ファストファッション市場の5ブランドを調査。ユニクロやZARAの戦略とデジタルユーザー数を探る

ファストファッション市場の5ブランドを調査。ユニクロやZARAの戦略とデジタルユーザー数を探る

2019年10月をもってフォーエバー21が日本市場から撤退しました。ファストファッション企業がECの成長著しいアパレル市場を生き残るには何をすべきなのでしょうか。5つのファストファッションブランドのウェブサイトとアプリを比較し、eMark+を用いてユーザー数の動向、ユーザー数獲得の施策などを分析してみます。


生き残りをかけるファストファッション業界

日本でも一世を風靡したファストファッションブランド、「フォーエバー21」が2019年10月末日をもって日本市場を撤退しました。知名度は高く、人気ブランドの印象が強かったために大きなニュースとなりました。

こういった状況下で、ファストファッションブランドの生き残り戦略に注目が集まっています。

当記事では、日本でビジネスを展開している5つの主要ファストファッションブランド「ユニクロ」「GAP」「しまむら」「ZARA」「フォーエバー21」に焦点を当て、それぞれのブランドのWebサイト・アプリの利用状況を調査しました。UU数やMAU数、またブランドごとの施策を比較し、各ブランドの生存戦略の特徴をつかんでいきます。

調査対象の5ブランドのサイト・アプリを紹介

本題に入る前にそもそも、ファストファッションとはいったい何なのでしょうか。まず「ファストファッション」という言葉ですが、これはマクドナルドなどの「ファストフード」をもじった呼称です。流行のアイテムを迅速に取り揃え販売し、肩ひじ張らない雰囲気のお店で気軽に、安く販売する。その「早い、気軽、安い」といった点の相似に注目した命名です。

ファストファッションは、日本では2010年前後から本格的にブームが始まりました。近年はECを活用する方向で時代のニーズに対応していく向きが見られますが、メルカリなどのオンラインマーケットプレイスの流行、環境問題への関心の高まりなどから、消費者は安価なものを大量に購入することに疑問を持ち始めています。ファストファッション業界はこうした状況を踏まえた対応を要請されているのです。

それでは、今回調査する5ブランドの対象サイト・アプリを紹介していきます。

1:ユニクロ

1つ目のブランドはユニクロです。2019年11月現在日本国内での売り上げトップのファッションブランドであり、古くはフリース、近年はヒートテックやウルトラライトダウンなどのヒットにより知名度は抜群でしょう。実店舗数も全国的に多く、街で目にする機会も数多あるのではないでしょうか。

ユニクロを擁するファーストリテイリングは、ファストファッションブランド売り上げ世界3位ですが、ユニクロに関しては上位2位の「インディテックス」(主要ブランドはZARA)、H&Mとは少し異なる企業戦略をとっていると言われています。

インディテックス、H&Mが、春季と秋季のファッションショーからトレンドを仕入れ、それをいかに迅速に店舗に届けるか、ということに力を注いでいるのに対し、ユニクロは既に安定しているトレンド、売れ行きが確実な商品を大量生産することで利益を上げています。

またインディテックス、H&Mはスピード重視なため高価な空輸を多用し、売れ行きがやや不透明な商品も生産します。するとリスクが高いので、大量生産も控える傾向にあり、量の経済が働きにくい構造になっています。

ユニクロはその逆で、一刻も速く店舗に届けなければいけない性質を持った商品ではないため、海運など安価な輸送手段を取ることができます。そうして浮いたコストを縫製や生地などの商品の質に予算を投入し、消費者が持つ「信頼感のある服が買える」という印象につなげています。

ユニクロのスマホアプリ

今回デジタルユーザー数を調査するにあたり、Webサイトに加えてアプリも対象としました。ユニクロアプリは非常に明快で使いやすいUIになっています。その基本的な機能は
・おすすめ、セール商品の確認
・会員証の提示
・オンラインショッピング
・店舗検索
などです。また、LINEのようなチャット形式で商品のおすすめを提案してもらえるサービス「IQ」が特徴的でした。

