優秀なマーケティング人材とは?育成方法やデータとの向き合い方を解説 | 「VALUES Marketing Dive」レポート

優秀なマーケティング人材とは?育成方法やデータとの向き合い方を解説 | 「VALUES Marketing Dive」レポート

「VALUES Marketing Dive」は、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込めた、新しいマーケティングイベント。第3回目となる今回の全体テーマは『未来を創り出す顧客理解の力』です。より深い顧客理解を追求することは、マーケティングに関わるあらゆる活動に必要なだけでなく、人材成長・組織活性化にも繋がります。スペシャル・セッションとなる本講演では、株式会社クー・マーケティング・カンパニー音部大輔氏をお迎えし、優秀なマーケティング人材の育成方法と、マーケター自身が価値を高めるために日々取り組むことについてお届けします。


スピーカー紹介

図:スピーカー紹介
株式会社クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役 音部大輔氏
株式会社ヴァリューズ ゼネラルマネージャー 間宮浩平

優秀なマーケターは、より多くの“資源”を強化・活用し成果を出す

株式会社クー・マーケティング・カンパニー 音部大輔氏(以下、音部):はじめに優秀なマーケターの“強さ”や持っている“資源”について考えてみましょう。スポーツ・ビジネス・趣味、それぞれの分野の“強い人”は、相対的により多くの“資源”を持っています。ビジネスに強い人が持つ“資源”とは、技術や資金・マーケティング力などがあります。 “優秀な人”は、資源運用の効果と効率が良いという特徴があります。このことから優秀なマーケティング人材は、保有する多くの“資源”(スキルや知識・経験など)をより強化し、活用することで成果を出す人であると言えそうです。

続いて、優秀なマーケティング人材になるために身に着けるべきスキルについて、解説します。

もっとも必要なスキルは、消費者を正しく理解すること

音部マーケティングスキルの中でもっとも重要なのは消費者を理解することです。消費者は通常、複数の自我(アイデンティティ)を持っています。1人の男性が夫として選ぶ商品と、父として選ぶ商品は異なることが多そうです。自我は、社会や他者との関係性をあらわしていると考えると理解しやすいでしょう。マーケターは「消費者がどのような自我の時に商品を使うとベネフィットを感じるのか」という視点で、調査設計や戦略検討を進めることが重要です。

消費者は、自我と共に複数のコミュニティに所属します。学校の友達や会社の同僚などの現実社会と、共通の趣味を持つ友達などWeb上の社会、双方のコミュニティには特徴があります。中でもSNS上のコミュニティでは、同じ意見に触れやすく(エコーチャンバー)、異なる意見に気づかない(フィルターバブル)世界が日常化しています。

マーケターは、複数の自我やコミュニティを想定し、情報に接する際の特徴や共通点を把握することが大切です。

アンケート回答に潜む消費者の本質

音部:インタビューやアンケートなどAsking調査を行うと、消費者へ「このブランドをなぜ買わないのですか?」と質問した時、「ブランドを知らない」「ブランドを見たことがない」という回答が多いことがよくあると思います。この場合、消費者はブランドを事前に知り得ていたら、商品を購入したのでしょうか。

人間は、自身の行動に対する本質的な理由に気づいていないことが多くあります。調査環境や体調によって答えが変わることもありますし、Asking調査のメリットとデメリットを把握しておくことが必要です。消費者視点で購買行動を捉え、調査の方向を定めましょう。消費者を観察・洞察し、消費者理解を深めることは優秀なマーケターになるために必要なスキルと言えます。

「実効性」「正確性」「独自性」のあるマーケティングリサーチは成果につながる

株式会社ヴァリューズ 間宮浩平(以下、間宮):音部さんに続き、私から優秀なマーケターが実践するデータへの向き合い方について解説します。

マーケティングでは、戦略や戦術に対してあるべき姿(仮説)を持ち、その前提となる「消費者」や「市場」に対して仮説を持つことが大切です。

本日は良いリサ―チ・分析のアウトプットを、リサーチによって意思決定の精度が上がったり、消費者理解により意思決定の選択肢が増えること、つまり直接的もしくは間接的にも成果に繋がること、と定義して話を進めていきます。

