緊急事態宣言下はWebサイト利用も大きく変動
今回は、2020年4月1日から6月10日までの期間で、国内の主要Webサイト全体の日別UU数の推移を調査し『どのあたりでトレンドが変化したのか?』を分析しました。
総じて、4月7日に首都圏、大阪、兵庫、福岡の7都府県で緊急事態宣言が発令されて以降は日別変化の波が多発しており、外出自粛要請の中で、ネット上では情報収集や消費行動が活発化していたことがうかがえます。
期間中、最も日別UUの変化が激しかったのは5月10日。5月4日に緊急事態宣言の延長が発表され、ゴールデンウイーク週の最終日となる日曜日にあたります。
その後、5月25日に全国で緊急事態宣言が解除された後は、WebサイトUU数の変動も緩やかになりつつある様子が見てとれます。
変化点別サイト数の推移
※2020年4月1日~6月10日
【変化点前後の主な出来事】
- 4月7日(火)
緊急事態宣言が東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県を対象に発令
- 4月16日(木)
緊急事態宣言の対象が全国に拡大
- 5月4日(月)
安倍首相が緊急事態宣言の延長を決定
- 5月14日(木)
39県で緊急事態宣言が解除される
- 5月25日(月)
東京、神奈川、埼玉、千葉の関東1都3県と北海道についても緊急事態宣言を解除
※宣言期限の31日より早く全国で解除された
高機能な夏用マスクや食材宅配サービスは需要継続か
緊急事態宣言の発令から解除という、国内消費者の日常生活に大きな変化をもたらしたこの期間。外出自粛の中、ネット上やデジタルでの行動が活発化しましたが、具体的にどのようなサービスが伸びていたのか、株式会社ヴァリューズが保有するモニターパネルの消費者ネット行動ログから調査しました。
下図は、ユーザー数の増減率を示す増減スコアをもとに、利用者が伸びたWebサイトをランキングにしたものです。
日次UUが増加したサイト
この中から、今後も需要の継続が見込まれるサービスを見ていきましょう。
まず、「食材宅配のOisix(オイシックス)」が3位にランクインしています。日次の増減推移を見てみると、5月上旬と6月上旬にユーザー数が急上昇していました。
「オイシックス」サイトの増減推移
※「uu_ex」:日次の推計UU数、「cp_avg」:期間別平均UUを示す
オイシックスでは、新型コロナウイルス感染症の治療にあたる医療従事者を食で応援しようと、“食品の物資支援をワンストップで提供する「WeSupport」”を4月20日に設立。食品協賛をするサポート企業を募り、新型コロナウイルス感染症の予防や治療にあたる医療従事者への食品の無償支援を行っています。
また、5月22日からは外食業支援の「Oisixおうちレストラン」企画において、ミシュランの星付きレストランや予約困難店のシェフと協業し、アフターコロナのニーズにマッチさせた新しい食卓提案としての商品販売をスタート。サービス特性を活かしながら「応援消費」の意識の高まりにもいち早く対応し、コロナ禍でも食を通じた支援施策を次々と展開しています。
オイシックスプレスリリースより
4位に入った「ミズノ」、12位の「スーツのAOKI」は高機能マスクで話題になりました。
スポーツブランドのミズノは水着や陸上ウェアに用いる伸縮性に優れたストレッチ素材をマスクに採用。5月15日に発売し2万枚が即日完売したそうです。同社では新たに夏用マスクも開発し、抽選制で販売しています。
ミズノの『アイスタッチ』マウスカバー¥1,320(本体価格:¥1,200)
(ミズノプレスリリースより)
スーツのAOKIでも「抗菌・洗えるマスク」を、5月1日から予約販売開始しました。
下図のように、AOKI公式オンラインショップのユーザー数は販売開始日に急伸。例年、3月~4月にかけては新生活やフレッシャーズの需要で利用者が伸びる傾向にありますが、昨年同時期と比べても、今年のユーザー数がいかに爆発的に伸びているかがわかります。
「スーツのAOKI」サイトの増減推移
※「uu_ex」:日次の推計UU数、「cp_avg」:期間別平均UUを示す
高機能マスクに関しては、ユニクロのエアリズムマスクをはじめ、中川政七商店による天然素材ガーゼのマスク、抗菌スーツを活用した青山商事の夏マスクなど、各社独自の機能性や特徴を打ち出しています。これから夏に向けて需要の高まりはしばらく続くと見込まれます。
「Relux」など高級宿の予約サイトが復調の兆し
また、6月以降の動きでは、キュレーションに特化し、プロが厳選した高級ホテル、旅館が予約できる宿泊予約サイト「Relux」に注目です。先に紹介したランキングでは14位に入りました。
「Relux」Webサイト
緊急事態宣言が段階的に解除された5月後半からユーザー数がじわじわと増え始め、6月には大きく伸びています。旅行やお出かけに関してもいわゆる「3密」を避けたい意識はしばらく続くと考えられ、上質なおもてなしを提供する高級宿でゆっくりと過ごしたいというニーズが高まりつつあるのかもしれません。
さらに同社では7月12日までの期間で、国内の旅行需要を喚起するため、 応募者全員に宿泊料金最大20%割引クーポンをプレゼントする「夏さきどりキャンペーン」を実施。8月からは観光庁の「Go To トラベルキャンペーン」も開始見込みで、観光地の再活性化、旅行需要の復活が期待がされます。
