企業のコアファンはメルマガに潜む?「メルマガ会員アンケート」の重要性【リサーチャー・菅原大介】

企業のコアファンはメルマガに潜む?「メルマガ会員アンケート」の重要性【リサーチャー・菅原大介】

業務の効率化、またコロナ禍の影響もあり、スピーディーかつスムーズなコミュニケーションが求められるようになった昨今。チャットツールの導入が急速に加速し、メールでの情報共有が減ってきています。そんな時代の流れがある中でも、企業は「メルマガ」配信に注力しているとおっしゃるのはリサーチャーの菅原大介さんです。その証拠として、カスタマーサポートセンターやフォームにはメルマガに関する問合せが異例の量、届いているというのです。詳しく伺っていきましょう。


注目されるメルマガとユーザーの声

――メール以外のコミュニケーション化が進む中、今回菅原さんが「メルマガ」に着目された理由を教えてください。

菅原大介(以下、菅原):リサーチャーとしてユーザーの声や顧客の見方、いわゆるVOC(Voice of customer)には常に注目しています。ユーザーの声は事業内容やサービス内容など様々ありますが、メルマガに関するものは一定数かならず入ってきます。これは見過ごせません。

――メルマガに関する問い合わせが一定数あるということですが、これはなぜでしょうか? またどのような声が寄せられていますか?

菅原:メルマガはユーザーの不満になりやすい要素を持っています。特定の企業に関わらず、配信通数の多さや配信時間帯、Web上で配信解除ができないというダークパターンなどの声があがりがちです。ユーザーごとに最適なコンテンツの配信の精査が必要なのも、メルマガの特徴ですね。

――菅原さんはこれらの改善に「メルマガ会員アンケート」をおすすめされていますね。メルマガ会員アンケートとは、どのようなアンケートでしょうか?

菅原:メルマガ運営を考えるうえで、ユーザーが何に不満を持ち、どこにメリットかを感じるのかを知ることはとても重要です。そんなときはメルマガでアンケートを投げかけるといいですよ。もともとアンケートを告知する手段として利用されることが多いメルマガは、アンケートフォームへの遷移アクションへと結びつきやすく、相性の良さは抜群です。

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「メルマガ会員アンケート」2つのメリット

――メルマガ会員アンケートを行うメリットは何ですか? 具体的に教えてください。

菅原:メリットは大きく2つ、まず1つ目は配信要件を最適化できることです。メルマガはユーザーにいち早く有益な情報を届けられる半面、配信数の多さや配信時間帯はユーザーの煩わしさへと繋がりやすく苦情が出やすい要素です。そういった意味でメルマガは、数あるマーケティング施策の中でも群を抜いて不満を呼び込みやすい性質をもっています。

メルマガを行う場合、まずはユーザーの習慣や希望を知ることはマストといえるのではないでしょうか。積極的に不満の要因を確認し、自社ビジネスとの両立を模索してください。

――メルマガ会員アンケートの2つ目のメリットは何でしょうか?

菅原:事前予約が可能なメルマガでは、1日や週を通じて目いっぱいのスケジュールが組まれがちです。こういった配信枠の固定化運用では、ユーザー側からすると内容が一方的な告知ラッシュに見えてしまいすぐに飽きられてしまいます。そこで読者アンケートを使用し、配信するメルマガの種類ごとの意義や効果を検証するのです。メルマガの内容がその後のユーザー行動にどのような影響をもたらしたかも分析できます。

――メルマガはオートメーション化が進みやすいからこそ、個別のニーズに役立てるアンケート実施には意義がありますね。

「メルマガ会員アンケート」の3つのモデルケース

――質問要素が幅広く存在しそうなメルマガ会員アンケートですが、目的ごとにどのようなアンケート設計をしたらいいでしょうか?

菅原:ユーザーの閲読習慣や頻度、メルマガに対する重きなどを尋ねたい場合は「実施把握モデル」がオススメです。

実施把握モデル

上記の画像にもある通り、一般的な閲読習慣や種別の閲読頻度、参照状況などで構成されます。まずは一般的な閲読習慣の質問を通じて、店舗や媒体・企業単位でメルマガを見る習慣があるかどうかを尋ねます。自社ユーザーがメルマガに対して粘着性が強いか弱いかを把握できます。次にメルマガごとに読者の閲読習慣を定量的に確認しつつ、最後にメルマガに対する評価や企業がユーザーにもたらす影響度を確認するのです。

――実施把握モデルを行なっている企業の事例があれば、教えてください。

菅原:パ・リーグのプロ野球球団「オリックス・バファローズ」のメルマガ会員アンケートです。オリックス・バファローズではイベントやチケットなどのテーマごとに分けてメルマガを配信していて、このすべてを調査対象としアンケート設計をしていました。
自社のメルマガを読むか読まないかだけではなく、球団のファンがメルマガに対してどのような志向性を持っているかを尋ねる質問はアンケートならではですよね。施策の有効性を知る手がかりとなります。

――実施把握モデルではユーザーとメルマガの基本的な関わりが得られますね。もう少し具体的なメルマガ運用の戦略がほしい場合、どうしたらいいでしょうか?

