HERSHEY’Sの「Better-For-You」戦略など...海外トレンドに見るビジネスの種(2023年11月)

HERSHEY’Sの「Better-For-You」戦略など...海外トレンドに見るビジネスの種(2023年11月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、アメリカ出身の著者が、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は「食」のトレンドに注目。ダイエット目的での利用が増えている「オゼンピック」やHERSHEY’Sの「Better-For-You」戦略、丸亀製麺の海外戦略などを紹介していきます。


糖尿病治療剤「オゼンピック」、ダイエット目的での利用が増加

ここ数か月で、デンマークの製薬会社ノボ ノルディスク ファーマが開発した注射薬オゼンピック(Ozempic)が、ソーシャルメディア、テレビのトークショー、ニュースで大きな話題となっています。

オゼンピックとは糖尿病の治療剤で、GLP-1ホルモンを分泌させて血糖値を下げる薬です。このオゼンピックをダイエット目的で使う人が増えています。その結果、オゼンピックはスーパーマーケットの食品の売上にまで影響を与えているのです。

アメリカでは約70%の人々が肥満または過体重とされ、糖尿病や心臓病などの健康問題が顕著に増加しています。そんな中、セレブリティやソーシャルメディアのインフルエンサー、イーロン・マスクなどの著名人が、「オゼンピックが体重減少に効果をもたらした」と絶賛したため、オゼンピック人気が急上昇しました。モルガン・スタンレーの調査によれば、2035年までに7%のアメリカ人、つまり2,400万人がこの新しい減量薬を服用すると予想されています。

*Morgan Stanley Research
https://www.morganstanley.com/ideas/obesity-drugs-food-industry

オゼンピックなどの薬を減量に使う人々は、脂肪や塩味、甘さのあるスナックを控える傾向にあります。大手の多国籍小売チェーンであるウォルマートなどのスーパーマーケットは、このような購買パターンの変化を認識しています。消費者の味の好みが変わる中、食品会社は砂糖含有量を減らし、より多くのタンパク質を添加するなどして、ブランドを再構築しています。スナックなどの商品の購入が減少した一方で、健康的な商品の売上が増加していることは、注目すべき点です。

オゼンピックの消費は、製薬業界にも影響を与えています。アメリカの製薬会社イーライ・リリーは、オゼンピックと類似した効果を持つ注射可能な抗糖尿病薬「マンジャロ(Mounjaro)」を製造しています。他の製薬会社も自社の減量薬を開発し、この新しい市場でのシェアを確保しようとしているのです。

[参考]
How weight loss drugs like Ozempic could radically could radically reshape the food business
https://www.axios.com/2023/10/06/ozempic-weight-loss-drugs-food-business

Popular use of obesity drugs like Ozempic could change consumer habits
https://www.cbsnews.com/news/weight-loss-ozempic-drugs-consumer-demand-restaurants-food/

大手お菓子メーカーHERSHEY’Sの「BETTER-FOR-YOU戦略」

ハーシー(HERSHEY’S)は世界最大のチョコレートメーカーの1つです。その代表的な商品には、ハーシーズ・キス、リーセス(Reese's)のピーナッツバターカップ、キットカットなどがあります。ハーシーの消費者インサイトチームが実施したマーケティング調査によると、消費者の71%が健康的なライフスタイルを重視していることがわかりました。この調査結果が、ハーシーにブランドの転換を促し、重要なビジネス上の意思決定を行うきっかけとなりました。その結果、ハーシーは「Better-For-You(BFY:健康志向)」戦略を立て、品揃えとブランドを変革しました。

ハーシーの「無糖」商品ラインナップは、消費者が糖分摂取を減らそうとしている傾向にマッチし、彼らのBFY商品の中で最も成功した商品のひとつとなっています。またハーシーは、無糖チョコレートメーカーである「Lily’s」を傘下としました。Lily'sでは甘味料として、虫歯を起こしにくいものとして知られる「ステビア」を商品に使用しています。ハーシーがもうひとつ注目していたのは、プロテインです。消費者がより多くのプロテインを摂取しようとしていることから、ハーシーはプロテインバーの製造業者である「ONE Brand」を獲得し、栄養バー市場を拡大しました。

プラントベースの市場も、ヴィーガン人口の増加とともに拡大しています。ハーシーはクラシックなチョコレートのプラントベース・バージョンも作成しました。「プラントベース エクストラクリーミー アーモンド&シーソルト」と「リーセス プラントベース ピーナッツバターカップ」といった商品がその例です。

[参考]
Consumers are focusing more on health and Hershey is here for it
https://www.retaildive.com/spons/consumers-are-focusing-more-on-health-and-hershey-is-here-for-it/690198/

