー」ユーザーの居住地割合(Dockpit)
集計期間:2022年7月~2023年6月
デバイス:スマートフォン
クレーンゲーム専門店が存在する都市部に対して、ゲームセンター自体の規模が小さくクレーンゲームの取り揃えがあまり豊富でない地方では、より景品の種類が多いオンクレの利用ニーズが高まるのかもしれません。
20代から支持を集めるライブ配信アプリ
■ゆるコミュライブ配信アプリ「HAKUNA」
12位には、ゆるコミュライブ配信アプリ「HAKUNA」がランクインしました。
ライブ配信アプリとは、ライバーのリアルタイムの映像・音声をリスナーに配信するスマホアプリのことです。アプリさえあれば誰でもライバーになることができ、最近では、声のみ・アバター利用といった顔出しなしの配信スタイルも人気を高めています。
では、今回ランクインしたHAKUNAのユーザー特性を、人気のライブ配信アプリである「17LIVE(イチナナ)」「SHOWROOM」と比較・分析していきましょう。
下記のグラフは、3アプリの年代割合を示したものです。HAKUNAは他2アプリと比較して20代の年代割合が特に高くなっています。
「HAKUNA」「17LIVE」「SHOWROOM」のユーザー年代割合(Dockpit)
集計期間:2022年7月~2023年6月
デバイス:スマートフォン
■ライブ配信アプリユーザーの特徴は?
続いて、ライブ配信アプリユーザーの特徴を深掘りしてみましょう。
下記の図は、Web行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定の Web 行動の前後の動きと属性を集計できるヴァリューズの分析ツール「story bank(ストーリーバンク)」のデータを用い、3アプリのユーザーの興味関心を示したものです。
「アイドル」「動画共有サイト(YouTube、ニコニコ動画など)」「ゲーム」への興味関心が強い傾向がみられます。特に「アイドル」の特徴値は20.60ptと著しく高く、ライブ配信アプリユーザーはネットユーザー全体に対して推しの追っかけが好きな傾向があると考えられます。
以上から、「余暇時間には動画鑑賞やゲームを楽しみ、推し活にも力を入れる」という配信アプリユーザーの特徴がみえてきました。
「HAKUNA」「17LIVE」「SHOWROOM」ユーザーの興味関心(story bank、or条件)
集計期間:2022年7月~2023年6月
デバイス:スマートフォン
過去にマナミナでは、ライブ配信プラットフォームについて紹介しています。ぜひ合わせてご覧ください。
コロナ影響でエンタメへの「投げ銭」に注目? インスタやSHOWROOMなどライブ配信プラットフォームを調査 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン
https://manamina.valuesccg.com/articles/905新型コロナの影響でリアルライブイベントの開催が困難となり、この春~夏にかけて開催予定だったアーティストライブは軒並み中止に。野外音楽フェスティバル「FUJI ROCK FESTIVAL」も中止が発表され、ファンから落胆の声が広がっています。そんな中、ミュージシャンやアイドルの収益機会となり、ファンとアーティストを繋ぐ方法として、エンタメ界が新たな可能性を見出しているのが「投げ銭」サービス。今話題の「投げ銭」は、実際にユーザーからどれほど注目され、浸透しているのか?その実態を調査しました。
オリジナルの動画編集・グッズ作成も人気
■SNSにアップする動画の編集に!「Filmora」
21位には、無料で使える動画編集アプリ「Filmora」がランクインしました。
素材となる動画のカットや結合はもちろん、BGMやテキストを挿入したり、写真・動画を重ねたりといった動画編集の基本機能が全て備わっています。
下記の図は、Filmoraユーザーの年代割合を示しています。ネットユーザー全体に対して20代の割合が著しく高く、20代の動画編集アプリのニーズの強さがうかがえます。
「Filmora」ユーザーの年代割合(Dockpit)
集計期間:2022年7月~2023年6月
デバイス:スマートフォン
動画編集アプリは、このあと詳しく紹介する「推し紹介動画」の他にも、友人の誕生日や恋人との記念日に贈る動画を作成するのに最適です。プレゼント相手との思い出の写真・動画をエモい音楽にのせた動画を作成してSNSに公開することで、感謝や愛を伝えるのが人気となっています。
■自分だけのグッズが簡単につくれる!「snaps」
25位には、オリジナルグッズ作成アプリ「snaps」がランクインしました。snapsでは、手元にある画像を用いて、家族・友人・恋人へのプレゼント用フォトブックや、アクリルスタンド、アクリルキーホルダー、缶バッジなどの推し活アイテムを作成することができます。
snapsでつくったグッズのイメージ
snapsユーザーの性別割合をみると、男女比が1:9と圧倒的に女性が多いです。
女性の方が、「世界にひとつだけのプレゼントをしたい」「自分しか持っていないグッズで推しを応援したい」という想いを抱きやすいのかもしれません。
「Filmora」ユーザーの性別割合(Dockpit)
集計期間:2022年7月~2023年6月
デバイス:スマートフォン
■どんな推し活が人気?
