ネット上の情報がQRコード利用のきっかけに
前回はキャッシュレス決済全体の利用意向、利用動向を概観し、2018年11月以来、PayPayは12.4倍、d払いは2.7倍、楽天ペイは2.5倍、Origamiは2.6倍にユーザーを増やしていることを確認しました。
「100億円あげちゃうキャンペーン」をトリガーに激化したキャッシュバック、ポイント還元合戦とそのプロモーションに、膨大な投資が続いていますが、ユーザーに刺さったのはどの施策だったのでしょうか。
QRコード決済利用経験者2,238人のアンケート回答でみると、利用時に最も影響力が大きかったのは、「公式サイト」が20.6%。次いで「インターネットのニュース記事やブログ」、「家族や友人からのクチコミ」、「インターネットの広告」、「テレビCM」がそれぞれ10%前後でした。
「インターネットの掲示板・クチコミ」「SNSサイトの書き込み」を入れると、おおよそ半数程度がインターネット上の情報を通じてQRコード決済を使い始めていて、テレビや店舗での告知はさほど影響力がなかったようです。自明といえば自明ですが、ネットユーザーほど親和性が高いといえます。
図表1 QRコード決済利用時に最も影響を受けたもの(単一回答)
利用意向が強いのはPayPay
アンケート回答者10,038人のうち、利用経験者が最も多かったQRコード決済は「PayPay」13.5%、「LINE Pay」9.3%、「楽天ペイ」9.2%の順。
PayPayは半数以上、LINE Payと楽天ペイは、d払い、Origami Payは40%程度が「現在最も利用」と日常的に使うユーザーを獲得しています。他方、メルペイは利用経験者2.5%に対し「現在最も利用」は0.2%で、リピート利用獲得には至っていない模様です。
図表2 利用したことがあるQRコード決済
(利用したことがあるは複数回答、最も利用しているは単一回答)
60代ユーザーが急増
前回ご紹介した通り、2018年11月から2019年6月の8ヶ月間で、PayPayは12.4倍、d払いは2.7倍に利用ユーザー数が急成長を遂げていますが、なかでもなかでも目を引くのは60代以上。
特にd払いの60代以上ユーザーは140万人と、40代193万人に次ぐコアユーザーに成長しています。一般に年齢が高いほど「スイッチングコストを嫌う」、ただし「一度便利と思ったら定着しやすい」といわれるので、この囲い込みは貴重かもしれません。
図表3 PayPayとd払いのユーザー数推移(年代別)
8ヶ月間の増加率は、PayPay、d払いいずれも女性が男性を上回りました。
図表4 PayPayとd払いのユーザー数推移(男女別)
QRコード決済サービスの満足度、72.0%は店舗数に不満
QRコード決済を実際使った人の満足度が最も高かった点は、「キャンペーン時のキャッシュバック/ポイント還元/割引」83.1%。不満をもった人は最少の9.0%で、誰もが満足な施策といえそうです。
同じおトクでも「通常時のキャッシュバック/ポイント還元/割引」は満足57.9%に対し不満29.7%と、満足度を分かつ要因にはなりづらいようです。
「総合的な満足度」、「支払いの早さ」、「支出管理のしやすさ」、「アプリの利用しやすさ」、「決済限度額」、「利用開始時の設定のしやすさ」も、満足が不満を50ポイント以上引き離す満足要因でした。
図表5 QRコード決済サービスの満足度
他方、不満が満足を36.3%上回った要素は、「利用可能な店舗数」。72%が不満と回答していて、満足は35.7%にとどまっています。
消費増税対策としてのキャッシュレス政策のバックアップを味方につけつつ、店舗開拓を進めることが、アーリーアダプター、アーリーマジョリティの満足度向上には不可欠といえそうです。
分析概要
全国のヴァリューズモニター(20歳以上男女)を対象として、2019年5月31日~6月5日に「キャッシュレス決済サービスに関するアンケート」調査を実施しました(回答者10,038人)。
また、全国のヴァリューズモニター(20歳以上男女)を対象として、主要決済アプリの行動ログを分析しました。
※アンケート調査は性年代別人口とネット利用率に合わせたウェイトバック集計を行っている。
※行動ログは、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用。
※アプリユーザー数は、Androidスマートフォンでのインストールおよび起動を集計し、ヴァリューズ保有モニター(20歳以上男女)での出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
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法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。
CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している。