Hershey: Better-for-you trend offers sweet opportunities in the snacking field
https://www.snackandbakery.com/articles/109612-hershey-better-for-you-trend-offers-sweet-opportunities-in-the-snacking-field

Hershey buys Lily’s confectionery brand for $425 million
https://www.confectionerynews.com/Article/2021/06/28/Hershey-buys-Lily-s-confectionery-brand-for-425m

「日本らしさにこだわらない」丸亀製麺が海外で大成功

丸亀製麺のカナリー・ワーフ(イギリス)店

日本国内で大成功を収めた日本のレストランチェーンは、積極的に海外進出していますが、苦戦している企業もあります。うどんチェーン店である「丸亀製麺」は急速に世界中に展開しながら、成功しているレストランの1つです。現在、日本国内では800以上の店舗、海外でも8か国にわたる244の店舗を展開しています。丸亀製麺が国際的に成功を収めるためにどのような戦略を採用しているのか、そのアプローチを見てみましょう。

多くの日本企業は厳格な日本の価値観に従い、正統な日本の職人技や味を市場に提供することを好む傾向にあります。しかし丸亀製麺は、多くの特徴を地元に合わせ、各国独自のアイデンティティを作り上げることで、ビジネスを真に「国際化」させました。近年多くの企業が、海外拠点に日本から人材を派遣するのではなく、主要な意思決定を地元の従業員に任せています。地元で人材を獲得した例としては、丸亀製麺ヨーロッパのCEOであるキース・バード氏が挙げられます。彼は以前にイギリスで成功したレストランや食品小売業において、戦略立案やアドバイスを行ってきた経験がありました。丸亀製麺は最も収益性の高いロケーションを選定し、現地で経験や専門知識を持つ従業員を採用することで、より効率的に店舗を運営できているのです。

丸亀製麺のもう一つの特徴は、日本にはない、その地域特有のメニューを追加していることです。カリフォルニアではヴィーガン味噌うどん、テキサスでは和牛サンドイッチ、香港ではトマトビーフうどんなどが楽しめます。丸亀製麺は、伝統的な日本の味が日本で人気だからといって、それが日本人ではないお客さまにアピールできるとは限らないと認識しているのです。

丸亀製麺独自の店内体験も強みの一つです。自分で天ぷらやサイドメニューを取ることができるセルフサービスのカフェテリア・スタイルは、他のレストランとは異なる方式です。カウンター越しに店員がうどんをこねている様子を見ることも、顧客体験となります。ただしイギリスを含む一部の国々では、セルフサービスの「トレイシステム」に馴染みがありません。そのため丸亀製麺ヨーロッパでは、テーブルでのサービスも提供しています。丸亀製麺は地元のデザインやブランディングのコンサルタントと提携することで、海外の顧客理解を深めているのです。

[参考]
Marugame Seimen Udon Restaurants - Success in Europe By Focusing On Your Own Identity Rather Than 100% Japanese
https://rudlinconsulting.com/marugame-seimen-udon-restaurants-success-in-europe-by-focussing-on-your-own-identity-rather-than-japaneseness/

Marugame Udon breaks into the European market with big neon noodles
https://www.designweek.co.uk/issues/13-17-february-2023/marugame-udon-harrison-european-market/

この記事のライター

Born and raised in the Bay Area, U.S.A, I was fascinated by the different social and purchasing behaviors between Japanese and American consumers. I studied communication for undergrad and international marketing for my graduate studies. My professional background is in bilingual recruitment and Japanese-English translation.

関連する投稿


中国シニア層に広がる“健康投資”志向〜1本6,500円の機能性オイルが売上拡大

中国シニア層に広がる“健康投資”志向〜1本6,500円の機能性オイルが売上拡大

上海の大型スーパーでは、淡い金色のパッケージが目を引く機能性食用オイルが、次々と棚から消えていきます。1本300元(約6,500円)という高価格にもかかわらず、購入しているのは主に60〜70代のシニア層です。近年、中国ではジアシルグリセロール(DAG)を含む高付加価値オイルの需要が高まり、“健康への投資”を重視するシニア消費の新しいトレンドとして注目を集めています。


【ValueQIC Q&A】中国人の「自分へのご褒美」に対する消費行動・価値観調査 (2025年12月)

【ValueQIC Q&A】中国人の「自分へのご褒美」に対する消費行動・価値観調査 (2025年12月)

2025年、「Treatonomics(ご褒美経済)」や「Self-Reward(自分へのご褒美)」という消費トレンドが台頭し、「自分にはそれだけの価値がある」という心理や「頑張る自分を労わるためのラグジュアリー」を肯定する消費が世界中で広く見られています。本レポートでは、新しいものへの反応が速く流行の変遷も早い中国人に着目し、「自分へのご褒美消費」に関する最新トレンドを把握、性別・世代別の消費傾向を調査しました。※本レポートは記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


中国の若者が「固形石鹸」に再注目、そのトレンドは?

