企業研究は難しい!今回は「通信業界」の3大キャリアを分析
初めまして、小幡(おばた)です。私は大学でマーケティングを勉強しながら、データマーケティングの会社、ヴァリューズでインターンとして働いています。いまは大学4年生で、来年の春からはヴァリューズに入社する予定です。
就活のとき、困ったのが企業研究でした。行きたい業界を見つけたら、会社ホームページや就活サイトで情報収集をしたり、インターンに参加してみたり…。でも、紹介されているのは企業の良いところばかりで、本当のところはなかなか分かりません。
そこで今回、私が入社するヴァリューズの競合分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使って企業研究をしてみました。eMark+は消費者のインターネット上の行動を分析し、実際消費者がどんなサイトを閲覧しているのかを調べることができます。業界のあの大手企業は、本当に人気なのか?何に力を入れているのか?といった視点から、今までとは一味違った企業研究をしていきます。
初回は自動車業界を、そして前回は銀行業界を分析しました。口座開設という同じ目的であっても各社のターゲット層やその施策は全く異なることが分かりました。今回は、通信業界の分析として、大手3キャリアを分析します。業界研究の参考に活用いただければ幸いです。
銀行業界5社をマーケティング視点で企業研究!現役大学生のデータドリブン就活【第2回】
https://manamina.valuesccg.com/articles/707競合分析ツール「eMark+」を使って、就職活動に役立つコンテンツをお届けする企画。第2回は銀行業界の主要5社、三菱UFJ・三井住友・みずほ・ゆうちょ・りそなをWeb・アプリの集客状況から分析し、企業の強みや違いをまとめました。
自動車業界5社をマーケティング視点で企業研究!現役大学生のデータドリブン就活【第1回】
https://manamina.valuesccg.com/articles/636競合分析ツール「eMark+」を使って、就職活動に役立つコンテンツをお届けする企画を始めます。第1回は自動車業界の主要5社、トヨタ・ホンダ・日産・マツダ・スズキをWebサイトの集客状況から分析し、企業の強みや違いをまとめました。
通信業界とは?主に「固定通信」「移動通信」「ISP」を扱うサービス
通信業界は、大別すると「固定通信」「移動通信」「ISP」の3つに分けられます。
固定通信:固定電話、有線インターネット回線のような、決められた場所からの通信を提供します。
移動通信:携帯電話、スマートフォンやタブレットなど、無線で通話やインターネット接続を提供します。
ISP:インターネットサービスプロバイダの略で、インターネットに接続している通信拠点を運営し、個人や企業に対して接続サービスを提供します。
今回は「移動通信」を行う3大キャリア「ドコモ」「KDDI」「ソフトバンク」について研究します。
移動通信業界の歴史
日本国内では1985年に電気通信事業法が制定され、通信自由化が起こりました。このとき、日本電信電話(現NTT)が「ショルダーフォン」サービスを開始したところから移動通信の歴史が始まります。NTTはその後、1992年に「NTTドコモ」になります。
1987年に創設された「DDIセルラー」と「IDO」の2社が2000年に合併し、「au」になりました。その後、auには「ツーカー」も加わりました。
1991年設立の「デジタルホン」が1999年に「デジタルツーカー」と合併して「J-フォン」になりました。その後、幾度かの変遷があり、2015年に「ソフトバンク」になります。
通信業界の主な職種
営業、企画などの事務職のほか、技術職が多いのが通信業界の特色です。
■事務系総合職
ネットワーク設備の保守・運用のほか、システムの開発を通じて利用者に安定した通信環境を提供するのがおもな業務内容です。
そのほかにもビッグデータの解析、AIを駆使する「データサイエンティスト」という業務もあります。
■技術系総合職
企業や法人に出向く営業では、ルート営業のほかにも、IoTといった新たな技術と自社の端末や回線をセットにして売り込むケースもあります。
そして、企画は商品やサービスのキャンペーンや新規事業について考え、実行までの筋道を立てる業務にも携わります。
ドコモ・KDDI・ソフトバンク各社のシェアや戦略は?
