ファッション通販「MAGASEEK」が活用する競合データとは?常識の通じないコロナ禍を乗り越えた戦略の裏側

ファッション通販「MAGASEEK」が活用する競合データとは?常識の通じないコロナ禍を乗り越えた戦略の裏側

国内最大級のファッション通販サイトMAGASEEK(マガシーク)は2013年に株式会社NTTドコモの傘下に入り、ネット販売市場にてシェア拡大を続けています。そんなMAGASEEKのマーケティングを支援しているのは、株式会社ヴァリューズが提供するWeb行動ログ分析ツールDockpit(ドックピット)です。今回はコンシューマーサイト事業本部 本部長 小手川大介さんに、Dockpit導入から現在までの成長の秘話について伺いました。


国内最大規模のアパレルECモール「MAGASEEK(マガシーク)」。2003年の創業以来、堅調に成長を続けてきた同社は、2013年にNTTドコモに子会社として参画。以降はファッション通販サイト「d fashion」も共同で運営しています。

MAGASEEKでは戦略設計へのデータ活用を強化中。鍵となるのは、競合サイトの流入状況や業界全体のデータを俯瞰して見ることができるWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」です。集客状況をマクロな視点で分析することで、未来予測につなげていると言います。

同社では戦略を描く上でデータをどのように活用しているのでしょうか。MAGASEEKとd fashionのマーケティング戦略を統括する、コンシューマーサイト事業本部 本部長 小手川大介さんに、Dockpitの活用方法も含めた戦略の描き方を取材しました。

マガシーク株式会社 コンシューマーサイト事業本部 本部長 小手川大介さん

マガシーク株式会社 コンシューマーサイト事業本部 本部長
小手川大介さん

取材はオンラインで実施

市場の流入状況や競合のユーザー数が分からずもどかしかった

――事業本部長として広くマーケティングを見られてきた中、MAGASEEKでのデータ活用はどのような状況だったのでしょうか?

小手川:MAGASEEKには日々訪れるユーザーのアクセスログや購買データなど、膨大なデータがあります。こうした集客状況や日々の売り上げデータはもともとしっかり追っていて、PDCAに活用できていました。全社的にも数字をしっかり見る方針を徹底していて、データを活用したマーケティングを比較的行ってきた企業だと思います。

一方で常に課題に思ってきたのは、競合の数値が分かっていなかった点です。決算報告や世の中で出回っている一般的なデータはもちろん追っていましたが、たとえば競合サイトの流入経路やユーザーの属性など、詳細な状況は分かっていませんでした。こうした”なんとなくでしか分からなかった部分”に確信を持ちたかったのです。そんなとき弊社の経営企画部から貴社のDockpit(ドックピット)(※)の提案を受け、ワークショップに参加。その後導入に至りました。

(※)Dockpitは株式会社ヴァリューズが保有している「マーケターのためのリサーチエンジン」。「競合分析」、ニーズを考察できる「キーワード分析」、業界全体を俯瞰して見る「業界分析」、そして今の流行をキャッチアップできる「トレンド分析」の4つのメニューが用意されています。

――現在どのようにDockpitを利用されているか、活用事例などを教えてください。

小手川:Dockpitを使う目的は大きく2つあり、1つ目は広告における競合調査です。具体的には、競合サービスのリスティング広告における出稿ワードを見ています。もうひとつは全体的な流入面での競合調査。ここでは業界の主要サイトにおける流入構成の詳細を見ていきます。

たとえば、SNSでの集客を頑張っているように見えていた競合が、実際にはSNSでの成果が出ていなかったことが分かったり。あるいは、自然検索や販促の取り組みが少ない競合も分かりました。こういった定量データで競合サイトの施策や強みを把握し、自社と比べることで、自分たちが今後やらなければいけない課題が見えてきます。

今まで「おそらくこうだろう」と想像していた仮説に対して、データを見ることで答え合わせができるようになったんです。その結果、戦略の精度が上がりましたね。現在では上層部に戦略提案を行う際のエビデンスとしても使用しています。課題発見から根拠の裏付けまで使えるのが助かりますね。

Dockpit

Dockpitの競合分析の画面ダッシュボードイメージ。複数のサイトの利用状況を一目で確認でき、データはテキスト、画像、エクセルなど様々な形式でダウンロードできる

Dockpit導入はコロナ禍の経営戦略見直しにも繋がった

――データ分析を経営戦略につなげるのはどのように行っているのですか?

小手川:DockpitではアパレルEC業界全体での流入推移を見ることができるので、そこでの気付きを戦略に反映しました。どこの企業も競合は分析していると思いますが、アパレルEC業界全体まではなかなか追えていません。それこそ年に1回、世の中に流通するようなデータで見る程度です。

たとえばDockpitからは「モール型ECサイトが伸びているから将来的にライバルになる可能性がある」「差別化はどうしていくか」などの気付きも得られます。こういった気付きから戦略を練りました。

――過去の推移や傾向をデータで見ることで今後の予測に役立てたのですね。

小手川:そうですね。ファッションやアパレル業界はシーズナリティがあって、季節ごとで売れる商品はある程度決まっているため、今までは予測が立てやすかったのです。しかし新型コロナウイルスがまん延し、今までのセオリーがなにも通用しなくなりました。メーカーは服を作らなくなり、その分利益重視になったためセールをやらなくなるなど、ガラリと変わりましたね。

こんな状況下では従来のデータはあまり役に立ちません。現状の流れから未来を予測することが必要です。そこで業界全体の集客推移やトレンドが材料として重要になって、Dockpitが経営戦略を立てるのに役立ちました。基本的にツールは点(現在)で見るものが多いけれど、全体的な戦略を立てる際に重要なのは線(推移)です。どの項目の変化を見て方針を決めるかが重要なので、Dockpitには非常に可能性を感じています。

「MAGASEEK」サイトトップ

――マガシークでは全社的にデータから仮説を導く文化があると先ほどお聞きしましたが、なにか意識されていることはありますか?

