女性誌の媒体資料はペルソナの見本!ペルソナ設計に役立つデータ収集とは

女性誌の媒体資料はペルソナの見本!ペルソナ設計に役立つデータ収集とは

本サイト「マナミナ」ではこれまで、カスタマージャーニーやペルソナの作り方や事例について取り上げてきましたが、雑誌の媒体資料の読者像もペルソナのサンプルとして参考になります。女性誌では数才刻みでターゲティングが異なったり、読者像に説得力をもたせるためのアンケート設問など、差別化のための工夫が凝らされています。


ペルソナについて再確認

まずは、ペルソナを設定する目的をおさらいします。

ライフスタイルが多様化し、以前のような「20歳から34歳の女性=消費意欲旺盛で流行に敏感」といった画一的なマーケティングが通用しなくなっている状況があります。

そのため、ターゲットとする層の好みや行動パターンなどを加味し、実在の人物であるかのようなユーザー像を描き出す=ペルソナを設定し、多角的なマーケティングの材料にします。

ペルソナの設定よりユーザー視点を持ちやすくなるほか、ユーザーがどのように判断し、行動するかを想定しやすくなります。その結果、今まで以上に精度の高いマーケティングが可能になります。たとえば、広告を展開する際にペルソナの生活パターンやその商品(サービス)の利用シーンを考慮すると、より効果的な媒体(タッチポイント)の選択やメッセージの設定ができます。

改めておさらい!ペルソナの意味やメリット、作り方から事例までまとめ

https://manamina.valuesccg.com/articles/733

商品・サービスが想定する架空の顧客像を「ペルソナ」として設定し、マーケティングに活用する事例が増えています。購買行動が多様化しペルソナが必要になった背景や利用するメリット、ペルソナの作り方からカスタマージャーニーマップで活用する方法、活用事例をまとめました。

ペルソナ設計の基本:ペルソナの作り方プロセス

ペルソナの失敗パターンとしてよく挙げられるのが、データに基づかず頭の中だけで「なんちゃってペルソナ」を作ってしまうことです。本来、ペルソナ設計にあたっては、以下の3ステップで示したように、データ収集や分析のフェーズが入ります。

1.ターゲット設定
2.データ収集
3.データを分析し、ペルソナに落とし込む


1.ターゲット設定
まず大まかなターゲットを設定します。例えば、年齢や性別などの属性で顧客をグルーピングしたものなどがあります。ターゲットを絞り込めば、データ収集の負荷が減ります。

2.データ収集
必要となるデータは、数値や割合で表せる「定量データ」と趣味嗜好や価値観のように数値では表せない心理や行動を表す「定性データ」の2種類があります。

3.データを分析し、ペルソナに落とし込む
集めたデータからデモグラフィック(人口統計学的属性)、サイコグラフィック(心理学的属性)を分析し、それを元にペルソナの人物像をできるだけ詳細に詰めます。

ペルソナ設計の詳細については以下の記事で解説しています。

定量的なデータに基づくペルソナの作り方

https://manamina.valuesccg.com/articles/98

マーケティングで使われる「ペルソナ」の意味と作り方を解説します。詳細で具体的なユーザー像を設定すれば、商品・サービスが顧客目線でどうか?を見るのに役立ちます。ペルソナを作るには定量的な属性データに、定性データを加えて一人の人物像としてまとめます。

ペルソナ設計のヒントは雑誌の媒体資料にあり!?

前段で紹介した「1.ターゲット設定 2.データ収集」については、比較的スムーズに進むかと思います。しかし、難しいのは「3.データを分析し、ペルソナに落とし込む」ではないでしょうか。

そこで参考にしたいのが「雑誌の媒体資料」です。雑誌ではコンセプトやターゲットを明確にし、他誌との差別化を図って販売増を目指すマーケティングを行っています。それを具体化しているもののひとつに、出版社が広告主に出す「媒体資料」があります。営業資料という側面から、出版社のWebサイトから媒体資料をダウンロードできるケースもあります。

出版社サイドが考える読者層は属性以外に趣味嗜好や行動に触れたものも多く、ペルソナに相当します。読者からアンケートで集めた情報は定性、定量データを使って媒体資料にどのようにまとめ、広告主にアピールしているのかをチェックすれば、「ペルソナへの落とし込み」の参考になります。