まずは、携帯電話契約数を比較してみました。3社のシェアはどうなっているのでしょうか。
一般社団法人 電気通信事業者協会発表の事業者別契約数(2019年度)より集計しグラフ作成
■シェアNo.1の通信事業を基盤にdポイント会員数も7000万に達する「NTTドコモ」
携帯電話契約数シェアNo.1のNTTドコモ(以降、「ドコモ」と表記)です。は、dポイントクラブを基盤として通信サービスに限らず様々な事業を展開していることが特徴です。なかでも7000万人を超えるdポイントクラブ会員数は、共通ポイントにおいて日本有数の会員規模を誇ります。
また、高品質なネットワーク開発への取り組みを評価する5G標準化規格特許候補保有率では、携帯電話事業者の中で世界トップとなり、研究開発力にも強みを持ちます。(参考:NTTドコモの事業展開について ~更なる成長に向けた“変革”の実行~)
■通信とライフデザインの融合を推進するKDDI
シェア第2位はKDDI株式会社のauです。「通信とライフデザインの融合」をキーワードに、エネルギーや金融・決済事業など、通信に限らず生活に関わる幅広いサービス展開に力を入れています。
2018年5月には、日本初となる通信料金とNetflixコンテンツ利用料金をセットにしたプランを開始するなど、自社だけでなくパートナー企業との協業にも取り組んでいます。(参考:【業界研究:通信】「NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI」大手キャリア3社の業績、社風を徹底比較!,通信とライフデザインの融合)
■「ソフトバンク」は投資戦略に強み
シェア第3位は、1302社の子会社を持つ巨大グループ、ソフトバンク株式会社です。通信事業では、Softbankの他に格安スマートフォン市場で急成長をしているY!mobile、LINE MOBILEも提供し、ターゲット層に合わせて商品提供を行うマルチブランド戦略が特徴です。
企業全体でみると、成長戦略として掲げる「AI群戦略」の中核を担うソフトバンクビジョンファンドにより、営業利益は前年比400%強を記録するなど、急成長を遂げています。(参考:アニュアルレポート2019)
大手3キャリアのサイト訪問者数は?
次にeMark+で、2020年1月の各企業のサイト訪問者数ランキングを見てみました。カテゴリ「通信・ネット」を指定すると次のような画面になります。
1位~15位をピックアップしてみると、以下のようになりました。
デバイス:PC&スマートフォン
対象期間:2020年1月
上位3位を大手3キャリアが占める形になりました。シェア率の順位とサイト訪問者数の順位は一致しています。前年同月比を見ると、auだけが、ユーザー数を伸ばしていることが分かります。また、対して、格安SIMの「Y!mobile」「楽天モバイル」が大幅にユーザー数を伸ばしています。
次に、各サイトの料金紹介ページに訪問したユーザー数を比較しました。
各サイトの料金プランページ訪問者数を比較
ドコモ:www.nttdocomo.co.jp/charge/
au:www.au.com/mobile/charge/
ソフトバンク:www.softbank.jp/mobile/price_plan/
対象期間:2019年2月~2020年1月
デバイス:PC&スマートフォン
各社売上に山はあるものの、年間を通して順位の変動はありませんでした。ドコモは2019年4月に「ギガホ・ギガライト」の新プランをリリースした影響で、大幅な伸びを記録しています。このように、必需品である携帯電話は、新プランリリース時に大規模なプロモーションを行い、買い替えを促す戦略が一般的といえるでしょう。
利用ユーザーの特徴をアプリで探る
今度は各キャリア利用者の特徴を探ります。eMark+の機能「TargetFocus」を使って、利用ユーザーが特徴的に使っているアプリを調べました。分析対象アプリは、3社が提供しているアプリのうち最もユーザー数の多いものとしています。
ドコモは「dポイントクラブ」を対象としました。
