トヨタ「ぴったりクルマ診断」が自動車購入促進に?第三者データで分析

トヨタ「ぴったりクルマ診断」が自動車購入促進に?第三者データで分析

トヨタ自動車の提供する「ぴったりクルマ診断」は、数問の簡易的な質問に回答すると、自身にマッチした車種を提示してくれるツールです。この診断ツールにはトヨタのどのような集客戦略が背景にありそうか、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いて調査していきます。


トヨタ「ぴったりクルマ診断」とは

トヨタ「ぴったりクルマ診断」は、トヨタのオウンドメディア「toyota.jp」上で2021年9月にリリースされた診断ツールです。

自身が車に求める要素、例えば「見た目は可愛いほうが好きか、カッコいいほうが好きか」や、「どんな用途で乗りたいか」といった平易な質問項目に回答していくことで、約40車種のラインナップからマッチする車を探してくれます

診断の結果ページでは、マッチする車種のスペックや販売価格を見ることができるほか、支払い額の見積もりシミュレーションへ進むことができるなど、診断からシームレスに購入へと移行できるCXを提供しています。

なお、マーケジンに掲載された「toyota.jp」運営へのインタビューでは、検討期間の長い自動車という商材に対して「販売店で行われていた行動をどのようにオンライン上で前倒しができるか」「Web上でどこまで検討の解像度や購入意思の確度を高められるか」……といった部分に、同社のCX・DXが取り組むべき重要なポイントがあると語られています。

トヨタ公式LINEアカウントを活用した集客が好調か

以降は、「ぴったりクルマ診断」ページの集客状況について、Dockpit(ドックピット)を用いて調査していきましょう。Dockpitは、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツールです。

まずは、同診断ツールに訪問したユーザー数の推移データを見てみます。

「ぴったりクルマ診断」のユーザー数

「ぴったりクルマ診断」のユーザー数(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年6月〜2022年5月
デバイス: PC・スマートフォン

上記、ユーザー数のグラフを見てみると、2021年9月のリリース時から半年ほどは月間2、3万ユーザーほどを推移していた様子です。その後、2022年2月~3月にかけてユーザー数が急増し、直近では以前のように月間3万ユーザー前後の値に戻っています。

次に、集客構造の内訳を推移グラフで見てみましょう。

「ぴったりクルマ診断」の集客構造

「ぴったりクルマ診断」の集客構造(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年6月〜2022年5月
デバイス: PC・スマートフォン

春先にユーザー数が増加した要因を探ると、2022年2月は「ディスプレイ広告」からのユーザー数が増えており、3月はディスプレイ広告に加えて「ソーシャル」からの流入も大きく伸びていることがわかります。

さらに、ソーシャルの内訳を見てみると、ほとんどがLINE経由のユーザーであるとわかりました。以下は、流入元がLINEの訪問者数推移グラフです。

「ぴったりクルマ診断」のLINE経由ユーザー数(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年6月〜2022年5月
デバイス: PC・スマートフォン

これらのデータから、2022年2月からディスプレイ広告を活用した診断ツールの認知拡大を行い、3月からはLINEの企業アカウント上でも、同ツールへの誘導を開始していたのではないでしょうか。

実際に今年4月に、トヨタのLINEアカウントをフォローすると、下の画像のようにぴったりクルマ診断への導線が表示されていました。

トヨタ自動車 LINE公式アカウント

3月以降、継続的にソーシャル(LINE)からのユーザー訪問が発生している点を考えると、LINEの公式アカウントを活用して、ユーザー接点を維持し続ける取り組みが行われていそうですね。

【コンサルタントが解説】withコロナの自動車業界 ~ 各社のWeb動向と消費者行動を徹底解説!|セミナーレポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/1475

コロナ禍で、オフライン営業や外出需要が減少する一方、中高年層のネット利用の増加や、リモートワーク下での地方への移住の増加など、自動車を取り巻く消費者のライフスタイルも大きく変化しようとしています。 また、EVや自動車サブスクリプションサービス等、新しいビジネスチャンスも注目を集めています。今回のセミナーでは、これらに焦点を当て、自動車メーカー各社のWeb動向や、消費者の最新の行動を解説しました。 ※詳細なセミナー資料は無料でダウンロードできます。記事末尾のフォームよりお申し込みください。