中国の若者が「固形石鹸」に再注目、そのトレンドは?

ボディケア用品というと現在の主流は液体の製品ですが、近年中国の若者の間では固形石鹸が人気を集めるようになっています。その背景には 、例えば、さまざまな市場において情緒的な消費トレンドが成長している中、石鹸のニーズにおいても単に洗浄力などボディケアの側面だけでなく、感情的な価値をもたらす側面へと広がっていることが挙げられます。この記事では、固形石鹸の消費が拡大している要因とその様子を紹介します。


「レイジ・ベイト」「バイオハック」「パラソーシャル」など 今年の言葉で振り返る2025年 | 海外トレンドに見るビジネスの種(2025年12月)

「レイジ・ベイト」「バイオハック」「パラソーシャル」など 今年の言葉で振り返る2025年 | 海外トレンドに見るビジネスの種(2025年12月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、2025年の今年の言葉として英語圏で選ばれた言葉を取り上げます。「レイジ・ベイト」「オーラ・ファーミング」「バイオハック」「パラソーシャル」といった今年を象徴する言葉とともに、その背景にあった世界のトレンドや代表的な出来事を振り返っていきたいと思います。


【2026年】福袋 人気ランキング!スタバの順位や、ミスドのお得な福袋とは?

【2026年】福袋 人気ランキング!スタバの順位や、ミスドのお得な福袋とは?

お正月の初売り名物の一つ、「福袋」。この記事では、2026年の福袋事情を探っていきます。前半では、最新のデータを参考にして、人気の福袋ランキングと、属性別の人気福袋をご紹介します。後半では、“福袋”検索者はどのような人なのか、また、どのように福袋についての情報収集をしているのかを分析していきます。


最新の投稿


WEBデザイナーの約7割が週に複数回以上AIツールを利用!AIを活用しながら「人間ならではの価値」を高めていく姿勢が主流に【日本デザイン調査】

WEBデザイナーの約7割が週に複数回以上AIツールを利用!AIを活用しながら「人間ならではの価値」を高めていく姿勢が主流に【日本デザイン調査】

株式会社日本デザインは、WEBデザインの実務または学習に取り組んでいる方を対象に、WEBデザインにおけるAI活用実態と意識に関する調査を実施し、結果を公開しました。


TikTokは「検索プラットフォーム」として定着へ!若年層の過半数が利用経験あり。購買行動の起点としての存在感が拡大【ZIK調査】

TikTokは「検索プラットフォーム」として定着へ!若年層の過半数が利用経験あり。購買行動の起点としての存在感が拡大【ZIK調査】

株式会社ZIKは、全国15歳〜30歳の男女を対象にTikTokの利用状況に関する調査を実施し、結果を公開しました。


忍び寄る危機 ~ 静かな災害・緊急事態

忍び寄る危機 ~ 静かな災害・緊急事態

「災害」は自然や環境起因のものばかりではありません。「静かな災害」と題して、本稿で提示するのは「人口減による国力の低下」を指します。まさに日常的にじわじわと進む事態と言えるこの「忍び寄る災害」そして「危機」について、様々な環境の変化や世界で起きている人命危機の状況なども踏まえ、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が解説します。


都民のデート先、3位が横浜?東京都民・神奈川県民のデート先ランキング

都民のデート先、3位が横浜?東京都民・神奈川県民のデート先ランキング

日本の首都である「東京」と、港町の情緒や観光地が揃う「神奈川」は、どちらもデート先に困りにくいエリアです。 一方で、選択肢が多いからこそ「結局みんな、どこに行くのか」が見えにくい面もあります。今回は、Web上の検索データを分析し、東京都民と神奈川県民が選ぶデートスポットの傾向を調査しました。日本有数の都市であるこの2つのエリアに住む人々は、普段どのような場所でデートをしているのでしょうか。


オトナル、国内最大規模のインターネットラジオ「radiko(ラジコ)」に運用型音声広告を実装

オトナル、国内最大規模のインターネットラジオ「radiko(ラジコ)」に運用型音声広告を実装

株式会社オトナルは、株式会社radikoが運営するインターネットラジオサービス「radiko(ラジコ)」に対してSSP(Supply-Side Platform)を接続し、そちらを介してプログラマティック(運用型)広告として、広告主や広告代理店の持つDSP(Demand-Side Platform)から運用型の広告枠の購入が可能になったことを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