「dポイントクラブ」アプリ利用者が利用したアプリのユーザー数ランキング
対象期間:2020年1月
デバイス:スマートフォン
「リーチ差」…モニター全体と比べた時のサイト閲覧率の差を示す。値が大きいほど全体と比較して特徴的に閲覧しているといえる。
ドコモ利用者は、キャッシュレス決済の「d払い」や、マクドナルドなどファーストフードのアプリのランクインが特徴的です。マクドナルドは、dポイントで還元をするようなキャンペーンを定期的に行っており、アプリダウンロードを促す要因になっているといえます。
auは、映像や音楽、書籍の使い放題サービスやライブチケットの先行予約ができる「auスマートパス」アプリを対象にしました。
「auスマートパス」アプリ利用者が利用したアプリのユーザー数ランキング
対象期間:2020年1月
デバイス:スマートフォン
「リーチ差」…モニター全体と比べた時のサイト閲覧率の差を示す。値が大きいほど全体と比較して特徴的に閲覧しているといえる。
au利用者は、自社が提供するアプリのランクインが目立ちます。オンライン決済の「au PAY」やニュースメディアの「ニュースパス」、音楽配信の「うたパス」など、提供中のアプリが既存ユーザーの生活に根付いている証拠といえるでしょう。また、KDDIと三菱UFJ[銀行が共同出資し設立したauじぶん銀行もランクインしています。
ソフトバンクは、請求料金の確認や利用データ量の確認ができる「My SoftBankプラス」を対象にしました。
「My SoftBankプラス」アプリ利用者が利用したアプリのユーザー数ランキング
対象期間:2020年1月
デバイス:スマートフォン
「リーチ差」…モニター全体と比べた時のサイト閲覧率の差を示す。値が大きいほど全体と比較して特徴的に閲覧しているといえる。
「My Softbankプラス」の利用者はPayPayの利用が目立ちました。ソフトバンク利用者限定で、支払金額の最大20%が戻ってくるキャンペーンを実施しており、キャンペーンをきっかけにPayPayを利用するようになったユーザーが多いと予想できます。また、ヤフー系アプリのランクインが目立ち、他2社とは毛色の異なるランキングとなりました。
通信業界の現状と今後の課題
携帯電話の普及率は100%を超えており、売上高も横ばい傾向が続いています。さらに、格安SIM提供事業者も増えていて、今後一層、競争の激化が予想されます。
しかし、新通信規格・5Gやそれを利用したIoTといったサービスの普及により、データ通信量は今後も増えるとされています。そこで新たなビジネスモデルの構築によっては、今後の展開はそれほど深刻なものになるものではない、と言えそうです。
まとめ
企業分析を通して分かった各社の特徴をまとめます。
ドコモ
契約数シェア・料金ページの訪問者数ともにトップを獲得。パートナー企業と連携したサービス提供がユーザーの心を掴んでいる。
au
3社で唯一料金ページ訪問者数が増加。自社提供アプリが幅広く既存ユーザーに利用されている。
ソフトバンク
グループ企業との提携によりキャンペーン内容を差別化。結果として既存ユーザーの使用理由になっている。
今回は通信業界をテーマに大手3社の企業研究を行いました。携帯電話を1人1台保有することが当たり前になった現代では、通信以外の事業領域で他社と差別化を図っているといえます。また、プロモーション内容だけではなく既存利用者の特徴を探ることで、3社の違いをより深く理解することができました。
今回使用したツール「eMark+」は、私が入社する株式会社ヴァリューズの分析ツールです。調べたいサイトやアプリは任意に指定できるため、気になる業界の動向を簡単にチェックできます。
eMark+には無料で利用できる機能もありますので、ぜひ登録して実際に体験してみてはいかがでしょうか。
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大学でマーケティングを勉強しながら、ヴァリューズでインターンとして働いていました。2020年の春からは新卒としてヴァリューズに入社しました。