自身の気に入った写真や画像をピンボード調の専用画面に固定し、フォロワーとシェアできるPinterest(ピンタレスト)。「ビジュアルディスカバリーエンジン」と位置づけ年々利用者を増やしており、2020年末には日本国内の月間利用ユーザーが昨年比で1.6倍まで増加したとも報じられています。(参考:CNET Japan『コロナ禍に「Pinterest」が急成長した理由』)
今回は、そんな急成長を遂げるピンタレストを調査。過去2年におけるユーザー数推移や、ユーザーの性年代別、個人年収別の割合をWeb行動ログデータを用いて分析します。また、ピンタレストユーザーが興味を持つトピックや、よく利用するアプリなどから利用者のインサイトを探りました。ピンタレストには媒体資料はありませんが、日本国内でも2022 年前半に広告プログラムを開始すると言われています。今回のデータを今後の広告出稿等の参考にしていただければ幸いです。
ピンタレストのユーザー数と属性は?
はじめに、ピンタレストを利用するユーザーの属性を俯瞰していきましょう。ヴァリューズのWeb行動ログデータを用いて、ピンタレストのスマホアプリを利用しているユーザーのデータを抽出していきます。はじめに、ピンタレストのユーザー数の推移をグラフに表しました。
ピンタレストのアプリユーザー数の推移
(集計期間:2019年12月〜2021年11月、デバイス: スマートフォン)
2020年の初頭に月間200万人程度だったユーザー数は、同年夏ごろまでに約270万人まで成長しています。その後、増加は緩やかになりますが、2021年6月には直近2年の最高値である約280万UUまで上昇しています。ピンタレストの公式が報じているように、コロナ禍の外出自粛の影響で利用ユーザーが大きく拡大したことは間違いなさそうです。
続いて、ユーザー属性についても分析していきます。まずはピンタレストのスマホアプリを利用しているユーザーの男女比から調べていきます。
ピンタレストのアプリユーザーの性別割合
(集計期間:2019年12月〜2021年11月、デバイス: スマートフォン)
ピンタレストユーザーの性別割合のデータを抽出すると、男性が33.3%に対して女性が66.7%となり、女性ユーザーの利用割合が大きいことがわかります。
次に利用ユーザーの年代のデータも見ていきます。
ピンタレストのアプリユーザーの年代別割合
(集計期間:2019年12月〜2021年11月、デバイス: スマートフォン)
年代別では、20代と40代の利用者がともに24%で最も多い結果となっています。ピンタレストが若い世代だけに利用が多いわけでないことが見て取れます。
最後に、「個人年収」のデータも抽出してみます。
ピンタレストのアプリユーザーの個人年収別割合
(集計期間:2019年12月〜2021年11月、デバイス: スマートフォン)
※無回答者と「わからない」と答えた人を除く
個人年収では、「200万円未満」が27.3%で最も多いという結果に。次いで「200~300万円未満」の14.9%、「300~400万円未満」の10.9%…となっており、個人で見た場合にはリッチなユーザーが多いわけではなさそうです。
ピンタレストのユーザー像を深堀り
以降はさらにヴァリューズのWeb行動ログデータやアンケート調査結果を用いて、ピンタレスト利用ユーザーがどのような人なのか、趣味・嗜好を分析していきます。
■料理やファッションに興味あり、一方でマネーや投資にも関心
まずは、ピンタレストのユーザーの興味関心マップから見ていきましょう。
ピンタレストユーザーの興味関心マップ
集計期間:2020年12月〜2021年11月、n=2,000人、デバイス:スマートフォン
Pinterestのサイト訪問(https://www.pinterest.jp/)
またはアプリ利用の前後180分の行動ログ、アンケート調査結果を分析
※モニターは全国の20代以上男女
上記の縦軸「リーチ率」と横軸「特徴値」は、以下の定義に基づいて算出されています。
リーチ率 | 対象者のうちアンケートで当該項目に回答した人数の比率 |
特徴値 | 対象者が一般的なネット利用者と比べて特徴的に利用するサイトや起動するアプリ、 検索するワード、興味関心のあるジャンル等を可視化するための指標 (対象者のリーチ率)ー(ネット人口全体のリーチ率)で計算 |
縦軸は「リーチ率」で、数値が高いほど興味・関心を持っているユーザー数が多いジャンルです。また、横軸は「特徴値」で、一般的なネットユーザーと比べて顕著に差があるジャンルほど高くなる数値です。両数値を合わせて考えると、グラフ右上に位置するジャンルほど、ピンタレストのユーザーが特有に興味・関心を持つジャンルになります。
実際に図の右上の項目を見てみると、赤枠の「ファッション」や「料理」「ショッピング」といった分野や、「インテリア」「コスメ」「ヘアケア」といったジャンルは、ピンタレストユーザーが突出して好んでいる様子が窺えます。
ピンタレストユーザーの女性割合が大きかったことと併せて考えると、自身の撮った写真をシェアする、もしくは他人の写真を見て日々の情報収集に活用している女性ユーザー像が浮かびます。「ファッション」「料理」「インテリア」…といったほとんどの分野が、日々の生活において視覚的な情報収集へのウエイトが大きいため、積極的にこういったジャンルへの活用がされていそうです。
また、少し意外だったのが青枠の「マネー、投資」の分野です。実際にピンタレストで「投資」と検索してみると、多くの投資関連の画像が結果に表示されます。
これらの写真をクリックすると、他メディアの投資関連の記事ページや、書籍の購入、金融サービスへの導線となっていることが多かったです。
ピンタレストの利用ユーザーが増えてきたことと、視覚的にフックが作れるというメディア特性があることから、こうした金融分野の情報への窓口としても活用されているようです。個人的な予想ですが、今後は金融に関するものだけでなく、さらに多様なジャンルでピンタレストを使って情報収集や整理をするユーザーが広まっていきそうだと感じます。
■ピンタレストのユーザーはTwitterよりもInstagram派?
