「現場のユーザーリサーチ全集」を活用したアンケート設計
マナミナ編集部の弥富です。本メディア・マナミナは、「まなべるみんなのマーケティング・マガジン」として2019年7月8日にオープンしました。運営元はデータ分析とマーケティングコンサルティングの領域で業界をリードする株式会社ヴァリューズ。オウンドメディアという位置づけながらも、自社パネルを用いた市場や消費者の調査を通じて、マーケティングに携わる方々に示唆を提供できるよう、内製を中心にコンテンツ作りを行ってきました。
2022年7月に迎えたメディア立ち上げ3周年を記念して、マナミナでは書籍プレゼントキャンペーンを実施。と同時に、読者アンケートも実施して、メディアが読者からどう見られているのか、読者に評価されているポイントはどこか、改善すべきポイントはどこか、といった実態把握調査を行いました。
オウンドメディアにおいて、プレゼントキャンペーンと併せて読者アンケートを実施する手法は、特別珍しいものではありません。一方で、実務のなかで具体的にどのような点を意識すればより効果が得られるかは、あまりネット上でも詳しい情報が出ていないと思います。
こうした現場の担当者の課題を解決するため、リサーチャーの菅原大介さんとマナミナ上で進めてきたのが、「現場のユーザーリサーチ全集」シリーズです。
アンケートの企画者必見!「周年キャンペーン」を活用してユーザー調査を行うメリットとは|現場のユーザーリサーチ全集
https://manamina.valuesccg.com/articles/1761ユーザー理解の重要性が社内に浸透しない、忙しくてリサーチは後回しにしてしまう……などはマーケティング担当からよく聞く悩み。「リサーチ文化定着への近道に周年キャンペーンを活用するといい」とおっしゃるのは、リサーチャーの菅原大介さんです。今回は菅原さんに周年キャンペーンアンケートを活用した事例をご紹介いただきました。
オウンドメディアの企画を尖らせる「読者アンケート」3つのモデルケース【リサーチャー・菅原大介】
https://manamina.valuesccg.com/articles/1847Webサイトやブログ、SNS、広報誌など自社で保有するメディアの総称を指す「オウンドメディア」。近年では広告やマーケティングの手段のひとつとしても使われています。いまや多くの企業で立ち上げているオウンドメディアですが、同時に”ある課題”を抱えています。今回ご紹介するオウンドメディアアンケートは、そのようなオウンドメディアが抱える課題解決に役立つといいます。リサーチャーの菅原大介さんにお話を伺いました。
「現場のユーザーリサーチ全集」の位置づけは、マーケティングやプロモーション、メディア運営などの現場で実際に業務に携わる方々の「かゆいところに手が届く」ような、実践的なアンケート設計ノウハウを伝授すること。このような狙いのもと、上記の記事では、実際に聞くと良い質問項目や、回答をもとに得たい考察などを記載しています。
本記事では、今回マナミナが実施した3周年キャンペーン&読者アンケートの実際を解説します。また、その上で得られた回答結果と、導き出せた示唆の一部をお見せします。主にキャンペーン設計者やオウンドメディア運営者など、同業の方々のご参考になればと思います。
※なお、アンケート設計の上では、上記の菅原さんの記事を参考にしました。併せてお読みいただくと理解が深まるかと思います。これまでの菅原さんの記事は下記でまとめていますので、未読の方はぜひ参考にしてみてください。
【学びたい人へ】リサーチの基本〜応用まで網羅!リサーチャー・菅原大介さんの寄稿&取材記事まとめ
https://manamina.valuesccg.com/articles/1877本記事では、マナミナでこれまで公開してきたリサーチャーの菅原大介さんによる寄稿・取材記事を一覧にまとめました。業界別にリサーチで気をつける観点や、マーケティングアクションと併用するリサーチの枠組みなど、リサーチの手法や考え方を複数のテーマにわたって菅原さんが伝授。いずれも濃い内容となっていますので、本記事をブックマークなどして、じっくりとご自身の学びに役立ててみてはいかがでしょうか。
キャンペーンとアンケートの立て付けを説明
今回のキャンペーンと読者アンケートの立て付けをあらためて解説します。まず、一連の施策における狙いは次のように言語化しておきました。
上記の狙いを達成するためにアンケートの質問項目を設計することにします。
また、書籍プレゼントキャンペーンは以下のような立て付けに。過去マナミナに寄稿やインタビューでご協力頂いた方々の書籍を10名様ずつにプレゼントしました。
1.クー・マーケティング・カンパニー 音部大輔さん
『The Art of Marketing マーケティングの技法』
2.リサーチャー 菅原大介さん
『売れるしくみをつくる マーケットリサーチ大全』
3.三井住友海上 木田浩理さん
『データ分析人材になる。 目指すは「ビジネストランスレーター』
4.森経営コンサルティング代表 森泰一郎さん
『アフターコロナのマーケティング』
5.ヴァリューズのデータアナリスト 輿石拓真
『Rによるインタラクティブなデータビジュアライゼーション: 探索的データ解析のためのplotlyとshiny』
なお、書籍の詳細は以下の記事に記載しています。
今回設置した9つのアンケート設問と狙い
次に、アンケートでは以下の9つの質問項目を設置しました。順を追って内容を説明していきます。(※性別、年齢、居住都道府県の基本項目は以下の9つの質問を行う前に設置)
■1.マナミナの認知度
最初はマナミナを知っているかどうかを聞きます。設問は「知っておりアクセスしたことがある」「知っているがアクセスしたことはない」「知らない」の3つ。
■2.マナミナを知ったきっかけ
どんな経路でマナミナを知ったのか、認知獲得チャネルを聞きます。読者を広げるために、どのような集客手段に注力すべきかが見えるはず。
