■スピーカー紹介
図:スピーカー紹介
株式会社クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役 音部大輔氏
株式会社ヴァリューズ ゼネラルマネージャー 間宮浩平
優秀なマーケターは、より多くの“資源”を強化・活用し成果を出す
株式会社クー・マーケティング・カンパニー 音部大輔氏(以下、音部):はじめに優秀なマーケターの“強さ”や持っている“資源”について考えてみましょう。スポーツ・ビジネス・趣味、それぞれの分野の“強い人”は、相対的により多くの“資源”を持っています。ビジネスに強い人が持つ“資源”とは、技術や資金・マーケティング力などがあります。 “優秀な人”は、資源運用の効果と効率が良いという特徴があります。このことから優秀なマーケティング人材は、保有する多くの“資源”(スキルや知識・経験など)をより強化し、活用することで成果を出す人であると言えそうです。
続いて、優秀なマーケティング人材になるために身に着けるべきスキルについて、解説します。
もっとも必要なスキルは、消費者を正しく理解すること
音部:マーケティングスキルの中でもっとも重要なのは消費者を理解することです。消費者は通常、複数の自我(アイデンティティ)を持っています。1人の男性が夫として選ぶ商品と、父として選ぶ商品は異なることが多そうです。自我は、社会や他者との関係性をあらわしていると考えると理解しやすいでしょう。マーケターは「消費者がどのような自我の時に商品を使うとベネフィットを感じるのか」という視点で、調査設計や戦略検討を進めることが重要です。
消費者は、自我と共に複数のコミュニティに所属します。学校の友達や会社の同僚などの現実社会と、共通の趣味を持つ友達などWeb上の社会、双方のコミュニティには特徴があります。中でもSNS上のコミュニティでは、同じ意見に触れやすく(エコーチャンバー)、異なる意見に気づかない(フィルターバブル)世界が日常化しています。
マーケターは、複数の自我やコミュニティを想定し、情報に接する際の特徴や共通点を把握することが大切です。
アンケート回答に潜む消費者の本質
音部:インタビューやアンケートなどAsking調査を行うと、消費者へ「このブランドをなぜ買わないのですか?」と質問した時、「ブランドを知らない」「ブランドを見たことがない」という回答が多いことがよくあると思います。この場合、消費者はブランドを事前に知り得ていたら、商品を購入したのでしょうか。
人間は、自身の行動に対する本質的な理由に気づいていないことが多くあります。調査環境や体調によって答えが変わることもありますし、Asking調査のメリットとデメリットを把握しておくことが必要です。消費者視点で購買行動を捉え、調査の方向を定めましょう。消費者を観察・洞察し、消費者理解を深めることは優秀なマーケターになるために必要なスキルと言えます。
「実効性」「正確性」「独自性」のあるマーケティングリサーチは成果につながる
株式会社ヴァリューズ 間宮浩平(以下、間宮):音部さんに続き、私から優秀なマーケターが実践するデータへの向き合い方について解説します。
マーケティングでは、戦略や戦術に対してあるべき姿(仮説)を持ち、その前提となる「消費者」や「市場」に対して仮説を持つことが大切です。
本日は良いリサ―チ・分析のアウトプットを、リサーチによって意思決定の精度が上がったり、消費者理解により意思決定の選択肢が増えること、つまり直接的もしくは間接的にも成果に繋がること、と定義して話を進めていきます。
図:良いマーケティングリサーチ/分析とは何か
間宮:リサーチ結果を成果に繋げるためには「実効性」「正確性」「独自性」の3つの条件があると考えています。
実効性とは実際にリサーチ結果を元に戦略や施策を実行し、効力を得ることができるのか、という観点になります。例えば複雑なセグメンテーションやターゲット設定をしても社内に浸透せず、実効性が薄まるといったケースがよくあります。こうした問題を回避するためにも「正しさ」と「実効性」のバランスを考えてリサーチ結果を料理する必要があります。実効性を担保するには、社内におけるインターナルコミュニケーションスキルや、テクノロジーへの理解などが必要になります。
正確性とはリサーチ結果を正しく読めているのか、という観点になります。正確性を担保するにはミスリードしないよう統計的な知識やリサーチ、分析手法に関する基礎知識を身に着けておく必要があります。
「独自性」とはその名の通りユニークなリサーチであるか、模倣困難性が高いか、という観点になります。独自性を作るために必要な要素は複数ありますが、今回は「仮説を持つ」ことを中心に解説します。