菅原:そういったケースでは「希望聴取モデル」がいいですね。希望聴取モデルは実施頻度や配信時間など、最適な運用ルーティンを模索する調査モデルです。

希望聴取モデル

まず希望頻度や希望時間帯の質問を通じて、読者にとって最適な配信の要件を確認。つぎにメルマガに登録しているけれど見ていないユーザーの理由を探ります。文字やコンテンツ量もユーザーへの影響度合いが高いので、定期的にフィードバックを受けるのがいいかもしれませんね。

――希望聴取モデルも企業事例があれば、教えてください。

菅原:飲食や美容、病院などの店舗・施設情報を紹介するローカルサービスのネット予約アプリ「EPARK」のメルマガ読者アンケートの例を紹介します。EPARKでは配信するメルマガごとに、ユーザーの不快度を確認するフィードバック機能を実装しています。不快かどうかを問う質問で「はい」を選択すると、不快理由を尋ねるアンケート画面に遷移すします。不快理由の質問では配信数・特典・企画内容・配信時間などの実施要件あるいは構成要素を提示して、不快の原因を究明することで最適化を目指すのです。このステップが退会・解除に至らない予防線となっているようです。

――先立ってユーザーの退会・解除を予防できるのはありがたいですね。他にも菅原さんオススメのアンケートはありますか?

菅原:「効果測定モデル」も知っておいてほしいです。アンケートでは日々のWeb行動の解析では追い切れないデータも得られます。

効果測定モデル

まずはユーザーがブランド情報にたどり着く際、メルマガがどのくらい寄与しているかを見極める。近年は速報性に加えて、まるで特集のような記事性の高い内容も評価される要因になっています。つぎに希望情報とその後の行動変化の質問を通じて、ユーザーがメルマガに求める情報と実際に起こしたアクションを把握するのです。ユーザーへの情報発信というと、プッシュ通知やSNSだと思われがちですが、メルマガは商品サービスにも強い誘導力があります。

――効果測定モデルも企業事例はありますか?

菅原:実態把握モデルで紹介した、オリックス・バファローズが行っていました。今回はメルマガの内容面に焦点を当てた質問構成となっています。まずホームページやSNS、会報誌、そしてアプリなど様々なプラットフォームを並べ、メルマガの優位性を確認します。つぎにメルマガで読みたい希望の情報を尋ね、最後にメルマガがキッカケでどの程度、事業貢献に繋がったかを尋ねます。

コアファンになりやすいメルマガ運営は注力したい

――マーケティングという視点において、菅原さんはメルマガ運営に力を入れるべきだと思いますか?

菅原:そうですね。メルマガはほかのプラットフォームと比べて、コアファンになってくれるユーザーが多く潜んでいます。だからこそメルマガ会員アンケートを通して、ユーザー属性やニーズを詳細に把握し、最適化していきたいのです。

――メルマガ会員アンケートの実施間隔はどの程度あけるのがいいでしょうか?

菅原:アンケートだけを実施するメルマガであるのか、通常のメルマガにアンケート要素を含ませるのかにもよります。ただ少なくても年に1度は実施し、ユーザーデータを更新していくことをオススメします。コアファンが多いからこそ、ユーザーの小さな変化も見逃さないようにしたいですね。

▼今回菅原さんにお話しいただいた周年キャンペーンでのアンケート施策については、菅原さんのnoteでもまとめられています。ぜひ併せてお読みください。

メルマガ施策の改善ならメルマガ会員へのアンケートで|菅原大介|リサーチャー|note

https://note.com/diisuket/n/n5043bc7603c3

企業のカスタマーサポートセンターのコールや問合せフォームには、メルマガに関するものが少なくなく、「配信数が多い」「配信時間帯が夜遅い」「登録解除できない」などをメインに、マーケティング施策としては異例の量の苦情が集まってきます。 この企業側からの一方通行的な施策に対する見直しを求める声が上がる一方で、もちろんメルマガはユーザーに有用な情報をもたらす存在として、新着メルマガ・おすすめメルマガ・クーポンメルマガ・特集メルマガなどの利点は、よく認識されています。 メルマガ運営を考えるうえで難しいのは、何が不満要素で何がメリットかはユーザーによって異なることです。そのため、近年は顧客の志向

菅原大介

菅原大介
リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の株式会社学研を経て、株式会社マクロミルで月次500問以上を運用する定量調査業務に従事。現在は国内通信最大手のグループ企業でマーケティング戦略・中期経営計画・UXデザインを担当する。

会社では小売・サービスの分野における市場調査・ユーザーリサーチ・プロダクトリサーチを担当し、自身もマーケティング・広報・店舗開発の実務経験を有する。また、スタートアップから大企業まで各規模のIT企業でリサーチ組織の立ち上げ経験を持つ。

個人でも「リサーチハック」をキーワードに、リサーチの魅力や技能を普及させる著述・講演活動に取り組み、業界・職種・施策・課題ごとの調査設計やデータ分析のノウハウが、マーケティング・調査メディアでの寄稿やセミナー・研修会で好評を得ている。

主な著書に『売れるしくみをつくる マーケットリサーチ大全』『新・箇条書き思考』(ともに、明日香出版社)がある。

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この記事のライター

女性系メディアの運営に4年携わり、現在は子育てをしながらフリーランスとして活動中。みなさんの”選択肢のひとつ”になるような、役に立つ記事をお届けしたいです。

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