こうした観点から、各誌の媒体資料を見ていきます。

女性ファッション誌「日経WOMAN」の媒体資料にみるペルソナ像

「日経WOMAN」の媒体資料では、読者の「ペルソナ」を以下のように定義しています。

【定量データ】
・20~40代の働く女性
・シングル50%、既婚50%(うち50%が子供あり)
・平均年収383万円

年齢・年収・居住地域の定量データを円グラフで表し、サマリーをそれぞれまとめています。

【定性データ】
・向上心があり、自分磨きに意欲的
・堅実で、貯蓄や投資に関心が高い
・自分らしく幸せに働きたい

定量データは数字や割合で表せますが、趣味・嗜好・行動パターンなどの定性データでは、「向上心があり、自分磨きに意欲的」「自分らしく幸せに働きたい」と言うために、どのような根拠があるかが説得力を左右します。

「日経WOMAN」では「読者意識調査」という名目のアンケートで、以下のような設問を設定しています。「流行を追うのではなく、自分のこだわりを大事にしたい」66.8%や「食生活に気を使っている」58.4%などは、「自分らしく幸せに働きたい」の根拠と言えそうです。

・仕事でスキルアップしたい?
・自分の脳力や可能性を試したい?
・年収をアップさせたい?
・スキンケアには気を使っている?
・食生活に気を使っている?
・挑戦してみたい「習い事」は外国語?

質問項目を大分類し、その中で細かい内容を追加していくと定性データを導き出しやすくなります。

女性ファッション誌「婦人画報」の媒体資料にみるペルソナ像

創刊から115年を数えるラグジュアリーメディア「婦人画報」。読者層は経済的ステータスが高く、消費行動の多い女性が中心ですが、“社交性・教養・伝統美”といった「意志のある消費」を表す項目と結びつけ、“知的でアクティブ”という他誌とは一線を画する独自性をアピールしています。ここでは「日経WOMAN」との比較で、一歩進んだ媒体資料の作り込みを見ていきましょう。

定量データ収集にあたって、「日経WOMAN」では居住地を「一都三県」していますが、「婦人画報」では商品の購入先・エリアを具体的に「銀座・丸の内」44%とすることで、ブランド企業にアピールしています。

また、属性データでお金があり高級志向であることを示すだけでなく、ライフワークの充実=旅行や飲食といった、いわゆる「コト消費」も意識的かつ積極的に行っていることを示しています。

リサーチャーの菅原大介さんによる人気記事「人気雑誌の媒体資料に学ぶ、独自性と差別化の表現力」で指摘されているように、経済的ステータスだけのアピールは、ターゲットを狭め扱う商材を狭めるなど、最終的に没個性になってしまいます。そこに定性データで「意思がある消費」を示すことでで、「婦人画報」の独自性「経済的ステータスが高く、知的でアクティブ」を引き出すことに成功しています。

本記事作成にあたり各女性誌の媒体資料を見ましたが、上記の記事で菅原さんがイチオシされている「mina」の媒体資料は特に充実しています。他誌が数才刻みで読者設定している所、「mina」は(Over)26才と限定していて、なぜほかの年齢ではなく26才なのか?25才までとステータスや趣向・行動がどう変わるのかを説得力を持って示しています。

まとめ

女性誌は読者のターゲティングが細かいことから、媒体資料でも他誌との差別化を意識的に行っています。そのためには、読者像の属性に始まり、どういう趣向・行動を持ち、それに対してどのような特集やコンテンツで応えているかを、説得力をもって示さなければなりません。

各誌の媒体資料を読み解くことで、説得力をもたせるためにどういうデータが必要で、設問はどう工夫したかなどが見て取れます。データの収集や分析に基づくペルソナ作成の参考に、一度眺めてみてはいかがでしょうか。

​​

メールマガジン登録

最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連する投稿


カスタマージャーニーマップ(体験設計のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

カスタマージャーニーマップ(体験設計のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回はカスタマージャーニーマップ(体験設計のアウトプット)について寄稿いただきました。※本記事は菅原さんの書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)と連動した内容を掲載しています。


ペルソナ(顧客理解のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

ペルソナ(顧客理解のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回は、ペルソナ(顧客理解のアウトプット)について寄稿いただきました。※本記事は菅原さんの書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)と連動した内容を掲載しています。


データ分析のヴァリューズが「ペルソナ作成ガイドブック」を公開 ~ 今すぐマーケティング施策に活かせる「ペルソナ(顧客像)」作成手法を解説 ~

データ分析のヴァリューズが「ペルソナ作成ガイドブック」を公開 ~ 今すぐマーケティング施策に活かせる「ペルソナ(顧客像)」作成手法を解説 ~

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、運営するデータマーケティング・メディア「マナミナ」にて公開した記事から厳選し、マーケティングにおいて重要な、商品やサービスが想定する架空の顧客像「ペルソナ」作成のためのガイドブック「ペルソナ作成ガイドブック」を公開しました。


