高まる「メンズ日傘」需要。トレンドを支えるのは若年層よりも中高年層?

高まる「メンズ日傘」需要。トレンドを支えるのは若年層よりも中高年層?

男性の美容意識の高まりを背景に、ドラックストアでは「メンズ〇〇」といったような、男性用の美容品がここ最近増えてきています。今回は2023年にヒット商品となった「メンズ日傘」に注目。なぜヒットしたのか、関心を持つ人の属性やニーズについて、検索データから分析します。


メンズ美容のトレンド

ここ数年で男性の美容意識はかなり高まりました。ドラックストアでは「メンズ〇〇」といったような男性用の美容品が増えています。日常生活でヘアケア用品や香水、お風呂上りに保湿液などを使っている人も多いのではないでしょうか?

そんなメンズ美容業界ですが、株式会社日経BPが運営する「日経クロストレンド」の2023年のヒット商品ベスト30にて、「メンズ日傘」が第14位にランクインしていました。

日傘といえば、主に女性が使うイメージがあったのですが、なぜ ”男性用” が去年のヒット商品に選ばれたのでしょうか。今回はそこを深堀していきます。

メンズ日傘とは

メンズ日傘とは言葉の通り、男性用日傘のことを指します。普通の日傘と何が違うの?ということですが、特に大きな違いはありません。

例えば、レイングッズ国内売上トップを誇る「ワールドパーティー」から販売されている傘の中に男性&男女兼用の日傘があります。

ワールドパーティーHPより引用

日傘=女性のためのものというのは今や昔。しかし、本当に男性用の日傘が今年人気だったのでしょうか。毎月更新される行動データを用いて、競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いて見てみると、確かに今年の夏に「メンズ日傘」と検索した人は去年よりも多くなっています。

「メンズ日傘」:検索者数月次推移
調査期間:2022年1月~2023年10月
デバイス:PC・スマートフォン

では、なぜ “今年” メンズ日傘が人気だったのでしょうか。

なぜメンズ日傘がヒットしたのか?

メンズ日傘が売れた背景として挙げられるのは、酷暑でしょう。2023年の夏の平均気温は1946年の統計開始以降、北日本と東日本で1位、西日本で1位タイとなる記録的な暑さとなりました。

日本気象協会より引用

メンズ日傘の関心層は?

ここからはどのような人がメンズ日傘に興味関心をもっているのか、詳しく調査していきます。

まずは「メンズ日傘」と、どんな言葉が一緒に検索されているかを見ていきましょう。

「メンズ日傘」:検索候補
調査期間:2022年1月~2023年10月
デバイス:PC・スマートフォン

見てみると、No.2に「無印」、No.6に「ワークマン」が入っています。
無印良品のHPなどを見てみると、日傘が売られていることが分かりました。

無印良品HPより引用

日傘を売っているところは他にもたくさんあります。しかし、なぜ「無印」「ワークマン」の二つが多くの人に検索されているのでしょうか。

無印良品やワークマンが販売する傘はどちらもシンプルなデザインになっています。そのため、落ち着いた服によく似合い、スーツで出勤する人にとってはありがたい特徴です。

さらに、掛け合わせて検索されたキーワードについても見てみましょう。

「メンズ日傘」:掛け合わせワード
調査期間:2022年1月~2023年10月
デバイス:PC・スマートフォン

先程と同様にNo.3に「無印」No.10「ワークマン」というワードが入っています。また、No.1「かっこいい」、No.2「折りたたみ」、No.5「軽量」などデザインや機能性を意識したワードもランクインしています。

機能性が高い日傘だと、心理的にも物理的にも持ち歩きやすくなりますよね。

以上のことから、「メンズ日傘」と検索する人は日傘にシンプルなデザインや機能性を求めているのではないかと考察でき、それらのニーズを満たした商品を販売しているのが無印良品やワークマンといったブランドだと考えられます。

最後に年齢層も見てみましょう。

「メンズ日傘」:検索者年齢層
調査期間:2022年1月~2023年10月
デバイス:PC・スマートフォン

若い世代よりも中高年世代の人の方が多くの割合を占めています。

このようなトレンド商品には若者の方が抵抗が少なく、興味関心が集中するのではと私は思ったのですが、なぜ中高年の方が高い結果になっているのでしょうか。

1つの要素として、年齢による体力の衰えがあるのではないでしょうか。特に今年の記録的な暑さをしのぐため、中高年層で日傘への関心が高まり、「メンズ日傘」の検索増にもつながったと考えられます。

まとめ

今回は「日経クロストレンド」発表の2023年ヒット商品ベスト30にも選ばれた「メンズ日傘」について調査してみました。分かったことは、

①「メンズ日傘」と検索する人は機能性とシンプルなデザインを求めている
②若年層よりも中高年層の方が検索者の割合が高い
➂その理由は今年の酷暑が関係している

でした。

酷暑や紫外線対策に有効な日傘の需要が高まってきているということは、他の美容領域、例えばベースメイクなどにも今後男性の関心が若い世代だけではなく、中高年世代でも高まっていくのではないでしょうか。

Z世代の私の意見としては、7月頃は大学のキャンパスで日傘を持っている男性をよく見かけたので、やはり同世代には受け入れられやすい印象があります。しかし、まだまだ日傘を持つのに抵抗がある人もいるようなので、今後の動きに注目です。

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この記事のライター

早稲田大学商学部1年生のハルです。愛知から上京してきて絶賛一人暮らし中。自炊にはまっています。現在マナミナにてインターン中。

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