■3.マナミナにどれぐらいの頻度でアクセスしているか
アクセス頻度を聞きます。利用実態の把握から、読者のなかのマナミナの位置づけを定量的に読み取ります。
■4.ビジネスやマーケティングの情報収集に利用しているSNS
マナミナへの流入に限らず、ビジネスパーソンが情報収集に利用する媒体を、特にSNSに限って明らかにします。回答形式は複数回答可。選択肢にはFacebookやTwitter、Instagram、LINEなどSNS名が入ります。
■5.直近1年間でアクセスしたことがあるマーケティング/ビジネスメディア
同業他社メディアの利用状況と合わせて、市場環境を把握する設問です。こちらも複数回答可。選択肢にはマーケティング系メディア名が入ります。
■6.興味関心のあるジャンル
読者が興味関心を持っているテーマを単語ベースで把握します。具体的には、DXや市場調査、競合分析、マーケティング戦略といったワード。これらはマナミナ上で各記事に付与しているタグ(キーワード)と合わせました。この質問も複数回答可です。
■7.職種
読者の職種をヒアリング。読者像をブレークダウンしつつ、定量的に把握したい狙いです。
■8.これまでマナミナで印象に残っているコンテンツ
この質問は自由回答。マナミナのなかで印象に残っているコンテンツを、記事タイトルベースでヒアリングします。具体的な読者の声を知ることで、今後の企画改善につなげる狙い。なお、この質問は菅原さんの「オウンドメディアアンケート記事」内の「記事評価モデル」を参考にしました。
■9.マナミナへのご意見・ご要望
最後に、今後のサービス運営の参考として意見・要望を自由回答で聞きました。
もっとも効果的だったのは「印象に残ったコンテンツ」自由回答
以降は、回答のなかで興味深い示唆が得られたものや、今後につながりそうなものをお見せします。
まずは、4つ目の質問項目「ビジネスやマーケティングの情報収集に利用しているSNS」から。以下のような結果となりました。
「ビジネスやマーケティングでの情報収集」と前置きしたとしても、Twitterが約70%と最大だった点が特徴的です。Twitterでのビジネスパーソンの情報収集はかなり一般的になっているといえるでしょう。
また、もうひとつのポイントとして、Instagramの回答者割合がFacebookを抜いている点が挙げられます。Instagramでの情報収集は、以下の菅原さんのnoteによれば、「テーマに関する象徴的な画を通じたトレンドの現象理解に向いている」といいます。
メディア運営上、読者の情報収集回路を知っておくことで、適切なチャネル戦略の設計につながります。やはりTwitterは情報収集の中心チャネルとなっており、いかに攻略するかが大きな鍵だといえるでしょう。
次にお見せするのは、「6.興味関心のあるジャンル」の結果です。複数選択可とし、関心の高かったトップ5のジャンルは以下のようになりました。
1位 | マーケティング戦略(73.9%) |
2位 |
データ分析手法(68.5%) |
3位 | 市場調査(64.1%) |
4位 | ユーザー調査(52.2%) |
5位 | DX(51.1%) |
「マーケティング戦略」が最大となっており、読者の課題として戦略設計面を重視する方が多いことがわかりました。また、次点は「データ分析手法」となっています。以上の2テーマについては、同一人物が持っている興味だという可能性もあるでしょう。データをどうマーケティングに生かすかというテーマの記事は、現状マナミナでも読者の反応が高くなっています。このように、キーワード単位での興味関心を数値化することで、企画の方向性を整理しやすくなります。この点で非常に有意義なデータでした。
最後に、個人的にもっとも良かったと感じた設問は、「これまでマナミナで印象に残っているコンテンツ」でした。たとえば最近のコンテンツでいえば、「デジタル・トレンド白書2022」や「Googleアナリティクスガイド」「メンズ美容のセグメンテーション」「ヤクルト1000調査」などがバイネームで上がってきました。
「ヤクルト1000調査」を除けば、いずれも普段GAで見て数字がそこまで出ているわけではないコンテンツです。しかし、印象に残ったものとして挙げられるということは、読者のパーセプションが変化した可能性が高く、コンテンツの効果が示唆されています。オウンドメディアがマーケティング目的という性質を持つ上、このことは大きな意味を持つでしょう。
記事の成果を数字で把握することももちろん大事ですが、ユーザーに深く刺さったかどうか、どうパーセプションが変化したかという観点は非常に重要です。そうしたコンテンツが浮き出てきた時点で、この設問の価値は非常に高いのではないでしょうか。
最後に
今回はアンケート設問数との兼ね合いと、どこまで記事名がバイネームで出てくるか分からなかったこともあり、「マナミナで印象に残っているコンテンツとして上記を選んだ理由」までは尋ねませんでした。
しかし今後の企画改善を考えてみると、それらのコンテンツが読者の記憶に残った理由が分かれば、評価される企画の再現性が高まり、さらに良かったと思います。この点は今回の反省点として次回に生かせると良いかもしれません。
また次回は、ユーザーの体験談を募集し、コンテンツ制作に反映する「投稿募集モデル」を試すのも良いかもです。
本質は企画ネタを読者から募るという設問です。設問を3つに分解することで答えやすくする工夫はしているものの、回答のハードルはやや高いでしょう。ある程度読者がついていないと精度の良い回答を得るのは難しいかもしれませんが、次回は十分良い回答を得られる規模にまで、マナミナというメディアが成長してきていると感じました。
オウンドメディア運営現場からのレポートは以上となります。ぜひ参考にしてみてください。
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