「Relux」サイトの増減推移
※「uu_ex」:日次の推計UU数、「cp_avg」:期間別平均UUを示す
■給付金10万円の使い道は「生活費」「貯金」に次いで「国内旅行」
ヴァリューズが緊急事態宣言解除後に実施したアンケート調査(調査期間:6月17日~23日、回答者:25,382人)で、「あなたは特別定額給付金10万円をどのように使う予定ですか」とたずねたところ、最も多かったのは「生活費(29.6%)」次いで「貯金(20.1%)」でしたが、その次に挙がったのは「国内旅行(12.7%)」でした。
性年代別にみたところ、特に60歳以上の男女で「国内旅行」と回答した人の割合が高くなっていました。シニア層を中心に旅行意欲が刺激されていると考えられます。
特別定額給付金10万円の使い道について
ヴァリューズが緊急事態宣言解除後に実施したアンケート調査より
(調査期間:6月17日~23日、回答者:25,382人)
ディズニーリゾート、スポーツ配信などエンタメ系も活気の予兆あり
次に、アプリも同様にユーザー数の増減率を示す増減スコアを算出し、4月1日~6月10日までの期間中に利用者が伸びたアプリをランキング化しました。
日次UUが増加したアプリ
ランキングの1位は東京ディズニーリゾートの公式アプリ「Tokyo Disney Resort App」。
日別のUU推移を見ると、5月26日にユーザー数が急増しています。東京ディズニーランドとディズニーシーは新型コロナウイルスの影響により2月末から臨時休園になっていましたが、両パークで購入できるグッズのオンライン販売を5月26日からスタート。購入には「Tokyo Disney Resort App」のアカウントが必要なため、アプリ利用ユーザーが殺到したものと考えられます。
東京ディズニーリゾートは7月1日から営業を再開予定で、6月25日からオンライン予約・購入サイトでチケット予約を開始しましたが、こちらもアクセス集中により接続が不安定になったようです。
「Tokyo Disney Resort App」アプリの増減推移
※「uu_ex」:日次の推計UU数、「cp_avg」:期間別平均UUを示す
6月19日にようやく公式戦開幕を迎えたプロ野球ですが、6月2日から始まった練習試合を待ち望んでいたかのようにスポーツナビが提供する「スポナビ 野球速報」アプリのユーザー数も同日に大幅増加していました。その後もユーザー数は高位置で推移しており、開幕に向けたファンの期待感が伝わってきます。
「スポナビ 野球速報」アプリの増減推移
※「uu_ex」:日次の推計UU数、「cp_avg」:期間別平均UUを示す
「スポナビ 野球速報」アプリ
まとめ
緊急事態宣言が出されたコロナ禍においても、医療従事者の支援や応援消費の啓蒙に素早く対応したオイシックス、スポーツウエアや抗菌素材など自社が保有する独自価値を活かしスピーディーに商品開発を展開したアパレル各社のマスク、臨時休園が長引く中、グッズのオンライン販売でファンの期待に応えた東京ディズニーリゾート。
各社とも消費者の意識変化やニーズ・課題をいち早く捉え、自社のサービスで何が解決できるか、何を提供できるかをタイミングを逃さず打ち出しているからこそ、高い注目を集めていると推察されます。
マーケティングにおいて原点とも言える「消費者理解」が、ウィズコロナ時代では改めてその重要性を増しています。
株式会社ヴァリューズでは、消費者ニーズの変化やタッチポイントの変化を確認したいマーケティングご担当者様や、コロナ禍においてのビジネス潮流変化と脅威を発見したい経営企画や新規事業企画等のご担当者様に向けて、“コロナ前後で一体何が変化したのか?”を把握でき、「beforeコロナ」×「withコロナ」を紐解く調査データを提供しております。
調査内容はご要望に応じてカスタマイズも可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
調査概要
株式会社ヴァリューズが保有する国内モニターパネルのネット行動ログから、2020年4月1日~6月10日のデータを抽出し分析しました。
※対象デバイスはPC・スマートフォン
※Webサイトのユーザー数はPC及びスマートフォンからのアクセスを集計し、ヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
※アプリのユーザー数は、Androidスマートフォンでの起動を集計し、ヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。アプリのカテゴリはGoogle Playのアプリカテゴリより取得。メール、Google Chrome、YouTube、Googleマップ、Gmailなどプリインストールアプリは対象外とする。
アンケート調査に関しては、全国のヴァリューズモニター(20歳以上男女)を対象として、2020年6月17日~23日にアンケート調査を実施(回答者25,382人)。
※アンケート調査は性年代別人口とネット利用率に合わせたウェイトバック集計をおこなっている。
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