ブランド浸透度調査の上手な設計方法とは?定点観測にとどまらない課題発見→解決が重要

ブランド浸透度調査の上手な設計方法とは?定点観測にとどまらない課題発見→解決が重要

ブランド浸透度調査は、自社の商品・サービスのブランドが市場内でどの程度浸透しているかを確認するためのものです。調査を通して特に「自社商品・サービスの課題」「ロイヤル層(ファン層)のペルソナ」を分析することができます。ブランド浸透度調査は自社のマーケティング活動のなかでどのようなメリットがあり、どのように行われるのでしょうか。今回はブランド浸透度調査について、具体例を交えて詳しくご紹介します。


ブランド浸透度調査とは何か

まずブランド浸透度調査とは名前の通り、自社商品・サービスのブランドが市場内でどの程度浸透しているか確認するための調査です。現状で注力すべき課題を明らかにすることで、施策の策定に役立てることができます。設問としては、たとえば「消費者はブランドにどんなイメージを抱いているのか」「好意度はどれくらいか」「今後も買いたいと思っているのか」といった問いが挙げられます。

調査対象となるテーマは、主に「自社商品・サービスの課題」「ロイヤル層(ファン層)のペルソナ」の2つです。

ブランド浸透度調査で対象となる主な2つのテーマ

ブランド浸透度調査で対象となる主な2つのテーマ

市場環境の変化スピードが速まり、消費者ニーズ、商品・サービスが多様化する昨今においては、マーケティング戦略の基盤となるブランド浸透度調査を定期的に実施することで、より強力にマーケティングを推し進めることができます。

ブランド浸透度調査の注意点とは?施策に結びつけるのが重要

ブランド浸透度調査を上手に設計することで、効果的なマーケティング施策の策定・実行に役立ちます。ただし、せっかくブランド浸透度調査を行っていても、その後の分析で各スコア等の確認だけに留まっていたり、そもそもデータ収集・管理・可視化の仕組みや人材が不足していたりする場合は、結果を課題の解決にまで活かすことが難しくなります。そうすると非常にもったいないだけでなく、経営陣などから調査の意味自体を問われてしまうことにもなりがちです。

そこでブランド浸透度調査を行う上では、現状把握・課題発見だけでなく、その後の具体的な施策に結びつけることが重要です。

例えば、ブランド浸透度調査を行ってファネルを分析した結果「購入経験者は少ないものの、認知はある程度とれていてリピート率も高い」という状況が把握できたとしましょう(次の図を参照)。結果として、集客やコミュニケーションに課題があると整理できたため、施策の改善が必要です。

ヴァリューズのブランド浸透度調査におけるファネル分析の例。データを基にフェーズごとの課題点を把握する

ブランド浸透度調査によって集客やコミュニケーションに課題があると分かったら、次に具体的な施策を策定し、実行していくべきです。しかし、ファネルの構造が分かったとしても「じゃあ何をすればいいのか?」が明確になっていなければ、次に進むべき方向が分からず、結局またしても調査の意味がなくなってしまうでしょう。

そこでヴァリューズのブランド浸透度調査では、Web行動ログを用いたユーザー調査やその他の個別調査を行い、課題をさらに深掘る調査手法を提案・実施しています。アンケート調査に加えて、対象者の検索ワードや検索後の閲覧ページを分析することで、ユーザーの情報収集の実態や検討プロセスを可視化することができます。以降はその事例をお伝えします。

20代向け下着メーカーや大手消費財メーカーの事例

Web行動ログを用いたブランド浸透度調査の事例をもとに、調査内容を施策に落とし込むまでの流れをご紹介します。まず、一般的なブランド浸透度調査のアンケート項目をまとめたものが下表です。

一般的なブランド浸透度調査のアンケート項目

一般的なブランド浸透度調査のアンケート項目

上図のようにカテゴリの重視点や頻度、利用状況等をアスキングします。これによりファネルの構造を把握してから、購入理由や普段の情報収集媒体といった具体的な施策に大きく関わる項目について調査します。

では次に実際の事例について解説します。ある20代女性向けの下着メーカーの事例では、自社ECサイトにおいて昨年度を大きく上回る売上目標を達成するため、注力すべき施策の洗い出しを目的にブランド浸透度調査を行いました。

売上目標達成には認知獲得段階の集客の優先順位が高いことが判明しました。そこでヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」等を使い、化粧品メーカーのサイトなど、他業界の若い女性をターゲットとしているサイトの集客構造・施策を調査し、自社の集客施策の改善を行いました。

Web行動ログ分析ツールを使った業界・他社の集客分析については、下記記事でも扱っておりますのでぜひご覧ください。

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次に、大手消費財メーカーでの事例です。このメーカーでは、既に展開しているブランド・商品を特定の悩みを抱えるニッチな層に効果的に訴求するためにブランド浸透度調査を行いました。ターゲット層を調査するにあたって、まず潜在顧客自身が悩みをどのように解釈しているのか、Web行動ログ分析ツールを使って検索キーワードのリサーチを行いました。

検索キーワードは「トランザクショナルクエリ(=取引に関連するワード)」と、「インフォメーショナルクエリ(=言葉の意味や問題の解決方法に関するワード)の2つに分類します。そして、インフォメーショナルクエリを叩いたあとの流入先コンテンツから、潜在顧客の当該ワードに関する解釈を把握しました。

それをもとに、ブランドとして顧客の現状の文脈に乗る(該当メディアでタイアップをする等)のか、新しい解釈の文脈づくり(自社オウンドメディアでの発信)をしていくのかを判断し、マーケティング戦略の策定を行いました。

検索キーワード/流入先コンテンツを用いたユーザー像の調査については、下記記事でも扱っておりますのでぜひご覧ください。

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ブランド浸透度調査のまとめ

ここまで、ブランド浸透度調査の目的やメリット、事例についてまとめました。ブランド浸透度調査とは、自社商品・サービスなどのブランドが市場内でどの程度浸透しているか確認するために、「自社商品・サービスの課題」、「ロイヤル層(ファン層)のペルソナ」の2つを把握する調査でした。

ヴァリューズのブランド浸透度調査では、従来のアンケート調査にWeb行動ログ分析をかけあわせることで、より深くそれぞれのファネルの状況やニーズを理解することができ、具体的な施策の策定に役立ちます。

特に、市場環境の変化スピードが速まり、消費者ニーズ、商品・サービスが多様化する昨今においては、マーケティング戦略の基盤となるブランド浸透度調査を定期的に実施することで、より強力にマーケティングを推し進めることができるのです。

この記事を通してブランド浸透度調査に関する理解は深まったでしょうか。ヴァリューズのアンケート×Web行動ログデータ調査に興味を持たれた方はぜひお気軽にご相談ください。また、ブランド浸透度調査以外のマーケティング・リサーチについてもヴァリューズでは幅広く行っています。少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

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この記事のライター

2022年の春から、新卒としてヴァリューズに入社。

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