もっとも多いユーザー層は50代。40代ではヘコみが見られる

ぴったりクルマ診断を利用しているユーザーの属性についても掘り下げてみましょう。Dockpitで、ユーザーの性別と年齢のデータを見てみます。

「ぴったりクルマ診断」の性別ユーザー属性

「ぴったりクルマ診断」の性別ユーザー属性(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年6月〜2022年5月
デバイス: PC・スマートフォン

「ぴったりクルマ診断」の年代別ユーザー属性

「ぴったりクルマ診断」の年代別ユーザー属性(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年6月〜2022年5月
デバイス: PC・スマートフォン

性別のデータでは、男性58.5%・女性41.5%と男性が6割弱を占めることがわかります。また、年代のデータでは50~60代の年配層が最も多く、次いで30代という結果になりました。ネット利用者全体と比較すると50代以上のユーザーが多く出ており、40代はヘコみが大きいのが特徴的です。

現在の50代以上のユーザーは、国内の新車販売台数がピークに達していた90年代を経験しています。「車は新車で買うもの」という意識を持つ方も多いと考えられ、若者よりも積極的に診断ツールを利用する傾向があるのではないでしょうか。

【関連記事】自動車サブスク市場のWebサイトユーザー数を調査。トヨタのKINTOを各社が追う構図に【2022年4月】

https://manamina.valuesccg.com/articles/1765

コロナ禍を通じてサービスへの認知が高まってきた自動車のサブスクリプション・サービス。本記事では、黎明期から数年経過したいま現在の自動車サブスク市場と、サービスを提供する各社の現状を、Webサイト訪問者のデータを用いて分析・解説していきます。

【関連記事】自動車メーカー公式アプリMAU数ランキングは?「MyTOYOTA」の属性や興味関心も分析

https://manamina.valuesccg.com/articles/1663

自動車メーカーの公式アプリのユーザー数ランキングを調査します。トヨタの「MyTOYOTA」について、ユーザーの性年代、子ども有無や個人年収といったデモグラフィック属性や、興味関心などの特徴も分析しました。

まとめ

自動車の購入となると顧客の検討期間が長く、販売する側にはターゲットのインサイトを的確に捉えた「ナーチャリング(顧客育成)」が求められます。そのためには、購入を迷う顧客との継続的な接点を保ち、どういった興味・嗜好を持つ相手なのかを知ったうえでのアプローチが重要です。

今回の調査を経て、「ぴったりクルマ診断」はLINE経由で利用ユーザーを募っていることがわかりましたが、トヨタのLINE公式アカウントは診断ツールのほかにも、ナーチャリングのための新しい取り組みが散見されます。

たとえば、LINE上のやり取りで自動車の購入に関するアンケートが実施されたり、「在庫検索」や「試乗予約」が行えたりと、ユーザーが画面上でシームレスに様々なアクションが行えるような機能が備わっています。

ネットがなかった時代、実店舗では何度も顧客と商談を重ねることで、徐々にその購入意思を固めていくというセールスが行われていたことでしょう。Webのツールを通じて、すぐに購入には至らないユーザーとも同様のコミュニケーションを確立させようとする、トヨタの新しいナーチャリング手法が形成され始めているのを感じました。

本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。

【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2021年6月〜2022年5月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。

関連する投稿


Is the "car camping" trend over? Investigating changes in demand and user persona based on search words

Is the "car camping" trend over? Investigating changes in demand and user persona based on search words

Car camping became popular in recent years for travel and as an outdoor activity done while social distancing. After the pandemic, its popularity is said to have subsided, but how has the demand changed? We look at changes in demand based on the searches and the user persona of people searching and their interests.