2:GAP

GAPはアメリカ発、1969年創業の老舗ファストファッションブランドです。「SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)」、すなわちアパレル製造小売と呼ばれる業態を最初に作り上げた企業です。この業態は今では先述のユニクロをはじめとする多くの企業で採用されています。世界での売り上げはファーストリテイリングに次いで第4位となっています。

しかし近年は業績が芳しくなく、2019年2月末には今後2年間で約230店舗を閉鎖すると発表しました。(参考:『米「ギャップ」が230店閉店 「オールドネイビー」は独立企業に』)

GAPのスマホアプリ

GAPの公式アプリももユニクロと同様、明快なUIを備えています。主な機能はユニクロのアプリと同じく
・おすすめ、セール商品の確認
・会員証の提示(ポイント、キャンペーンあり)
・オンラインショッピング
・店舗検索
などです。

3:しまむら

「しまむら」は先にご紹介した2つのブランドとは業態が少し異なります。ユニクロ、GAPがSPA(アパレル製造小売)であるのに対し、しまむらは小売をメインとしています。つまり自社生産の商品と同時に、他社の製品を多く扱っているのが特徴です。しまむらの強みは徹底したローコストオペレーションで、他ファストファッションブランドと比べても極めて安価な価格設定をしています。

しまむらのスマホアプリ

しまむらのスマホアプリは「しまむら」と「しまコレ」の2つがあります。このうち「しまコレ」は2019年1月にリリースされた、店舗商品の取り置きができるアプリ。一方「しまむら」の方はセール情報を得られるアプリで、今回はこちらを調査対象としました。

しまむらでは他ブランドと違い、2019年11月現在では自社ECサイトを保有していません。しかし2020年2月までにECサイトを整備すると発表しているため、スマホアプリもそれに合わせて改装されるのではないでしょうか。

現状の主な機能は、
・店舗検索
・ウェブチラシの閲覧
などです。

4:ZARA

4つ目にご紹介する「ZARA」は、スペインのインディテックスという会社の所有するSPAのブランドです。インディテックスはファストファッション業界で世界最大の売り上げを誇る企業でもあります。

ZARAはユニクロの紹介の中でも言及した通り、スピードを重視した王道のファストファッションブランドです。H&Mと比べてもその迅速さは出色でしょう。H&Mが賃金の安い生産地で商品を作り、そこから消費地に長距離輸送を行うのに対し、ZARAはコストをかけてでも消費地の近くや、本社のあるスペインおよび近隣国での生産にこだわっています。すばやく店舗に出荷し、売れた商品を増産するサイクルを回すことで成功を収めています。

ZARAのスマホアプリ

ブランドイメージ通り、ファストファッションながらホーム画面は非常にスタイリッシュです。Instagramのようなアイコン配置にもSNS世代のユーザーへの配慮が感じられます。

洋服のジャンルだけでなく、「My best knit」や「Ready for winter」などユニークなテーマ性のある特集で商品を紹介しているのもほかのアプリにはない特徴でした。その主な機能はオンラインショッピングとなっています。

5:フォーエバー21

フォーエバー21は、どちらかといえばしまむらに近い相手先ブランド製造(OEM)のビジネスモデルを採っています。しまむらとの違いは、その商品のほとんどがオリジナルデザインであること。しかし、デザインから生産まで発注先の企業に委託している点が、ユニクロやZARAなどのSPAとの違いです。

その安価さとデザイン性、また優れた立地に大量出店したことで人気を博しましたが、業績不振により2019年10月31日をもって日本市場から完全撤退しました(2019年11月現在でも米国のECサイトで注文することで日本に配送してもらうことはできます)。

フォーエバー21のスマホアプリ

2019年11月現在、日本版のフォーエバー21のスマホアプリは存在していません。今回の調査に当たっては、2019年10月まで存在していたフォーエバー21のスマホアプリを対象としました。

5ブランドのユーザー数推移は?