小手川:特徴的なのは、マガシークではマーケティング担当者だけではなく、デザイナーやエンジニア、ディレクターの職種のKPIにも必ず売上が入っていることかもしれません。企業が利益を上げる上で重要なのはシンプルに「売り上げを伸ばす」「コストを下げる」の2つですが、マガシークでは職種に関わらず、事業目線をできるだけ持ってもらうようにしています。

また、CVR(コンバージョン率)やUU(ユニークユーザー)数などはどのような施策を行なっても数値が改善しないときがあります。それなのに同じことを頑張り続けても意味がないです。そういうときはほかの施策で補って、全体の受注を上げていけるような視点を持たないといけません。

どんな職種でも売上の指標を入れるようにしているのは、不毛な部分最適に陥らないためという意味合いが大きいです。目先の数値目標ではなく売り上げやコストを目標として掲げることで、全員のベクトルが同じ方向に向きやすいんじゃないかと思いますね。

【関連】ソニー×電通の強みを結集したフロンテッジのデジタル戦略立案 ~ データ可視化が提案推進の機動力に

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ソニーのコンテンツ・テクノロジーと電通のマーケティング・コミュニケーション力を融合させ、新しいブランディングプロフェッショナルファームを目指し設立された、株式会社フロンテッジ。同社のソリューションクリエイティブディビジョン・デジタルマーケティンググループにて戦略立案や効果検証に携わる、渡邉 寛文さんに、Web行動ログ分析ツール「Dockpit」のデジタルデータをどのように有効活用しているのか、マナミナ編集部が取材しました。

【関連】食品業界で独自ポジションを切り拓くマルサンアイのデータ活用に迫る ~ 現場目線とデータ目線の二刀流が鍵

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大豆を中心としたバラエティ豊かな商品を製造販売しているマルサンアイ株式会社。同社ではヴァリューズが提供する競合サイト分析ツール「Dockpit」を導入し、当初の目的だった仮説検証だけでなく、今現在は営業や得意先の商談材料としても活用。群雄割拠の食品業界において、唯一無二のポジションを獲得しています。Dockpitを使用して日々新しい発見を追及している開発統括部マーケティング室の一瀬浩伸さんに、ヴァリューズの岩村と小幡が話を聞きました。

データから新しい課題発見ができる文化を根付かせたい

――マーケティング分野におけるデータ活用で今後の課題はありますか?

小手川:より深いデータ分析ができる人材をもっと増やしていきたいと思っています。これはハードルが高いのですが、データの海に潜って“こういうデータをこういう視点で見るべきだ”と課題を発見できるチームになっていきたいんです。

現状、サイトの運用メンバーはこれまでの経験やノウハウから分析しています。たとえばセッションはいいけれどCVRが悪いという結果だったら「商材が悪いんじゃない」「打ち出し方を変えよう」と思いつく。これは自分たちの売り上げに紐づいている考えであって間違ってはいません。一方で僕は、新しい課題や発見も同時に増やしていきたいのです。

――そういった新しい課題や発見ができる人材には、どうやったらなれると思いますか?

小手川:僕も知りたいです(笑)。ただ、基本的な運用の経験やノウハウだけでは難しいかもしれません。たとえば、僕は一度Dockpitを使用していて、貴社の担当者に「そんな使い方するんですか?」と驚かれたことがあります。そのときはデータを抽出したあと、抽出したデータを並び替えて結合し、グラフ化したのです。

だれもが見ている視点やだれでも見られる視点ではなく、新たな分析の観点でみることが重要です。データへの興味は必須ですが、興味関心でカバーできるところには限界があるので、アイデアやセンスも必要です。そのためにまずはデータに触れる機会を増やすことからだと思います。

――では最後に、今後のデータ活用における展望を教えてください。

小手川:「このデータとあのデータを掛け合わせて見たら、こういう使い方ができるだろうな」という仮説を持ってほしいのです。現状は日頃の運用にリソースが取られてしまっているメンバーが多いので、課題発見まで手が回っていません。今後段階を踏んでステップアップしていきたいですね。

もう1つは未来志向でなにが起きるかを予測したいです。自社のデータ活用でいうと、顧客理解はまだやれることがあると感じています。親会社の株式会社NTTドコモとも提携しデータ交換を行いながら、ツールを使い倒してさらにやるべきだと思います。自社に足りないユーザー層や減っているユーザー層を追い、仮説が確信に変わるまで突き詰めたいですね。

***

「すべての職種が数値データを扱えるように」という文化を根付かせることが会社の売り上げやコストダウンに寄与している、と語った小手川さん。膨大な数値データを前に新しい視点から課題を探し、仮説・確信・実証を繰り返してきたといいます。日々の数値運用だけでなく課題発見力などの未来を見据えたマーケティング戦略を構築してきた取り組みが、アパレルEC業界での事業拡大へと繋がってきたのではないでしょうか。小手川さん、この度は貴重なお話をありがとうございました。

取材協力:マガシーク株式会社

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この記事のライター

女性系メディアの運営に4年携わり、現在は子育てをしながらフリーランスとして活動中。みなさんの”選択肢のひとつ”になるような、役に立つ記事をお届けしたいです。

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