OMO施策を実施している通販・EC事業者が半数以上 デジタルコミュニケーションの重要性が高まりから施策推進する声も【東通メディア調査】

OMO施策を実施している通販・EC事業者が半数以上 デジタルコミュニケーションの重要性が高まりから施策推進する声も【東通メディア調査】

株式会社東通メディアは、自社に通販基幹システムを導入している、通販・EC事業者の経営者・役員を対象に、通販・EC事業者と通販基幹システムに関する意識調査を実施し、結果を公開しました。


「車中泊」ブームは終わった?検索ワードから見る需要の変化や人物像を調査

「車中泊」ブームは終わった?検索ワードから見る需要の変化や人物像を調査

車の中で寝泊まりする車中泊は、キャンプやアウトドアと共に人と接触せずに楽しめる旅の手段として近年需要が高まっていたワードです。コロナ禍が明けて1年ほど経過し、ブームが落ち着いたと言われている中、車中泊の需要はどのように変化しているのでしょうか。 今回は「車中泊」の検索キーワードから需要の変化や、検索する人物像や関心を調査していきます。


「走行距離」と検索する人は車のどんなことが気になる?人物像や関心を調査

「走行距離」と検索する人は車のどんなことが気になる?人物像や関心を調査

車の走行距離は、車を購入する上でも売却する上でも重要なポイントです。近年はEVの需要も高まってきており、EVでどれくらいの距離を走行できるのかも気になる観点ではないでしょうか。 今回は車の「走行距離」の検索キーワードから「走行距離」を気にする人の人物像やどのような物事に関心があるのかを調査していきます。


Size of the target segment for luxury BEVs and the user persona. Comparing Japan-made and non-Japanese car manufacturers

Size of the target segment for luxury BEVs and the user persona. Comparing Japan-made and non-Japanese car manufacturers

Many manufacturers are developing BEVs (battery electric vehicles). At first, most were sedans, but SUVs have been gaining popularity. BEV SUVs are often sold by luxury car manufacturers. We will investigate the Lexus RZ, Mercedes-Benz EQS, and Jaguar I-PACE, and analyze the size of their target segments and personas.


最新の投稿


推し活実態2024!「沼落ち」プロセスとは?推し活のインサイトとマーケティング活用

推し活実態2024!「沼落ち」プロセスとは?推し活のインサイトとマーケティング活用

日本の消費を活気づける「推し活」。実は10代の8~9割以上が「推し対象あり」と回答しているという結果も。本ホワイトペーパーでは、推し活市場の現状や、推し活にかける時間・金額などの行動実態、コラボ企画といったマーケティングとの接続について調査し、推し活への理解を深めていきます。


サービス終了から約1年…Zenly利用者はどこへ?位置情報共有アプリの現在

サービス終了から約1年…Zenly利用者はどこへ?位置情報共有アプリの現在

位置情報共有アプリ、Zenly。かつて一般的ではなかった「位置情報を共有する便利さ」をユーザーに伝え、位置情報共有アプリという新ジャンルを開拓しました。友人や家族との待ち合わせに使ったり、スマホの紛失に備えたり、災害時の安否確認として使ったり…とユーザーに様々な需要を生み出したZenlyですが、2023年2月3日にサービスを終了しました。ではその後、Zenlyユーザーはどのアプリを利用しているのでしょうか?この記事では、Zenlyに代わる位置情報共有アプリの現在を、サービス終了直後の分析結果と比較しながら考察します。


リスキリングに取り組めない理由の半数は金銭面 時間的理由・学習支援の少なさもネックに【ベンド調査】

リスキリングに取り組めない理由の半数は金銭面 時間的理由・学習支援の少なさもネックに【ベンド調査】

株式会社ベンドは、同社が運営する「スキルアップ研究所」にて、「リスキリングに取り組む際の課題に関する実態調査」を実施し、結果を公開しました。


3C分析(環境分析のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

3C分析(環境分析のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回は、3C分析(環境分析のアウトプット)について寄稿いただきました。


Is the "car camping" trend over? Investigating changes in demand and user persona based on search words

Is the "car camping" trend over? Investigating changes in demand and user persona based on search words

Car camping became popular in recent years for travel and as an outdoor activity done while social distancing. After the pandemic, its popularity is said to have subsided, but how has the demand changed? We look at changes in demand based on the searches and the user persona of people searching and their interests.


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