それでは、競合サイト調査ツール「eMark+(イーマークプラス)」を用いて2017年10月から2019年9月までの各ブランドウェブサイトのユーザー数の推移を見てみましょう。

まず簡単にツールの説明をします。eMark+はブラウザ上で操作できるツールで、URLを打ち込むことで知りたいサイトの訪問ユーザー数・デモグラ属性が無料で確認できます。また有料版ではサイトの流入元や検索キーワード、サイト内コンテンツのPV数ランキングなども調べることができます。

今回はWeb上で確認したデータをダウンロードし、グラフにしてお伝えします。まず5ブランドの過去2年のユーザー数推移をまとめた次の図をご覧ください。

ユニクロ、GAP、しまむら、ZARA、フォーエバー21のサイト&アプリのユーザー数を比較すると、ユニクロのユーザー数が桁違いに多いことが分かりました。ユニクロが月間1,400万人〜2,000万人のユーザーを集客しているのに対し、他4社はその10分の1以下の月間ユーザー数となっています。月間訪問者数ではユニクロが他社を突き放して圧倒的1位だと言えるでしょう。

では2位以下の状況を確認するため、ユニクロを対象から除いてグラフを作成してみます。

このグラフから、2番目にユーザー数が多いのはGAP、3位と4位は接戦でしまむらとZARA、そしてフォーエバー21は2年前から常に他ブランドと比較してユーザー数が少ないことが見て取れます。

規模としてはGAPが月間200万人ほど、一方でフォーエバー21は30万人前後を推移していたことが分かりました。フォーエバー21はデジタルユーザー数で他社に差を開けられており、並みいる競合に苦戦していたのではないでしょうか。

2位GAPの集客施策を探る

ネットプレイヤーの台頭が既存ファストファッションブランドの衰退を招くと言われる中、各ブランドそれぞれウェブサイト、アプリ開発にも力を入れている様子がうかがえました。

今回のeMark+を用いて分析した5ブランドの中で、ユニクロに次いでUU数を集めていたのはGAPです。GAPは近年伸び悩んでいると言われていますが、どのような集客施策を行っているのでしょうか。eMark+でコンテンツランキングを見てみました。

GAPのUU数獲得施策

GAPのコンテンツランキング(デバイス:スマートフォン、対象期間は2019年5月〜10月)

GAPのコンテンツランキングを見てみると、4位にはメンバー特典のページ(i.gap.co.jp/pc/index.php)がランクインしていました。

その他にもブラックフライデーの50%オフセールや、季節のセールなどディスカウント情報を発信するページもランクインしていました。

GAPのウェブサイトでは、オンラインストアなどネット活用にかかわるメンバー登録すると、「いつでも5%OFF」「バースデー割引」などの特典が得られるようになっています。UU数の獲得に貢献している施策のひとつなのではないでしょうか。

まとめ

国内のファストファッション市場ではユニクロがデジタルユーザー数で圧倒的1位であることが分かりました。その差は他社と比べて10倍以上で、市場への浸透具合が読み取れます。また、チャット形式でコーディネートの提案などを受けられるユニクロアプリの機能「IQ」など、テクノロジーを積極的に活用している姿勢も印象的でした。

ユーザー数2位のGAPでは、UU数獲得にディスカウント施策が効いていた可能性が示唆されました。クーポンによるインセンティブが効果を発揮するのは魅力的な商品がベースにあるからこそですが、集客のために活用するのは重要と言えるでしょう。

今回のサイトUU数のデータ等をぜひ業務にご活用ください。本記事ではeMark+を用いて調査を行いましたが、eMark+の機能がパワーアップした新ツール「Dockpit(ドックピット)」が2020年10月にリリースされました。本記事では示さなかった各サイトの性別・年齢・年収別といったデモグラ属性も、Dockpitに登録すれば無料で確認することができます。まだ登録されていない方は、この機会にぜひ確かめてみてはいかがでしょうか。



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調査概要

全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用し、ファストファッション企業の「ユニクロ」「GAP」「しまむら」「ZARA」「フォーエバー21」のユーザー数を調査、各サービスのポジショニングをメインにそれぞれの特徴を分析しました。

※対象期間:2017年10月~2019年9月
※ユーザー数:該当サイトを訪れたUnique User数
※ユーザー数やセッション数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。

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この記事のライター

ウィーン大学への留学を経て京都大学文学部卒業。
外資系大手ITコンサルティング会社に勤務後、フリーランスライターに転向。

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