ファッション、メイク、インテリア、DIYなどのビジュアルから様々なアイデアを探索できるPinterest(ピンタレスト)。2022年6月に日本国内でも広告事業がスタートしました。広告プラットフォームとして捉えると、その後の購買など具体的なアクションにつながるのかどうか、気になるところではないでしょうか。
そこでマナミナ編集部では、Pinterest ユーザーの購買やアクションとの関係性について、Web行動ログデータから独自調査を行いました。
Pinterest ユーザーとショッピングの相性は?
まず、Pinterest ユーザーのショッピングとの相性を調べるため、Pinterest ユーザーのECサイトとの併用率を分析しました。
下図は、PCやスマートフォンでPinterest のWebサイトまたはアプリを利用したユーザーが、1ヶ月間にどのようなECサイトをどれぐらい利用しているかをスコア化したものになります。
Pinterest ユーザーが最もよく利用しているのはAmazonで、8割弱のユーザーがAmazonも併用していることがわかりました。この数値を他のSNSや動画共有プラットフォーム(4サービス)の平均値と比較すると、Pinterest の方が+13.6ptも高くなっています。
ECサイトとの併用率を比較したデータ
集計期間:2022年8月
対象デバイス:PCおよびスマートフォン
その他のECサイトについても、いずれも他プラットフォーム平均値よりも高いスコアが出ており、特に「モノタロウ」などDIY系の通販サイトが上位にあがっているところは、インテリアに関心が高いユーザーが多いと考えられるPinterest らしい点かもしれません。
総じて、Pinterest ユーザーはECサイトをよく利用する傾向があると言えるでしょう。
Pinterest 利用前後の検索ワードから期待値を探る
続いて、Pinterest にどんな期待を持って利用しているのかを調べるため、Pinterest のWebサイト流入時のキーワードを分析しました。
InstagramやTikTokなどのSNSでは、著名人、タレント、インフルエンサー等の個人名が流入上位にあがることが多いのですが、Pinterest への流入キーワードは「作り方」や「レシピ」など具体的なアクションの方法に関する情報収集をする人がいる一方で、「おしゃれ」「かわいい」「簡単」「メンズ」などのキーワードもあり、まだ漠然と買いたいものや試したいことを探している潜在ユーザーもいると考えられ、使われ方がユニークであることがわかりました。
消費者がやりたいことや買いたいもののアイデア探しに、Pinterest を利用していると考えられます。
さらに、Pinterest を利用した後の検索キーワードも調査しました。
Pinterest 利用前後の3時間以内にGoogleなどの検索エンジンで検索されたワードを抽出したところ、利用後の上位には「店舗」「ファッション」など、購買や商材につながるような検索語句が見られ、具体的な店名やECサービス名のほか、「評判」「口コミ」など検討プロセスを深める語句も出現していました。Pinterest での画像にインスピレーションを受け、さらに他のアクションを起こそうとしている様子がうかがえます。
続いて、広告プラットフォームとしてのPinterest の使われ方、今後の展望について、Pinterest Japan ビジネスマーケティングリードの石井恵子さんに、お話を聞きました。その内容をご紹介します。
石井恵子さん
Pinterest Japan ビジネスマーケティング
ビジネスマーケティング・シニアリード
Pinterestが「ひらめきを行動へ繋げることのできるプラットフォーム」であることの認知向上と理解促進とともに、より多くの企業にPinterest のビジネス活用におけるメリットやユニークな価値を理解いただくため、様々なクリエイティブな手法で Pinterestのストーリーを伝えている。
「アイデア探索ツール」であるPinterest は、SNSではない
― Pinterest のプラットフォームとしての特徴を教えてください。
石井 恵子さん(以下、石井):Pinterest は、暮らしをさらに豊かにするインスピレーションと出会い、実現へと導く生活を彩るアイデアを、画像や動画で発見・保存・整理できるビジュアル探索ツールです。ユーザーの多くは、他人の暮らしを見るのではなく、自分の暮らしをさらに豊かにするアイデアをビジュアルで探索・発見するために Pinterest を利用し、実際にそのアイデアを実現するために計画や行動を起こしています。
Pinterest の特徴は、ソーシャルよりはパーソナル、そして情報を見つけるための検索ではなく、インスピレーションに出会う主観的な探索というものがあり、独自のビジュアル検索機能により、使うほどにユーザーの好みを学び、一人一人にパーソナライズされたアイデアを提案する仕組みのため、これまで気づいていなかったけれどもやってみたいと思うような新しいアイデアの発見につながります。
― SNSとは異なるポジションなのですね。
石井:過去あるいは現在起きていることや、自分の意見・考えを、“人と人とのつながり” の中で発信していくSNSではなく、Pinterest は、いいね!やシェア数など、他人からの評価に捉われず、主観的な視点でこれから実現したいアイデアを探すために活用されています。
それぞれのユーザーに関連性の高いおすすめが表示されることで、ユーザーのなりたいイメージや夢のライフスタイルなど、オンラインで見つけた理想をオフラインで実現するためのアイデア探索ツールとして活用されています。また、Pinterest はタイムライン型ではなくストック型でビジュアルがユーザーに提供されることもユニークな特徴であり、ユーザーひとりひとりに関連性が高い良質なコンテンツを識別し提供しています。
― 実際にはどのような人たちが利用しているのでしょうか。
石井:現在、Pinterest は世界中で毎月4億人以上のユーザーが利用していますが、そのうちの75%は日本を含む米国以外の利用者になります。国別のユーザー数や属性は公表していませんが、ニールセンの調査によると、日本では毎月870万人が利用していると言われています。
Pinterest は、年齢性別を問わず、新しいことを始める際のインスピレーションの検索やプランニングに活用されることが多く、Z世代やミレニアル世代からベビーブーマー世代まで、幅広いユーザーに利用されています。特に日本では、Z世代、ミレニアル世代が、Pinterest で最も成長しているユーザーであるなか、1日に約300万件のアイデア(ピン)が Pinterest に保存されています。
Pinterest では広告もアイデアの1つ
― 今年6月から広告事業を日本でも開始されましたが、その背景は?
