株式会社CARTA COMMUNICATIONS
メディアソリューション・ディビジョンソリューション開発局 Data Dig部部長
三代 一豪氏
ポストクッキー時代のデータマーケティング
―― 株式会社CARTA COMMUNICATIONS(以下、CCI)様には、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」と消費者Web行動プロセス可視化ツール「story bank」を活用いただいています。本日は改めて、これらのデータツールを活用したお取り組みについて詳細をお伺いできればと考えていますが、まず貴社の事業内容や、三代様のご担当業務についてお聞かせいただけますでしょうか。
CCI 三代氏(以下、三代):CARTA HOLDINGSの傘下にあるCCIは、1996年創業から現在まで主力事業のメディアレップ事業を中心に成長を続けておりました。現在では統合的デジタルマーケティングサービスへ業態を転換し、事業会社様のマーケティング活動を全面的にサポートしております。広告主様と媒体社様、様々なステークホルダーの方々と向き合いながら、デジタルマーケティングおよびデジタルコミュニケーションの推進、最適なソリューションの提案、メディア施策の実行支援などあらゆるサービスを総合的に提供しています。
その中で私は、昨今のクッキーレスに対応した新たなデジタルマーケティングの推進を支援する「Data Dig」を通じて事業会社様のデジタルコミュニケーション推進をサポートし、更なる発展に貢献をしております。データ収集や分析に関するデータ統合技術やツールの導入支援、その後のデータマネジメント、マーケティング戦略立案にいたるまで、企業のデジタルマーケティングにおける課題解決に向けて、データ統合からマーケティングの活用まで一気通貫でサポートを提供できるのが「Data Dig」の強みとなります。
「Data Dig」サービス概要
自社の顧客データだけでは調査できない、市場全体の環境を把握したい
―― Dockpitとstory bank導入前に抱えていた課題を教えてください。
三代:事業会社様保有のファーストパーティデータやデジタル広告に接触したログデータのみだと分析できる情報が限られており、より本質的なマーケティングの課題を解決するには日頃から市場環境やターゲット、トレンドを理解した上でコミュニケーションとる必要があると課題に感じておりました。目的はお客様の信頼を得てマーケティングの上流から支援していくためには、市場環境からニーズやトレンドを把握して、顧客を理解することが必要だと考えているためです。
ユーザーインサイトなどコアな部分は、自社顧客のデータベースやアンケート調査データを通した分析調査はData Digでも既に対応していました。しかし、より視点を広げた世の中全体の動きを知る手段は限られていたのです。この課題を解決できるソリューションを検討していた際に、Dockpitとstory bankを知り、最終的には導入を決めました。
分析ツールで重要な「データボリューム」と「使いやすさ」
―― 数あるデータ分析ツールの中から、Dockpitとstory bankを選んだ理由を教えていただけますか。
三代:現時点でクッキーレスの影響を受けないことはもちろんのこと、Dockpitとstory bankのデータボリュームと使いやすさに魅かれました。
まずは、データのボリュームについてお話しますね。
市場調査やターゲットボリュームを把握できる同様のツールは各社様とも提供しておりますが海外の企業が提供するサービスの場合、プラットフォーム上の表記が英語だったり、できることが多すぎてかえって複雑なUIになるケースが多々あると感じております。かといって、簡易的なツールではパネルやログの数が少ないため、ちょっとでも複雑な検索ワードを入れると抽出ができなくなってしまう、といった課題がありました。
ヴァリューズ様が提供するDockpitとstory bankは、良い塩梅でこれらの課題を解決してくれていると思います。結果として調査したい内容に応じて一定のボリュームやパネル数が担保できる点は強いと思います。
そして使いやすさや操作性も無視できないポイントです。何よりデータ抽出が速いですね。何かを調べたいと思い立ったときは、集計条件を打ちこめばすぐにデータを抽出でき、アウトプットにつなげることが可能です。調査ツールを使う際に大事なポイントは日常使いができる点です。我々デジタルマーケティング業界は日々新しい情報のインプットやトレンドをキャッチアップする動きを求められますので、私もDockpitとstory bankは良い相棒として重宝しております。
加えて、DMP(データマネジメントプラットフォーム)やアナリティクスツールの場合は、SQLを書いてデータをシンクさせ、そこから管理画面上で抽出するケースや管理画面上できることの選択肢が多い故に、どうしても人手や時間、マニュアルのインプットが求められます。 そのため導入したものの一部の専門性のある人間しか使われない状態になってしまうものですが、Dockpitとstory bankは誰でも手元ですぐに使えるという点においては専門性のある人材が必要ないので教育コスト削減の観点でも導入意義はあると実感しています。実際弊社でも導入してアカウントのある人間は最初の段階でヴァリューズの担当者様にレクチャーをいただいたあとは特にマニュアルを必要とせず自走できる状態でDockpitとstory bankを使い倒しております。
「Dockpit」と「story bank」をセットで使うメリット
―― Dockpitとstory bankをどのように活用されているか、お聞かせください。