続いて、ピンタレストの利用者がTwitterやInstagramをどれくらい併用しているか、というデータを見てみます。
ピンタレストユーザーのTwitter、Instagram利用時間
※「対象者」はピンタレスト利用者を指す
集計期間:2020年12月〜2021年11月、n=2,000人、デバイス:スマートフォン
Pinterestのサイト訪問(https://www.pinterest.jp/)
またはアプリ利用の前後180分の行動ログ、アンケート調査結果を分析
※モニターは全国の20代以上男女
ピンタレストユーザーは、Instagramを1日あたり何らか利用するユーザー割合は5割を超えており、一般的なネット利用者全体やTwitterユーザーよりも高いことがわかります。Instagramは「画像のシェア」というサービス特性がピンタレストとかなり近しいため、ピンタレストユーザーとの親和性が高いアプリと考えられます。
■ピンタレストユーザーが好んで使うアプリランキング
最後に、インスタグラムのユーザーが使っているアプリを、特徴値でランキング化したものを見ていきます。まずは上位10アプリからです。
ピンタレストユーザー利用アプリの特徴値ランキングTop10
集計期間:2020年12月〜2021年11月、n=2,000人、デバイス:スマートフォン
Pinterestのサイト訪問(https://www.pinterest.jp/)
またはアプリ利用の前後180分の行動ログから分析
※モニターは全国の20代以上男女
上位を見ると、前項でも登場したInstagramが2位と最高位にランクインしています。また、3位~5位はメルカリ、楽天、Amazonと大手のショッピング関連のアプリが並んでおり、ネットでの買い物に積極的な利用者像が見えてきます。
また、7位の無印良品は、実際にピンタレストで検索してみると、インテリアのアイデア投稿が多い様子が見て取れます。
上図のように、ピンタレストのユーザー間で無印のインテリア商品を用いた情報交換が盛んであるようです。興味関心ジャンルの調査で「インテリア」の特徴値が大きかったことも思い出されます。
つづいて、11位から20位までのランキングも見ていきましょう。
ピンタレストユーザー利用アプリの特徴値ランキング11位〜20位
集計期間:2020年12月〜2021年11月、n=2,000人、デバイス:スマートフォン
Pinterestのサイト訪問(https://www.pinterest.jp/)
またはアプリ利用の前後180分の行動ログから分析
※モニターは全国の20代以上男女
11位・15位・20位には料理・レシピアプリがランクインしています。また、14位のユニクロは前のランキングで10位だったGUと同様にファッションのジャンル。さらに16位にはホットペッパービューティー(ファッション系)もランクインしており、先ほどの興味関心マップとの相関が見られるポイントです。
特に、アパレル関連の企業はピンタレストへ公式アカウントを作成しているケースも多く、季節ごとの新商品や、有名人とのコラボ商品などの販促に活用しているようです。
まとめ:ピンタレストユーザーの姿
ここまで、ピンタレストのユーザー数や属性、興味関心を調査してきました。実際にわかったメディアとしての特徴は以下の通りです。
・女性ユーザーが多く、20代~40代まで幅広い利用者が集まる
・ユーザーの興味関心は「ファッション」「料理」「ショッピング」といったジャンルの傾向が強い
・併用するSNSはTwitterよりもInstagram
・楽天やメルカリといったECアプリや、クラシルなどの料理系アプリ、GU・ユニクロといったファッション系アプリも特徴的に利用している
本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。
【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2019年12月〜2021年11月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:スマートフォン
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