石井:日本では長期的視点で、日本のユーザーに適したローカライズ且つパーソナライズされた体験を提供できるよう機能面を重視し、時間をかけてサービスの向上に力を入れてきました。すでにPinterest で広告出稿を開始したいという国内外の広告主からの高いニーズと、伸長を続けるPinterest の強力なユーザーベースの双方が相まった今年、広告事業の開始にふさわしいタイミングであると考え6月1日より日本における広告事業を開始しました。
― Pinterest アドの強みはどういった点なのでしょうか。
石井:Pinterest アドは、3つの特徴的な強みがあります。
1. 意欲的なオーディエンス
Pinterest は独自の機械学習と画像認識によりパーソナライズされた様々なビジュアルから“新たな興味” に出会えるため、Pinterest ユーザーは、いいね!やシェア数など、他人からの評価に捉われず、主観的な視点でこれから実現したいアイデアを探すために活用し、意欲的な思考で計画を立てるなか、Pinterest は新しいアイデアや製品を発見し、どこで何を買うか決めることに役立つため、ユーザーは他のプラットフォームよりも早くアイデアを検索してプランニングを始める傾向があります。
実際に、一般的なオンラインユーザーと比較して 1.3 倍の日本ユーザーが、「情報収集は自ら積極的に行う」と回答しています。ユーザーの検索キーワードに対して広告が出せるのも Pinterest の強みです。(ビデオリサーチ社 ACR/ex 2021 東京、大阪、名古屋、過去1週間に Pinterest を利用)
2. ポジティブなプラットフォーム 広告もアイデアの1つ
Pinterest は「ポジティブで」「ひらめき溢れる」プラットフォームであり続けることを目指し、ユーザーに安心して利用して頂くために、ダイエット広告をいち早く禁止するなど、広告のポリシーを厳しく制限しています。また、政治的な広告を中止するなど、業界内でも先進的な取り組みによって、ポジティブな環境を守るためのポリシーを展開しています。
Pinterest では、商品やサービスなどの広告は、興味関心のあるユーザーニーズに合ったコンテキストで配信されます。そのため、 ビューワビリティも高く、購入検討に役立つインスピレーションとしてポジティブに捉えられています。実際に、Pinterest に3000億件以上あるコンテンツのうち75%が企業、小売業者、広告主によるブランドサイトのピンであり、商品やサービスなどのビジネスコンテンツです。
※今年9月、 Pinterest は JICDAQ(一般社団法人デジタル広告品質認証機構)が定める第三者検証の認証基準に基づき、広告会社(広告購入者)事業領域の「ブランドセーフティ」分野において「JICDAQ認証」を取得しました。
3. 購入動機となるインスピレーション
Pinterest が提供するのは“答え” を見つける検索体験ではなく、独自の機械学習と画像認識によりパーソナライズされた様々な画像から“新たな興味” に出会える探索体験です。
Pinterest ユーザーには情報収集意欲の高い方が多く、かつ行動意欲も高いため、アイデアを見つけたあとは実際にアクションに移すユーザーが多いのも特徴です。米国では購入前にインスピレーションを得るためにPinterest を利用したことがあるユーザーは89%に上り、また7割の日本ユーザーが普段広告を見た後に関連サイトをチェックすると答えています*。
SNSなどインターネットで友達と交流するときや、ニュースを読みたい場合には広告は不要と思うユーザーも多いなか、Pinterest では企業のコンテンツはインスピレーションの一部として好意的に捉えられる傾向にあります。
(*ビデオリサーチ社 ACR/ex 2021 東京、大阪、名古屋、過去1週間に Pinterest を利用)
― Pinterest でのビジュアルから得たヒントが、行動のきっかけになりそうですね。
石井:はい。Pinterest ユーザーは、何か行動を起こそうとしてそのアイデアや商品を探しにPinterest を利用しているので、アイデアを探すだけでなく、その後行動に移すユーザーが非常に多いことが特徴です。Pinterest では、あらゆるジャンルのコンテンツを見つけることができますが、その中で特に日本でも人気があるカテゴリは、ファッション、ビューティー、インテリア、フードになります。ユーザーは、夕飯のレシピから服のコーディネートといった、日常の身近なアイデアから、旅行の行き先や家のリフォームといったライフイベントのプランニングなど、「これから行動に移したいこと」をPinterest で見つけて、実行しています。
また、Pinterest の上位検索の 97% がブランドや商品名などの指定のない キーワード(例「スニーカー 白 レディース」など)となっており、ユーザーの大部分は検索の際に特定のブランドや商品名を入力していないという特徴があります。具体的なブランドは決めていませんが、これから欲しいもの、やりたいことを探しに来ているユーザーが多いのが特徴です。