図:良いマーケティングリサーチ/分析とは何か

図:良いマーケティングリサーチ/分析とは何か

間宮リサーチ結果を成果に繋げるためには「実効性」「正確性」「独自性」の3つの条件があると考えています。

実効性とは実際にリサーチ結果を元に戦略や施策を実行し、効力を得ることができるのか、という観点になります。例えば複雑なセグメンテーションやターゲット設定をしても社内に浸透せず、実効性が薄まるといったケースがよくあります。こうした問題を回避するためにも「正しさ」と「実効性」のバランスを考えてリサーチ結果を料理する必要があります。実効性を担保するには、社内におけるインターナルコミュニケーションスキルや、テクノロジーへの理解などが必要になります。

正確性とはリサーチ結果を正しく読めているのか、という観点になります。正確性を担保するにはミスリードしないよう統計的な知識やリサーチ、分析手法に関する基礎知識を身に着けておく必要があります。

「独自性」とはその名の通りユニークなリサーチであるか、模倣困難性が高いか、という観点になります。独自性を作るために必要な要素は複数ありますが、今回は「仮説を持つ」ことを中心に解説します。

図:成果につなげるための「必要条件」

図:成果につなげるための「必要条件」

ユニークな「仮説」を持って分析を行い独自性の高いアウトプットを得る

間宮:冒頭の音部さんのお話では、「優秀なマーケターは多くの“資源”を強化し活用している」ことに触れておられました。ここでは、マーケターの“資源”である「情報」を、どのように差別化し独自性を出すのか、その考え方について説明します。

私はリサ―チや分析から情報を収集する際、その情報が「情報劣位にならないための情報」なのか、「情報優位になるための情報」なのか、どちらにあたるのか、ということを意識しています。調査委会社などで汎用化されパッケージになっているリサーチなどから得られる示唆は、他社も容易に手に入る情報と位置づけ、「情報劣位にならない為の“情報」として位置付けるようにしています。当然、調査会社でもナレッジマネジメントが行われ、様々なリサーチソリューションが型化されていきます。その為、他社で再現が難しい(模倣困難性が高い)「情報優位になるための情報」を“資源”として活用すること、つまり独自性の高い情報が競争優位をもたらしやすいと考えています。

図:「独自性」とは

図:「独自性」とは

間宮:続いてリサ―チや分析のプロセスを通して、独自性の高いアウトプットに仕上げる方法を考えてみましょう。例えば分析手法や調査手法で他社との差別化を図ろうとしても、イチ企業で手法の開発を行うことは現実的に難しいでしょう。一方で企画や設計の時点でユニークな「仮説」を持つことは比較的容易に実現できるでしょう。

図:独自性の高め方

図:独自性の高め方

間宮:仮説を持たずに失敗した例を挙げておきます。ユーザーのサービス継続率を高めることを目的に、サービスの継続率とユーザーの利用ログの関係性を分析して、継続率を高めるドライバーを抽出するような分析があります。その際仮説を持たずに分析すると「利用量が多いと継続率も高い」というように「当たり前の結果」しか出ないことが多いです。もちろん事実として抑えておくことは大切なのですが、こうした結果ばかりだと分析しても当たり前の結果しか出ないといったイメージに繋がり、組織内で分析に対する期待値が下がりDXへのモチベーションが薄れていくといったケースもよく見られます。この場合、例えば「初回利用から次回利用までの期間の長さがその後の継続率を左右しそう」という具体的な仮説があると、初回利用からアプローチしなければいけないタイムリミットが可視化されます。たとえスモールサクセスでも成果をイメージしたアウトプットを考えて分析することが重要です。