図:成果につなげるための「必要条件」
ユニークな「仮説」を持って分析を行い独自性の高いアウトプットを得る
間宮:冒頭の音部さんのお話では、「優秀なマーケターは多くの“資源”を強化し活用している」ことに触れておられました。ここでは、マーケターの“資源”である「情報」を、どのように差別化し独自性を出すのか、その考え方について説明します。
私はリサ―チや分析から情報を収集する際、その情報が「情報劣位にならないための情報」なのか、「情報優位になるための情報」なのか、どちらにあたるのか、ということを意識しています。調査委会社などで汎用化されパッケージになっているリサーチなどから得られる示唆は、他社も容易に手に入る情報と位置づけ、「情報劣位にならない為の“情報」として位置付けるようにしています。当然、調査会社でもナレッジマネジメントが行われ、様々なリサーチソリューションが型化されていきます。その為、他社で再現が難しい(模倣困難性が高い)「情報優位になるための情報」を“資源”として活用すること、つまり独自性の高い情報が競争優位をもたらしやすいと考えています。
図:「独自性」とは
間宮:続いてリサ―チや分析のプロセスを通して、独自性の高いアウトプットに仕上げる方法を考えてみましょう。例えば分析手法や調査手法で他社との差別化を図ろうとしても、イチ企業で手法の開発を行うことは現実的に難しいでしょう。一方で企画や設計の時点でユニークな「仮説」を持つことは比較的容易に実現できるでしょう。
図:独自性の高め方
間宮:仮説を持たずに失敗した例を挙げておきます。ユーザーのサービス継続率を高めることを目的に、サービスの継続率とユーザーの利用ログの関係性を分析して、継続率を高めるドライバーを抽出するような分析があります。その際仮説を持たずに分析すると「利用量が多いと継続率も高い」というように「当たり前の結果」しか出ないことが多いです。もちろん事実として抑えておくことは大切なのですが、こうした結果ばかりだと分析しても当たり前の結果しか出ないといったイメージに繋がり、組織内で分析に対する期待値が下がりDXへのモチベーションが薄れていくといったケースもよく見られます。この場合、例えば「初回利用から次回利用までの期間の長さがその後の継続率を左右しそう」という具体的な仮説があると、初回利用からアプローチしなければいけないタイムリミットが可視化されます。たとえスモールサクセスでも成果をイメージしたアウトプットを考えて分析することが重要です。
調査の特徴や課題を理解したうえで調査設計を行う
間宮:ここからは調査設計時のポイントを解説します。音部さんより「消費者がブランドに対する本質的な気持ちに気づいていない場合、インタビューを実施しても適切な回答を得ることができない」という事例をご紹介いただきました。これは消費者調査のバイアスによる評価誤差の一例ですが、アスキング型の調査には様々なバイアスがかかります。具体的には回答者が他の人から好意的に見られる方法で質問に回答する傾向(社会的望ましさ)や、細かい行動など覚えていないが頑張って答えてしまう(忘却)などがあります。どんな調査手法でも完璧なものはなく、それぞれメリット・デメリットがあります。そのメリデメを加味した上で調査手法を組み合わせることが重要です。ヴァリューズの提供しているwebログデータを用いて上手くスピーディに仮説構築したり、アスキング型調査と組み合わせて顧客理解を深めていくことも検討してみてはいかがでしょうか。
図:Asking調査の主なバイアス
まとめ
間宮:本日のまとめです。良い調査/データ分析に必要なポイントを2つお話してきました。
1. 戦略や戦術における仮説と、その前提条件となる市場や消費者に関する仮説を持って企画すること
2. 各調査手法の限界やメリデメを理解した上で、調査上の課題設定を適切に行い、課題を解決する工夫をすること
図:良い調査/データ分析に必要なこと
間宮:ヴァリューズでは、「インターネット行動ログ」分析による、マーケティングリサーチ・コンサルティングサービスを提供しています。ご興味のある方はぜひお声がけください。
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※2024年1月31日(水)17時まで視聴可能。お申し込み後すぐに視聴URLをお送りいたします
制作会社でUIUXデザインやWebサイトの施策立案を経験後、ヴァリューズにジョイン。セミナーのサポートやTVドラマランキングの執筆などを担当しています。