1.インタビューガイド(プレビュー)とは
■●概要
インタビューガイド(プレビュー)とは、インタビューガイド(インタビューの調査票)の質問項目を見出しレベルでハイライト編集し、インタビュー内容のアウトラインをスライド一枚で確認できるようにするアウトプットです。
本図を作成することにより、限られたインタビュー時間の中で調査テーマに沿った質問を優先すべく質問数を意識したり、調査票のファイルを別途開いたりスクロールすることなく関係者と質問の流れを共有することができます。
※本稿では実務で実施機会が多い、質問項目をある程度事前に決めておく「半構造化インタビュー」の形式を想定して書いています。インタビュー調査では構造化しないやり方もありますが、かなり高度なのでここでは割愛します。
■●構成要素
インタビューガイド(プレビュー)の構成要素は以下のようになります。
1.フェーズ
・ユーザーの利用経験の段階
(サービス企画のためのデプスインタビューなどの場合)
・調査対象とするウェブ画面
(アプリ操作性改善のためのユーザーテストなどの場合)
<記入例>
・検索結果画面
2.課題/仮説
・認識している課題
・ユーザーのペイン
・テストしたい論点
<記入例>
・同じような商品が表示される
・関連が薄い商品が表示される
・類似商品情報を比較しづらい
3.質問項目
・大トピックス
・小トピックス
<記入例>
大トピックス:商品検索カテゴリーA
小トピックス:画面・スクロール、使用している機能、参照している情報、ペインとその評価
4.提示物
・調査対象ウェブ画面
・提示コンセプト(テキスト・画像)
・プロトタイプ など
※実際には枠内にビジュアルイメージを画像で貼付する。
■●このアウトプットの導入が向いているケース
「どのような質問内容でインタビューを実施するのか?」
⇒この質問に一枚で答えるためのアウトプット
①インタビュアーを複数人で務めるケース
インタビューの調査票は一見するとアンケートほど考えずに質問を入れることができます。そのため、インタビュアーを複数人で務める場合、個人的に尋ねたいことが優先されたり、経験の差により質問の深さが異なったりしてしまいます。
複数人でインタビューする体制は多様性確保の観点からは良いのですが、合議制の産物のようなインタビューガイドが出来上がると、インタビュー当日はツギハギ感のあるぎこちない進行になります。(たいてい質問量の割に早く終了します)
②関係者のレビュー経験値が乏しいケース
インタビューガイドの内容に対して関係者にレビューを求める際、インタビュー文化が定着していない組織では、書いてある質問案をどう評価してよいかわからず、良いとも悪いとも言えないので反応が薄くなってしまうことがあります。
インタビューガイド上で見るといずれの質問項目も必要そうに見えるのでこれは致し方ありません。これは視点が個々の質問に集中しすぎていることが原因で、ハイレベル(概要クラス)で捉え直せるような資料上の助けを必要とします。
2.作り方
①フェーズで調査範囲を定義する
・ユーザーの利用段階を大まかに3ステップで整理する
・または調査対象のウェブ画面を3回の遷移で整理する
②フェーズごとの課題/仮説を書く
・利用段階または画面遷移ごとに課題/仮説をまとめる
※先に課題/仮説リストを作成しておいて、要点を抜粋・転記できるとスムーズ。
③フェーズに適した質問を入れる
・1つの大トピックスに対して4つくらいの小トピックスを立てる
・小トピックスがたくさんある場合には大トピックスを連結する
(実査の時間内に消化可能な現実的な項目枠数とするのがねらい)
3.使い方
①実行者間での質問項目の粒度を合わせる
このアウトプットを使うと、インタビューガイドを作る前段階で質問項目の粒度をすり合わせやすくなります。特にこの表の最上部にあるフェーズ(利用段階または画面遷移)を意識することで質問範囲に制約をかけることができます。
インタビューで実際に質問に使える時間は60分設定でも45分くらいしかないので、集中して取り組むべき箇所に絞って現実的な質問設計を討議することができます※もちろん質問を事前に構造化しない探索型の実施方法もあり得ますが。
②関係者に調査のねらいを端的に説明する
このアウトプットでは、質問項目はもちろん、前提となる課題・仮説、実査時の提示物も含めインタビュー調査の主要な計画部分を一枚に集約するため、質問設計に必要な情報の全体像を俯瞰して関係者にねらいを説明することができます。
上記のような調査設計に必要な情報は資料で分かれていることが多く、課題・仮説は企画書、質問項目はインタビューガイド、提示物は別ファイルなど、関連資料が点在していると思考や討議の環境を損なってしまうので注意が必要です。
リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、株式会社マクロミルで月次500問以上を運用する定量調査ディレクター業務に従事。現在は国内有数規模の総合ECサイト・アプリを運営する企業でプロダクト戦略・リサーチ全般を担当する。
デザインとマーケティングを横断するリサーチのトレンドウォッチャーとしてニュースレターの発行を行い、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして各種リサーチプロジェクトの監修も行う。著書『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)
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