三代:Dockpitは、市場や顧客、競合、自社を知る、いわゆる3C分析に使います。その後、さらに個や集団に落とし込んで深掘り分析したいターゲットを分析する場合は、story bankを使って、その人たちがどのような人たちなのかを解像度をあげるために活用してターゲット理解に努めます。その後のマーケティング施策における施策実行フェーズ プランニングまで幅広く活用している状況です。
ちょっとした調査ならDockpitだけを使うこともありますが、ターゲットの解像度を上げるとなると、Dockpitとstory bankの両方を使うほうがいいと感じています。
―― Dockpitとstory bankの具体的な活用事例を教えていただけますか。
三代:私が担当した金融系のお客様の事例を紹介します。
最初に市場の傾向やトレンドを理解するためにまずは普通に検索をして情報を調べようと思います。すると、おそらく保険会社、証券会社などが自主調査の形で出している調査レポートや各省庁が調査している調査レポートがヒットするでしょう。そうしたものは、基本的にはアンケート調査の結果がメインになると思います。もちろん貴重な情報ソース且つ信頼度の高いデータなので参考情報としてこちらも活用します。
そうした調査結果から、例えば「20代で保険に関心のある人は少ない」ということがわかったとします。そうすると、「少ないながらも関心のある人はどういったニーズを持っており、どのように検討しているのか」といったことが気になってくるはずです。
Dockpitを使うと、意識ベースのアンケート調査とは異なり 、行動ログベースのターゲットが日常的にインターネット上で行動を起こしているかを知ることができるため、そうした気になりごとを解消することができます。保険で気になるのは毎月の掛け金なのか、サービス内容なのか。サービスを知るきっかけはCMなのか。といったことを調べていくのです。
Dockpitの画面の例(上図は「保険」と検索した20代のデータ)。どのようなワードが掛け合わされて検索されているのかを把握することで、ターゲットのニーズや気になりごとを分析することができる。
三代:そこからさらにターゲットの深掘りをするため、story bankを活用し、モヤモヤしている骨格を炙り出すことで、精度の高いペルソナ設計に向けて肉付けをしていきます。こうしたアプローチにより、ターゲットに刺さるコミュニケーションやメディアプランの落とし込みまで一気通貫で提案するきっかけを作ることができました。
story bankの画面の例(上図は「保険」と検索した20代のデータ)。モニター会員の属性や普段の行動、興味関心などのアンケートデータを有しており、「このWeb行動を起こした人」という行動データと紐づけることで、分析対象者がどのようなことに関心を持つ傾向にあるか、簡単に集計することが可能。
競合の集客チャネルを正確に把握できることも強み
―― Dockpitとstory bankを使う中で、新たな気づきはありましたか。
三代:競合の出稿状況が、考えていたものと違ったことに気づきました。
ある案件で、それまではベンチマークとしていた企業が、デジタル広告に力を入れていると思っていたんですね。ですので、担当するクライアントにも競合他社へのターゲット流出や接点を阻止する観点でも同様の広告やセグメント設計を提案しようと思っていました。しかし、Dockpitで流入構造を確認したところ、実はソーシャルアカウントや自然検索からも集客できていることが判明しました。
単純な出稿量ではなく、「実際にそのチャネルからどれだけ集客できているのか」ということを、データで客観的に診断しながら競合分析し、お客様に提案できるようになったことは大きな変化だと思います。
Dockpitの画面の例(上図はサンプルとして「マナミナ」のデータ)。サイトの集客構造を見ることで、最適な提案につなげられる。
三代:また、認知型の広告の効果を可視化できるようになりました。例えばCMを出稿していても、本当に効果があるかわからないと感じている広告主様は少なくありません。出稿後の検索状況を見ることで、簡易的ではありますがCM効果の部分的な影響度合いを測ることができます。リーチや動画の再生率、アンケート調査で「CMを見たことがあるか」を聞く以外の指標を設けることができたので、お客様にお渡しするレポートの品質と考察する幅を広げることができたと感じています。
メディア施策は、あくまでお客様の課題を解決するための手段です。主語となるお客様の課題に対してより深く向き合うことができるようになったため、お客様に最適な提案ができるようになり、結果として受注率アップにもつながっています。
データをもっと民主的に
―― 最後に、データを活用し進めていきたいことなど、今後の展望をお聞かせください。
三代:事業会社様および社内のデータマーケティングの推進を続けていきたいです。
誰もが安全かつ安心にデータと触れ合える点は大事なポイントと考えております。「Dockpit」と「story bank」から得られるデータと信ぴょう性は事業会社様に対して自信を持って説明責任を果たすことができるツールと考えております。
また、能動的に自分に必要なデータは自分で出す、自走できる状態が理想とした際に誰でも使える「Dockpit」と「story bank」はメンバーのスキル向上や組織力の強化につながっていると思います。
冒頭申し上げた通り、データの取得や扱い方のレギュレーションが厳しくなりつつありますが、CCIは「Data Dig」を通じて今後もお客様のビジネスに貢献していきたいと思います。
取材協力:株式会社CARTA COMMUNICATIONS
IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。