調査の特徴や課題を理解したうえで調査設計を行う

間宮:ここからは調査設計時のポイントを解説します。音部さんより「消費者がブランドに対する本質的な気持ちに気づいていない場合、インタビューを実施しても適切な回答を得ることができない」という事例をご紹介いただきました。これは消費者調査のバイアスによる評価誤差の一例ですが、アスキング型の調査には様々なバイアスがかかります。具体的には回答者が他の人から好意的に見られる方法で質問に回答する傾向(社会的望ましさ)や、細かい行動など覚えていないが頑張って答えてしまう(忘却)などがあります。どんな調査手法でも完璧なものはなく、それぞれメリット・デメリットがあります。そのメリデメを加味した上で調査手法を組み合わせることが重要です。ヴァリューズの提供しているwebログデータを用いて上手くスピーディに仮説構築したり、アスキング型調査と組み合わせて顧客理解を深めていくことも検討してみてはいかがでしょうか。

図:Asking調査の主なバイアス

図:Asking調査の主なバイアス

まとめ

間宮:本日のまとめです。良い調査/データ分析に必要なポイントを2つお話してきました。

1. 戦略や戦術における仮説と、その前提条件となる市場や消費者に関する仮説を持って企画すること
2. 各調査手法の限界やメリデメを理解した上で、調査上の課題設定を適切に行い、課題を解決する工夫をすること

図:良い調査/データ分析に必要なこと

図:良い調査/データ分析に必要なこと

間宮:ヴァリューズでは、「インターネット行動ログ」分析による、マーケティングリサーチ・コンサルティングサービスを提供しています。ご興味のある方はぜひお声がけください。

【お問い合わせ】
本記事や弊社サービスに関するお問い合わせはこちらから
https://www.valuesccg.com/inquiry/

下記のボタンからアーカイブ配信のお申し込みが可能です。
※2024年1月31日(水)17時まで視聴可能。お申し込み後すぐに視聴URLをお送りいたします
アーカイブ配信のお申し込みはこちら

この記事のライター

制作会社でUIUXデザインを経験後ヴァリューズにジョインし、セミナーのサポートやTVドラマランキングの執筆などを担当しています。

関連するキーワード


VMD

関連する投稿


組織に顧客理解を促すデータ可視化の手法。プロトタイプから効果的にスケールするには?|「VALUESMarketingDive」レポート

組織に顧客理解を促すデータ可視化の手法。プロトタイプから効果的にスケールするには?|「VALUESMarketingDive」レポート

ヴァリューズは、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込めたマーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」を2023年10月25日に開催しました。 第3回目となる今回のテーマは「未来を創り出す顧客理解の力」。本講演では、データを有効活用して顧客理解につなげるためのDX支援について、実際の事例を交えてレポートしていきます。


非財務の企業価値影響を測る「非財務価値サーベイ」と、サステナビリティ経営視点でのDockpit活用法|「VALUES Marketing Dive」レポート

非財務の企業価値影響を測る「非財務価値サーベイ」と、サステナビリティ経営視点でのDockpit活用法|「VALUES Marketing Dive」レポート

“データを通じて顧客を深く考える”“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込めたヴァリューズによるマーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」。10/25に開催された今回の全体テーマは『未来を創り出す顧客理解の力』。顧客理解の追求は、マーケティング活動だけではなく、人材成長・組織活性化にも繋がると考えます。本セッションでは「サステナビリティ経営においてDockpitをどのように活用できるのか」というテーマのもと、具体的な分析結果を交え、電通・GLIN Impact Capital・ヴァリューズの3社で議論。また国内電通グループのオリジナルソリューション「非財務価値サーベイ」も紹介されました。


生成AI時代に求められる「検索」マーケティングのあり方| 「VALUES Marketing Dive」レポート

生成AI時代に求められる「検索」マーケティングのあり方| 「VALUES Marketing Dive」レポート

ヴァリューズは、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込め、マーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」を10/25に開催しました。第3回目となる今回の全体テーマは「未来を創り出す顧客理解の力」です。生成AIの進歩に伴って検索結果画面が変革する中、マーケターはSEOをどう考え、どのように対策すればいいのでしょうか。本セッションでは、SEOの最前線にいる2人が、Googleが提唱する情報探索行動モデル「バタフライサーキット」を再考し、今後の検索のあり方についてディスカッションしました。