このように、Pinterest ユーザーは意欲的な思考でアイデアや商品の発見を求めて利用するため、欲しい物を見つけるひらめきから購入という行動へ、Pinterest をショッピングにも活用することが増えており、実際にPinterest で検索を行っているユーザー10人のうち9人が商品の購入意欲を持っています。
― 私たちがWeb行動ログから調査した結果でも、Pinterest ユーザーはECサイトをよく利用する傾向が出ていましたが、国内ユーザーもPinterest を見て購入というアクションに積極的なのでしょうか。
石井:日本のPinterest ユーザーは特に、購入という行動へ移せるアイデアを探している傾向があり、購入金額や頻度が高い傾向があります。実際に日本のPinterest ユーザーの83% が買い物をすること自体が好きだと回答しており*、ファッション、ビューティー、インテリアを始めとした生活の様々なシーンに取り入れるアイデアを見つけるためPinterest を利用しています。
(*ビデオリサーチ社 ACR/ex 2021(東京・大阪・名古屋), 過去1週間にPinterestを利用)
例えば、最近は冬に向けて「トラッドファッション」の検索数が150%上昇*し、「ローファー コーデ レディース」(+185%)、「テーラードジャケット」(+175%)など、クラシカルで上品さのあるファッションに関する検索が増加しています。
また、「リノベーション 古民家」の検索数が95%、「囲炉裏テーブル」は +55%とそれぞれ上昇しており、独特なレトロな雰囲気の住宅やインテリアを楽しむような検索が Pinterest 上では増えています。 購入という行為だけでなく、インスピレーションから購入まで、オフラインで体験できるような、わくわくするショッピング体験そのものを Pinterest で楽しんでいるのです。また、検討期間が長いユーザーが多く、関連して購入の金額が高い傾向があります。
(*Pinterest 内部調査データ: 2022 年 8 月 22 日から 2022 年 9 月 19 日までと、2022 年 7 月 24 日から 2022 年 8 月 21 日までの国内検索数の比較を使用し算出)
― 広告プラットフォームとして、企業側はどのような活用が考えられますか。
石井:世界中で毎月4億人以上のユーザーが利用するPinterest は、年齢性別を問わず、新しいことを始める際のインスピレーションの検索やプランニングに活用されることが多く利用されています。そしてPinterest ユーザーは、何か行動を起こそうとしてそのアイデアや商品を探しにPinterest を利用しているので、アイデアを探すだけでなく、その後ショッピング含め行動に移すユーザーが多いことが特徴です。このように、意思決定の前段階にいる潜在的なユーザーにリーチできるため、日本の企業やD2Cブランドにとっては、すでに購入を決めている指名買いのユーザーを超えた新しい顧客への認知向上や売上を生み出す場所としてフルファネルのソリューションとして役立てていただけると考えています。
Pinterest は、購入などのアクションにつながりやすいという強みや、ユーザーの好みを学習していく機械学習と、似た画像を認識するコンピュータービジョンによって適切な広告を表示できるという強みを持っています。これらの強みを活かした新しくユニークな広告のプラットフォームを作っていきたいと考えています。
またあわせて、ショッピング体験の向上にも引き続き注力しています。今年6月に日本で開始したShopifyとの連携や小売業者をサポートする機能「ショッピングAPI」の提供開始はその取り組みの一部です。企業は、ビジネスアカウントの運用を通して在庫や商品価格を表示できる「プロダクトピン」の作成や自社のECサイトへ誘導が可能になります。また、Pinterest Analyticsというデータ分析機能の利用により、広告配信を通してPinterest を効果的に活用することができます。
Pinterest 自体の機能拡充に加え、ECサイトの商品データとの連携を進めていくことで、これまでにない、新たなオンラインでの購買体験を提供できると考えています。繰り返しとなりますが、 Pinterest では、ユーザーは友人とつながるためではなく、日々の暮らしのためのアイデアを求めて訪れるため、Pinterest はソーシャルメディアではできない方法で購入体験ができます。Pinterest は、ユーザーとコマースビジネス双方にとって充実したショッピング機能や体験を提供したいと考えています。
企業にとってはビジネスとの親和性の高い潜在層のユーザーにアプローチすることができ、ユーザーにとっては思ってもみなかった新たな出会いができる。そして気に入れば購入を含めた次のアクションに移すことができる。そんな出会いから購買まで、フルファネルでポジティブな体験ができるプラットフォームを目指して、事業を拡大していきたいと思います。
取材協力:Pinterest Japan
マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。
編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。