アイドルやアニメキャラクターといった自分の好きなものを応援する活動「推し活」。
2023年夏時点で人気となっている推し活の方法をご紹介します。
推し活ができるカフェ・居酒屋
推しのメンバーカラーの飲み物や食べ物を、アクリルスタンドや缶バッジなどの推しグッズとともに写真におさめてInstagram等のSNSにアップすることがトレンドとなっています。
こういった需要から、カフェではクリームソーダ、居酒屋ではサワーというように、カラフルな「推し色ドリンク」を販売する飲食店も増加しています。
痛バ
上記画像のように、側面が透明になったバッグに推しの絵柄の缶バッジを並べた「痛バ(痛いバッグ)」も若い女性の間で人気です。同じ絵柄の缶バッジで痛バをつくるために、何個も缶バッジを買い求める人も多いようです。
推し紹介動画
推しのかっこいい・かわいい瞬間を切り取った写真や動画に、BGMや音声テキストをつけた「推し紹介動画」を、TikTokやInstagram等のSNSにアップする布教活動も人気です。
ランクインしたFilmoraの他に、「CapsCut」という動画編集アプリがよく利用されています。詳しくはこちらのマナミナ記事をご参照ください。
Z世代の検索ワードランキング!「推しの子」「名探偵コナン」がトレンドに(2023年4月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン
https://manamina.valuesccg.com/articles/2414#outline14Z世代のデータアナリストが、自らZ世代の行動データを分析する本連載。第6弾となる今回は、Z世代とミレニアル世代の検索キーワードランキングから、2023年4月に話題となったエンタメ作品とGWを2大テーマにしてお送りします。 ただ観るだけではないエンタメ作品の楽しみ方や、GWの過ごし方など、データとリアルな声を掛け合わせ、Z世代とミレニアル世代のニーズを読み解きます。
過去にマナミナでは、「推し活」について紹介しています。ぜひ合わせてご覧ください。
トレンドの「推し活」。ファン活動の実態と行動原理を探る |ホワイトペーパー | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン
https://manamina.valuesccg.com/articles/20552021年の流行語大賞にもノミネートされた「推し活」。急速に知名度を上げたこのワードの検索者数は、2020年9月から2022年8月までの2年間で10倍以上に急増しました。どういう人が、どういう媒体を利用して、どんなものを推しているのか?熱量が減少する要素とは?「推し活」の実態を徹底調査しました。(ページ数|34ページ)
まとめ
今回は、急上昇アプリTOP25のなかから、オンクレアプリ、ライブ配信アプリ、動画編集・グッズ作成アプリをピックアップして紹介しました。
ライブ配信アプリ、動画編集・グッズ作成アプリの人気の背景のひとつとして、「自分らしさを表現したい」という欲求が考えられます。
個性やアイデンティティを追い求めて自己を強く意識する若者世代だからこそ、ライブ配信や作成動画のSNS共有、オリジナルグッズの持ち歩きによって、「自分らしさ」を他者に提示しようとしているのかもしれません。
マナミナでは引き続き、Z世代のトレンドを調査し、評価の高いサービスの共通点を探ります。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
2024年春にヴァリューズに入社しました。大学では歴史学と社会学を専攻していました。