カスタマージャーニーマップは古い?チャットGPTを活用した作成方法や事例・注意点を紹介【テンプレートあり】

カスタマージャーニーマップは古い?チャットGPTを活用した作成方法や事例・注意点を紹介【テンプレートあり】

カスタマージャーニーマップは、自社の商品やサービスを販売する際、顧客の行動を可視化・分析を行える有効なツールです。 しかし「作成方法や活用方法がわからない」とお悩みの方も多いでしょう。 カスタマージャーニーマップを作成できるようになれば、顧客の行動を理解しやすく、またチームで顧客の状況・状態に応じた最適なアプローチができるようになります。’ 本記事では、カスタマージャーニーマップの基本や作成方法、活用事例について解説します。 また、マーケティングの思考面の補助・効率化につながるAI「ChatGPT」を活用したカスタマージャーニーマップの作成方法について解説します。 「マーケティングが頭打ちになっている」「想定していた顧客の


ペルソナマーケティングとは?必要性とやり方、テンプレートと事例

ペルソナマーケティングとは?必要性とやり方、テンプレートと事例

ペルソナマーケティングとは、メインの顧客像を細かな属性情報、ライフスタイルなどの要素まで設定するものです。ペルソナの情報をマーケティングに反映させることで、顧客から喜ばれる商品・サービスの機能や、販売促進や流通を実現できます。本記事では、ペルソナマーケティングの概要や具体的なやり方、事例、注意点について解説します。


最新の投稿


国内電通グループ、AI活用・開発の中核を担うグループ横断組織「dentsu Japan AIセンター」を発足

国内電通グループ、AI活用・開発の中核を担うグループ横断組織「dentsu Japan AIセンター」を発足

国内電通グループの5社(株式会社電通、株式会社電通デジタル、株式会社セプテーニ・ホールディングス、株式会社電通総研、イグニション・ポイント株式会社)は、AI活用・開発の中核を担うグループ横断組織「dentsu Japan AIセンター」を発足したことを発表しました。AIに関する専門的リソースを結集した体制を構築し、電通グループや顧客の企業変革の加速に貢献していくといいます。


教科書のマーケティングを実践に落とし込む 一橋大学上原渉ゼミのDockpit活用

教科書のマーケティングを実践に落とし込む 一橋大学上原渉ゼミのDockpit活用

一橋大学商学部の上原渉教授は「学生たちに継続的なデータ活用環境を」という思いから、ゼミ生にWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を導入しています。なぜ学生のうちからデータ活用のスキルを身につける必要があるのか、どのような活用をしているのか。今回は上原渉教授、そしてゼミ生の伊藤亜起さんと大日方佑衣さんに、取り組みの詳細をうかがいました。


「データは若者の武器になる」― ヴァリューズが実践する、学生支援と社会貢献のカタチ

「データは若者の武器になる」― ヴァリューズが実践する、学生支援と社会貢献のカタチ

ヴァリューズ代表・辻本に社会貢献活動にかける想いをインタビュー。「マーケティングの力で日本を元気にしたい」―創業時の情熱を胸に、大学へのDockpitの提供や同志社大学のビジコン支援など未来を担う若者育成にも注力するヴァリューズ。本記事では、社会貢献活動の具体的な取り組みと、その根底にある企業理念、「世の中のマーケティング力向上」への熱意を紐解きます。


お店が集客目的で口コミ依頼するケースがあることを知っている人は約9割 集客目的の口コミ依頼への印象は"信頼性が低下する"が最多【マイスタースタジオ調査】

お店が集客目的で口コミ依頼するケースがあることを知っている人は約9割 集客目的の口コミ依頼への印象は"信頼性が低下する"が最多【マイスタースタジオ調査】

株式会社マイスタースタジオは、全国の男女を対象に「集客目的の口コミ依頼に関する意識調査」を実施し、結果を公開しました。


【徹底分析】証券会社の申し込み完了前後のWEB行動

【徹底分析】証券会社の申し込み完了前後のWEB行動

近年、資産運用を行う人が急増しています。消費者の検索も、年間の「証券」に関する検索を行う人は、VALUES調べによると約1600万人にも上り、 WEB行動からも多くの関心が集まっていることが分かります。そこで本資料では、直近半年間で証券会社の口座を申し込んだ消費者を対象にWEB上の検索行動を追跡し、その背景を分析・推察した内容を解説。消費者のCV前後の検索行動から、関心のきっかけや情報収集プロセスを把握する分析の有用性がお分かりいただける内容となっています。※資料は記事末尾のフォームから無料でダウンロードできます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