花王独自の顧客理解・データ活用文化の醸成方法 ~ 新卒社員が企画実行したデータアナリスト育成研修とは |「VALUES Marketing Dive」レポート

花王独自の顧客理解・データ活用文化の醸成方法 ~ 新卒社員が企画実行したデータアナリスト育成研修とは |「VALUES Marketing Dive」レポート

「VALUES Marketing Dive」は、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込めた、新しいマーケティングイベントです。第3回目となる今回の全体テーマは『未来を創り出す顧客理解の力』。大手日用品・化粧品メーカー「花王」では、マーケティングにおける顧客理解の質と組織的能力を高めるために、データアナリスト人財の育成や、デジタル化時代におけるデータ活用文化の醸成を進めています。本セッションでは、社内のデータアナリスト育成研修など多様な取り組みをご紹介いただきました。


Z世代特有の意思決定行動と「感情検索」から見えてくるデジタルとの付き合い方とは ~ 博報堂若者研究所とともに消費者データから読み解く若者のリアル|「VALUES Marketing Dive」レポート

Z世代特有の意思決定行動と「感情検索」から見えてくるデジタルとの付き合い方とは ~ 博報堂若者研究所とともに消費者データから読み解く若者のリアル|「VALUES Marketing Dive」レポート

ヴァリューズは、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込め、マーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」を10/25に開催しました。本イベントの全体テーマは「未来を創り出す顧客理解の力」。より深い顧客理解を追求することは、マーケティングに関わるあらゆる活動に必要なだけでなく、人材成長・組織活性化にも繋がります。 本講演では、博報堂若者研究所との共同研究によって得られた「若者の『感情検索』」を基軸としたキーノートをお届けしました。


最新の投稿


約8割がオウンドメディアにプラスの効果を実感!課題は「コンテンツ数の維持」【宣伝会議調査】

約8割がオウンドメディアにプラスの効果を実感!課題は「コンテンツ数の維持」【宣伝会議調査】

株式会社宣伝会議は、同社発行の広報・PR・コミュニケーションの専門誌『広報会議』にて、広報活動において重要な役割を担う「オウンドメディア」について、広報担当者、オウンドメディアの担当者を対象に調査を実施し、結果を公開しました。


Z世代がサロンを探すときは“ハッシュタグ”と“実例数”を重要視?【僕と私と調査】

Z世代がサロンを探すときは“ハッシュタグ”と“実例数”を重要視?【僕と私と調査】

僕と私と株式会社は、全国のZ世代を対象に、サロンに関する意識調査を実施し、結果を公開しました。


約5割の企業経営者がGoogleマップ活用の成果を体感!約3割が売上増加【トライハッチ調査】

約5割の企業経営者がGoogleマップ活用の成果を体感!約3割が売上増加【トライハッチ調査】

株式会社トライハッチは、飲食・医療業界の経営者を対象にデジタルマーケティングの意識調査を実施し、結果を公開しました。


Increasing popularity among men? Investigating the needs for “sunscreen”! Latest Edition [2024]

Increasing popularity among men? Investigating the needs for “sunscreen”! Latest Edition [2024]

As men's cosmetics receive increasing attention, what are the consumer needs for sunscreen? Also, does the quality of sunscreen differ depending on the season, with summer and winter? We will analyze changes in needs and consumer psychology for sunscreen based on the behaviors during the consideration stages.


生成AIの時代におけるWEBライティング業界の健全な発展及び進化を実現する「日本AIライティング協会®」設立

生成AIの時代におけるWEBライティング業界の健全な発展及び進化を実現する「日本AIライティング協会®」設立

生成AIによるテキスト創出「AIライティング」の急速な普及に伴い、情報の正確性や倫理基準の劣化のリスクがある中で、WEBライター集団を抱える団体を中心に構成する「日本AIライティング協会®(英称:JAPAN AI Writing Association 略称:JAIWA)」を発足したことを発表しました。本協会では、前述の課題がある中で、「AIライティングの新たな規範の樹立」と「WEBライターと生成AIが共存共栄できる未来の探究」を目的に活動するといいます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