糖尿病治療剤「オゼンピック」、ダイエット目的での利用が増加
ここ数か月で、デンマークの製薬会社ノボ ノルディスク ファーマが開発した注射薬オゼンピック(Ozempic)が、ソーシャルメディア、テレビのトークショー、ニュースで大きな話題となっています。
オゼンピックとは糖尿病の治療剤で、GLP-1ホルモンを分泌させて血糖値を下げる薬です。このオゼンピックをダイエット目的で使う人が増えています。その結果、オゼンピックはスーパーマーケットの食品の売上にまで影響を与えているのです。
アメリカでは約70%の人々が肥満または過体重とされ、糖尿病や心臓病などの健康問題が顕著に増加しています。そんな中、セレブリティやソーシャルメディアのインフルエンサー、イーロン・マスクなどの著名人が、「オゼンピックが体重減少に効果をもたらした」と絶賛したため、オゼンピック人気が急上昇しました。モルガン・スタンレーの調査によれば、2035年までに7%のアメリカ人、つまり2,400万人がこの新しい減量薬を服用すると予想されています。
*Morgan Stanley Research
https://www.morganstanley.com/ideas/obesity-drugs-food-industry
オゼンピックなどの薬を減量に使う人々は、脂肪や塩味、甘さのあるスナックを控える傾向にあります。大手の多国籍小売チェーンであるウォルマートなどのスーパーマーケットは、このような購買パターンの変化を認識しています。消費者の味の好みが変わる中、食品会社は砂糖含有量を減らし、より多くのタンパク質を添加するなどして、ブランドを再構築しています。スナックなどの商品の購入が減少した一方で、健康的な商品の売上が増加していることは、注目すべき点です。
オゼンピックの消費は、製薬業界にも影響を与えています。アメリカの製薬会社イーライ・リリーは、オゼンピックと類似した効果を持つ注射可能な抗糖尿病薬「マンジャロ(Mounjaro)」を製造しています。他の製薬会社も自社の減量薬を開発し、この新しい市場でのシェアを確保しようとしているのです。
[参考]
How weight loss drugs like Ozempic could radically could radically reshape the food business
https://www.axios.com/2023/10/06/ozempic-weight-loss-drugs-food-business
Popular use of obesity drugs like Ozempic could change consumer habits
https://www.cbsnews.com/news/weight-loss-ozempic-drugs-consumer-demand-restaurants-food/
大手お菓子メーカーHERSHEY’Sの「BETTER-FOR-YOU戦略」
ハーシー(HERSHEY’S)は世界最大のチョコレートメーカーの1つです。その代表的な商品には、ハーシーズ・キス、リーセス(Reese's)のピーナッツバターカップ、キットカットなどがあります。ハーシーの消費者インサイトチームが実施したマーケティング調査によると、消費者の71%が健康的なライフスタイルを重視していることがわかりました。この調査結果が、ハーシーにブランドの転換を促し、重要なビジネス上の意思決定を行うきっかけとなりました。その結果、ハーシーは「Better-For-You(BFY:健康志向)」戦略を立て、品揃えとブランドを変革しました。
ハーシーの「無糖」商品ラインナップは、消費者が糖分摂取を減らそうとしている傾向にマッチし、彼らのBFY商品の中で最も成功した商品のひとつとなっています。またハーシーは、無糖チョコレートメーカーである「Lily’s」を傘下としました。Lily'sでは甘味料として、虫歯を起こしにくいものとして知られる「ステビア」を商品に使用しています。ハーシーがもうひとつ注目していたのは、プロテインです。消費者がより多くのプロテインを摂取しようとしていることから、ハーシーはプロテインバーの製造業者である「ONE Brand」を獲得し、栄養バー市場を拡大しました。
プラントベースの市場も、ヴィーガン人口の増加とともに拡大しています。ハーシーはクラシックなチョコレートのプラントベース・バージョンも作成しました。「プラントベース エクストラクリーミー アーモンド&シーソルト」と「リーセス プラントベース ピーナッツバターカップ」といった商品がその例です。
[参考]
Consumers are focusing more on health and Hershey is here for it
https://www.retaildive.com/spons/consumers-are-focusing-more-on-health-and-hershey-is-here-for-it/690198/
Hershey: Better-for-you trend offers sweet opportunities in the snacking field
https://www.snackandbakery.com/articles/109612-hershey-better-for-you-trend-offers-sweet-opportunities-in-the-snacking-field
Hershey buys Lily’s confectionery brand for $425 million
https://www.confectionerynews.com/Article/2021/06/28/Hershey-buys-Lily-s-confectionery-brand-for-425m
「日本らしさにこだわらない」丸亀製麺が海外で大成功
丸亀製麺のカナリー・ワーフ(イギリス)店
日本国内で大成功を収めた日本のレストランチェーンは、積極的に海外進出していますが、苦戦している企業もあります。うどんチェーン店である「丸亀製麺」は急速に世界中に展開しながら、成功しているレストランの1つです。現在、日本国内では800以上の店舗、海外でも8か国にわたる244の店舗を展開しています。丸亀製麺が国際的に成功を収めるためにどのような戦略を採用しているのか、そのアプローチを見てみましょう。
多くの日本企業は厳格な日本の価値観に従い、正統な日本の職人技や味を市場に提供することを好む傾向にあります。しかし丸亀製麺は、多くの特徴を地元に合わせ、各国独自のアイデンティティを作り上げることで、ビジネスを真に「国際化」させました。近年多くの企業が、海外拠点に日本から人材を派遣するのではなく、主要な意思決定を地元の従業員に任せています。地元で人材を獲得した例としては、丸亀製麺ヨーロッパのCEOであるキース・バード氏が挙げられます。彼は以前にイギリスで成功したレストランや食品小売業において、戦略立案やアドバイスを行ってきた経験がありました。丸亀製麺は最も収益性の高いロケーションを選定し、現地で経験や専門知識を持つ従業員を採用することで、より効率的に店舗を運営できているのです。
丸亀製麺のもう一つの特徴は、日本にはない、その地域特有のメニューを追加していることです。カリフォルニアではヴィーガン味噌うどん、テキサスでは和牛サンドイッチ、香港ではトマトビーフうどんなどが楽しめます。丸亀製麺は、伝統的な日本の味が日本で人気だからといって、それが日本人ではないお客さまにアピールできるとは限らないと認識しているのです。
丸亀製麺独自の店内体験も強みの一つです。自分で天ぷらやサイドメニューを取ることができるセルフサービスのカフェテリア・スタイルは、他のレストランとは異なる方式です。カウンター越しに店員がうどんをこねている様子を見ることも、顧客体験となります。ただしイギリスを含む一部の国々では、セルフサービスの「トレイシステム」に馴染みがありません。そのため丸亀製麺ヨーロッパでは、テーブルでのサービスも提供しています。丸亀製麺は地元のデザインやブランディングのコンサルタントと提携することで、海外の顧客理解を深めているのです。
[参考]
Marugame Seimen Udon Restaurants - Success in Europe By Focusing On Your Own Identity Rather Than 100% Japanese
https://rudlinconsulting.com/marugame-seimen-udon-restaurants-success-in-europe-by-focussing-on-your-own-identity-rather-than-japaneseness/
Marugame Udon breaks into the European market with big neon noodles
https://www.designweek.co.uk/issues/13-17-february-2023/marugame-udon-harrison-european-market/
Born and raised in the Bay Area, U.S.A, I was fascinated by the different social and purchasing behaviors between Japanese and American consumers. I studied communication for undergrad and international marketing for my graduate studies. My professional background is in bilingual recruitment and Japanese-English translation.